本当の自宅守衛者
とりあえず攻撃を避けなければ…!相手の動きをよく見て、一歩先へ。目を凝らして、その先へ。
だが、そんなものは見えはしない。見えても身体は思うようには動かない。
しかし、それとは違うものが得られた。
ユキの身体の周囲にはガラスのような。目を凝らすことでしか見えない魔力のような物が見えた。
それはまるで
身体を覆うガラスの箱
その正体は結界。
ユキの拳が顔面に命中した。
だが、
「…思ったより痛くない……」
あらかじめ攻撃が当たりそうな場所に結界を集め、壁とすることでその衝撃を抑えることに成功した。
結界は元々守りの手段。それを鎧のように纏えば攻撃力や防御力も当然上がる。
これを自宅守衛者に応用すれば。普段は敵から隠れ、守る敷地内であることを示す結界を纏えるなら…。
家をそっと地面に置き、ユキに近付いた。腹に拳を叩き込まれるが痛みはない。
「敷地外でも無敵、か」
足を払い、関節をとった。
「ぐっ!」
「なるほど速さも精度も上がるみたいだ」
女性に手荒なことは避けたいが、事情が事情。これぐらいは見逃してほしい。
「殺す覚悟があるんだ。殺されったて仕方ないよな?」
これはあくまでも牽制。これで戦意を喪失してくれるとありがたいが…。
上手く関節を外し、攻撃を仕掛けてきたが無駄だ。
「結界砲」
至近距離、予備動作無しの不意打ちは容赦なくユキを襲い気絶させた。
改めて身体の周りを見てみた。どうやら結界砲を打つと身体に纏っているものが減っていくようだ。新たな発見は嬉しいが、それよりもユユが心配だ。すぐに家に戻り治療を施した。
ノヴァイル侵攻中であることはその時は完全に忘れていた。
ユキはそのままにしておくと危ないので手錠、足枷等の拘束具を二重に付けさせてもらった。
二人の女性が目を覚ますのを待つという奇妙な時間が流れた。
その際何故かそわそわした。ユキをどこかで見た気がしてならないのだ。誰かに似ているということも考えられる。
気絶しているユキの顔を色々な角度から眺めてみた。
「…何してんの?」
「うおっ!?いや、これは別に!何も悪いことはしてないし、しようともしてないし!!あと、いくら怒ってても今は攻撃しちゃ駄目だよ!!」
「分かった分かった。そこまで、バカじゃないし。」
さすがはユユ。俺のことを分かってくれているうえに冷静だ。本当なら自分を痛め付けた相手にブチ切れてもおかしくないのだから。
「どこかで見たことあるなぁ、って。前の世界かな?」
「うーん。なんとなく分かったかも」
「あ!俺も」
お互いの顔を見て指差した。
「ユユだ」
「ユウトだ」
しばらく固まり、お互いが何を言ってるのか理解できなかった。




