無職VS
「結界砲…!!」
倒れたユユを見る黒フードの人物に放った全力の結界砲は簡単に相殺された。
無敵であるはずの、今まで防がれたことのない技が…。
以前ノヴァイルの歴史を調べたとき、フィークエードの存在を知り頭に過ったことがある。
サラヴィスに一人、ノヴァイルに一人。そうなるとフィークエードにもいたのではないか?
俺たちと同じ召喚された、勇者と呼ばれる者が
ただの仮説にすぎないと鼻で笑って終わらせたそれは、最悪のタイミングで出会うことになる。
「ユユ!!」
結界砲で相手の注意力が乱れているうちに倒れているユユに駆け寄った。
「何があったんだ!?」
「…はぁはぁ…うっ!!」
「…足が……」
ユユを抱き抱えると右足の太ももから先が切り落とされてなくなっていた。その他にも身体中に痣や切り傷が多くあった。
「……ウィーズに会った。倒したけど、あいつに会って……っ!!」
「分かった!だから今は大人しく!!」
「…あいつ強いぞ……」
すぐさま止血し、その人物に向き直った。
結界砲のくだりでこいつの強さはよく分かった。ユユをここまで追い詰めるほどの実力の持ち主ということは俺たちと同等の力を持っているとしか考えられない。そして、それはあの仮説と結び付いてしまう。
「…同じ召喚者のあなたが何でこんなことを?」
黒フードは喋らない。沈黙する姿からは何も感じられない。全く分からない。
理解できないものにはどうしても恐怖してしまう。無敵であるにも関わらず、もしかしたら死ぬかもしれないという考えが頭にへばりつき離れないでいた。
だが、恐怖すると同時に激しい怒りも覚えていた。
恐怖し近づきたくないと思っているのに、ユユをあんな風にしたあいつが許せない。頭の中で冷静に物事を処理している反面、体が変に熱い。
これが怒り。
ここに来てからほとんど眠っていその感情が一気に吹き出した。
家を担いでいようが関係無い。地面が凹むほどの踏み出しで一瞬で間合いを詰め、横薙ぎの蹴りを放った。ガードされようがそれを砕き、大きなダメージを与える。
そう思っていた。
蹴りを放った足は片手で受け止められ、強烈な握力によって握り潰された。こちらもそうならないよう力を込めるがどうあがいても無駄だった。
ここに来てから忘れていた痛みをこんなところで感じるなんて…。
そして、遥か後方に凄まじい速度でぶん投げられた。




