本気
事態が飲み込めたのは攻撃を食らった数秒後。
いなくなったと思っていたウィーズが現れ、ガイゼンの目の前に私ごと瞬間移動。そして、タイミング良く放たれた攻撃が相手を切り裂く。
そのはずだった。
「…一枚。脱いどかなかったら危なかった……」
間一髪。距離を置く際に上着を一枚脱ぎ捨てておいてよかった。
それでもピンチであることには変わりない。
「ガイゼンさん。手加減したんですか?」
「んなわけねぇだろ。こっちは正真正銘全力大技だっつーのに。そんなん言うなら、そっちのタイミングがわりぃんじゃねぇの?」
「一瞬にタイミングなんかあるんですかねー」
瞬間移動出来るウィーズがこのうえなく邪魔だ。
となったら
逃げる!!
「良ー判断ですけど」
再びガイゼンの前に瞬間移動した。だが、それが狙いだ!!
二人の距離が一瞬で詰まるということは、お互いに不意打ちができるということ。
逃げる素振りはウィーズを騙すための芝居にすぎない。
食らえ!ギガラッシュ!!!
「食らうかよ!!咲時雨!!」
渾身の連打も刀の連撃で全て防がれた。
こいつ、真似だけじゃない…。普通に強い…!
「ウィーズ!お前邪魔だ!さっさと帰れ!」
「そー言われても。帰りはどーするんですか?」
「……」
「意外と冷静ですね」
クソっ!あの刀、へし折るつもりで殴ったのに……!いや、あの刀…烏丸!?本物に間違いない。あの強度は並大抵では再現できないし、なによりユウトの技の再現が納得できる。あの刀でラヴェールの居合い切りも真似ることができるのは持ち手本人のずば抜けた実力だろう。
…楽して勝つのはあきらめよう。
とっておき、しかもユウトにすら隠していたヤツを使うしかない。
そのためにはどうしてもウィーズが邪魔だ。
どうする?
魔力切れは今のところ望み薄。普通に俊足の能力で逃げきることも考えられる。
見付からないように捕まえて、倒す。
具体的にどうやって?
…ユウトのあれだ。地下、つまり地中に潜って奴を捕まえる。捕まえてしまえばどうにでもなるからな。
ん?これ逆でも良いんじゃないか?
ガイゼンを無力化すればウィーズに打つ手は無くなる。事実、致命傷を与えられないからガイゼンをここに連れてきたわけだし。
それなら簡単だ。
スプリングヴォールト!!
問題は攻める順番だ。ガイゼンを先に攻撃しては何も起こらない。
だが、ウィーズなら。
「危なーい!」
回避に転じるしかない。だが、直線上にいるガイゼンからしたら死角からの奇襲になる。
そしてとっておきの一撃。避けられるはずがない。
無意識に繰り出してきた拳には限界がある。
だが、意識的に繰り出される殺意はそれを上回る。
アーネストブレイドッッ!!
遅れて反応するガイゼンの刀を狙い手刀を放った。
ついでにぶっ飛べ!!
刀を折る際に生じた衝撃波でガイゼンを吹き飛ばした。
あいつの技はお前みたいにうるさくないんだよ。あと、その刀は似合わない。そう思って私は攻撃した。
「あちゃー。まいったことになったぞー」
あとはウィーズのみとなったが、勝てる方法は思い付かなかった。




