力の使い方
何をされた?幻覚?それとも別の…。
「まーまー。細かいことは後にして。リカールった名乗ったよね?本人?それとも別人?」
これは現実だ。この景色に見覚えがある。世界を歩き回った時に見た。間違いない。ここは川沿いの森で周囲に魔物が全くいない無生物エリア。
「あ、この場所が嫌だったら変えよーか?」
冷静に考えてみた。前にユウトが俊足と言っていたが、ウィーズ自身の台詞と今の状況から導き出される答えは一つだけ。
瞬間移動。私の背後を取ったのは、触れた相手も飛ばせるから。それしかない。
幻覚じゃないなら勝てる。いくら瞬間移動がすごくても魔力切れになれば必ず勝てる。
「うーん。返事無しか。しょーがない」
ウィーズは片手にナイフを持ち、こちらを見た。
「うーん。ナイフでも駄目かー」
遅れて背中に圧力を感じた。どうやら一瞬の間にナイフで刺されたらしい。ただ、私の体がナイフより硬かったために悩んでいるようだ。
「攻撃効かないし、喋る気無さそうだし、どーしよっかなー?」
こいつの考えていることが分からない。飄々とした態度が情報を引き出したいのか、それとも個人的な理由なのか。ユウトなら分かるんだろうか?
「ホントはねー、こういうことはしたくなかったんだけどさー、あそこまでメチャメチャにやられるとこっちも大変でね」
先程倒した刀使いの男がウィーズの隣にいた。
「能力は使いよう、もしくは相性ですからね。ガイゼンさん後はよろしくでーす。」
ウィーズが消え、私と男は向かい合った。さっきは倒されたフリをしていたようだ。ピンピンしている。
「てめぇやってくれんじゃねぇか。力凄ぇみたいだけどよぉ、関係ねぇな」
どうやらここからが本気の戦いになるようだ。いや、私が本気になることは……。
一閃。
光ったと勘違いするような鋭い斬撃が目の前を通った。遅れて風が吹き、更に遅れてが風を切る音が聞こえた。
…これにも見覚えがある。
「んだよ。上手く真似たと思ったのに」
サラヴィスの軍師ラヴェール居合い斬り。似ている、いや、むしろそのものだ。
「じゃ次は、っと!」
速い!!
おそらく凡人の中で最速。動きにも無駄が無い。次々と繰り出される攻撃を避け、こちらも攻撃に転じるが当たることはなかった。
「メンドいから次で決めるわ…」
刀を鞘に戻し、重心を落とした。
おそらく強烈な居合い切りの予備動作。距離を十分に取っていれば大丈夫だ。最悪、逃げるという手もある。
細心の注意を払い、ガイゼンを視界に留めたまま後方に下がった。
「はい、チェクメイト」
…な……?
「空!!凪っっ!!」
ウィーズの声と同時に放たれた攻撃は見覚えのあるものだった。




