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無職は正義  作者: 半半人
噂の無職×→アクティブ無職○
49/69

力の使い方

何をされた?幻覚?それとも別の…。


「まーまー。細かいことは後にして。リカールった名乗ったよね?本人?それとも別人?」


これは現実だ。この景色に見覚えがある。世界を歩き回った時に見た。間違いない。ここは川沿いの森で周囲に魔物が全くいない無生物エリア。


「あ、この場所が嫌だったら変えよーか?」


冷静に考えてみた。前にユウトが俊足(ランナー)と言っていたが、ウィーズ自身の台詞と今の状況から導き出される答えは一つだけ。


瞬間移動。私の背後を取ったのは、触れた相手も飛ばせるから。それしかない。


幻覚じゃないなら勝てる。いくら瞬間移動がすごくても魔力切れになれば必ず勝てる。


「うーん。返事無しか。しょーがない」


ウィーズは片手にナイフを持ち、こちらを見た。


「うーん。ナイフでも駄目かー」


遅れて背中に圧力を感じた。どうやら一瞬の間にナイフで刺されたらしい。ただ、私の体がナイフより硬かったために悩んでいるようだ。


「攻撃効かないし、喋る気無さそうだし、どーしよっかなー?」


こいつの考えていることが分からない。飄々とした態度が情報を引き出したいのか、それとも個人的な理由なのか。ユウトなら分かるんだろうか?


「ホントはねー、こういうことはしたくなかったんだけどさー、あそこまでメチャメチャにやられるとこっちも大変でね」


先程倒した刀使いの男がウィーズの隣にいた。


「能力は使いよう、もしくは相性ですからね。ガイゼンさん後はよろしくでーす。」


ウィーズが消え、私と男は向かい合った。さっきは倒されたフリをしていたようだ。ピンピンしている。


「てめぇやってくれんじゃねぇか。力凄ぇみたいだけどよぉ、関係ねぇな」


どうやらここからが本気の戦いになるようだ。いや、私が本気になることは……。


一閃。


光ったと勘違いするような鋭い斬撃が目の前を通った。遅れて風が吹き、更に遅れてが風を切る音が聞こえた。


…これにも見覚えがある。


「んだよ。上手く真似たと思ったのに」


サラヴィスの軍師ラヴェール居合い斬り。似ている、いや、むしろそのものだ。


「じゃ次は、っと!」


速い!!


おそらく凡人の中で最速。動きにも無駄が無い。次々と繰り出される攻撃を避け、こちらも攻撃に転じるが当たることはなかった。


「メンドいから次で決めるわ…」


刀を鞘に戻し、重心を落とした。


おそらく強烈な居合い切りの予備動作。距離を十分に取っていれば大丈夫だ。最悪、逃げるという手もある。


細心の注意を払い、ガイゼンを視界に留めたまま後方に下がった。


「はい、チェクメイト」


…な……?



「空!!凪っっ!!」


ウィーズの声と同時に放たれた攻撃は見覚えのあるものだった。

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