家では待てない
なんてことだ…。
予想外の出来事は最悪なものだった。
ノヴァイルの侵攻中に最大戦力のユユが消えるなんて。
情報を中継してくれるキリアールさんを退かせ、家で次に何をするか考えていた。
ノヴァイルは甚大な被害を受けただけで敗北はしていない。自身の力で侵攻を続けるべきか。それともユユを探しに行くか。
もちろん、ユユの捜索を優先したい。だが、おそらくここで時間を開ければノヴァイルの侵攻はほぼ不可能になる。
どうする?
「ユウトさん」
「…あぁ。どうかしました?」
「どう、するの?」
「……キリアールさんはどうしたいですか?」
「私はノヴァイルの方を…」
キリアールさんの過去を知っていた。ノヴァイルは落とさなければならない。
だが、それ以上のものもある。
私情を取るか、目の前の勝利を取るか……。
悩みに悩んだあげくに出た答えは簡単だった。
「…両方……」
「…今何て?」
「両方取る。ユユも大事、勝利も大事なら、両方手に入れれば良い」
本当はギリアムの言う組織の主力としてとっておきたかったが仕方ない。
むしろ、活躍の場面を増えて嬉しいと思うのが親の気持ちというものか。
「キリアールさん。調整は終えています。あなたの思うままに使ってあげてください」
頼んだ!
マーティン達よ!!
以前サラヴィスのアフターケアの際回収したマーティンシリーズは更に改良を重ね、あらゆることが可能になった。ただし、外見や基本的なものはあえて変えないでいた。それぞれの個性が俺は好きなのだ。
家を担ぎ、大きく上空に飛んだ。
自宅守衛者が有効な範囲は狭いが、その範囲内に留まってばいれば最高の能力を発揮することができる。
視力の限界値を少しずつ上げていき、地上の全ての事柄を時間を掛けて把握した。
キリアールさんの方は好調のようで心配はなさそうだ。
あとは、明らかに異常な動きを察知すればいいだけ…。
いた!凄まじい早さと力の衝突も感知した。
おそらくそこにいるはずだ。
そう思ってからの行動は早かった。宙を蹴り、風を切り、空を駆ける。普通ではあり得ない速度で目的地へと移動した。
ノヴァイルから目的地の距離を一瞬で移動できるということは瞬間移動、もしくは、時を止める能力だろうか?もし、そうだとしたら…。いや、存在しているとなれば俺ですら勝てない。
ユユならもっと無理なはずだ。
早く!早く!早く!!
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そして間に合わなかった。




