全力結界砲
体勢を立て直さないと…!!
無傷の片足手で空中を蹴り、なんとかその場に留まろうとした。だが、大分離れた所でようやくその勢いは止まった。
「はぁはぁ…っ!」
何なんだあいつは!?全力の蹴りを片手で止められたうえにダメージを与えてくるなんて!
握られた足はなんとか折れてはいなかったが、手の形を残して大きく凹んでいた。
右足集中…右足集中…。落ち着いて意識を右足に集めた。そうすることで傷の治りを速めた。
どうする!?あの強さは尋常じゃない。正面からぶつかって駄目なのだ。他の手で相手に勝らなければ。
速度で!
いや、おそらく無理だ。蹴りを受け止めたあの頑丈さから、速度で翻弄しても大きなダメージは与えられない。もっと強力な何か……。
もう一度さっきの場所へ戻った。
奴はユユを見下しとどめを刺そうとしていた。
だが、それをさせはしない。
「螺旋結界砲!!」
最大最強の技だ!お前に止められるか!?
「……結界砲」
強力な魔力の衝突により轟音と巻き上がる粉塵の中、それは見えた。
フードが風で靡き、露わになったその顔は見たことある女性だった。
「…駄目か。ここまで強いとは……」
「……バカなんですかあなたは?その威力の魔法がこの人に当たったらどうするんですか?」
彼女は鋭い目つきで蔑むようにそう言った。そして、己の愚行に今更ながら気付いた。
もし、彼女があの技を相殺しなかったらユユは…。取り返しのつかないことをするところだった。
だが、何故。とどめを刺そうとしたユユを助けた?回避することもできたはずなのに?
良い奴なんじゃ…それはない。ユユをあそこまで追い詰めるのは彼女以外ありえない。
では、どうして??
考えがまとまらない。彼女が話掛けてきたということを利用するしか方法が思いつかなかった。
「君の名前は?いったい何者なんだ?」
「…気が変ったから答えてあげます。私はユキ。あなたとは異なる者です」
生意気な!とは言えない。ここは冷静に慎重に…。
「ユキは…」
「ユキさん」
「はい、ユキさんは何が目的で?俺たちと敵対する理由は?」
「…約束があるの。あなたたちを殺すって」
突然の攻撃で回避が遅れた。首元に放たれた掌底の衝撃が脳にまで届いた。視界が歪み、吐き気を催した。膝をつきユキに目を向けた。
「さっき結界砲を防いだのは、私の手であなたたちを殺したいから。ただそれだけ」
ユキは拳を握り固めた。
あぁ、ここで死ぬ。そう思うんだと自分で思っていた。だが、それよりも気になることがあった。それが頭から離れないでいた。
「…何で結界砲を知ってて、使えるんだ?」




