無双開始
私たち二人はノヴァイルの近くにいた。
「…ユウトさんは本気、でしたね……」
「あぁ」
「本当に私たち二人でこの国を手に入れられるんでしょうか?」
先程のユウトの台詞を思い出す。
「サラヴィスはもう落としたから、ノヴァイル落として来て。はい、これ作戦を書いた紙」
渡された紙を見てため息を一つ。そう簡単にいくのか?
他に渡された道具を見ても、これで一つの国が降服するようには思えない。
「…やるだけやってみるか」
不安しかない。だが、あいつが出来ると言ったのなら。多分、いや、百パー大丈夫だ。
「行くか。召喚の方よろしく」
「…はい」
乗り気じゃないのは分かるけどやるしかない。
◇◇◇◇◇
『あ、あー。聞こえますかー?』
ここで咳を一つ。
『我が名はリカール。市場流通のあのリカールだ。本日はこの国を貰いに来た』
なんだが楽しい。
『無駄な抵抗はせず、こちらの支配下に降るというなら害は加えん。しかし!反抗の意思があるのならそれ相応の方法で何らかの処置を取らざるをえない。諸君らの懸命な判断を期待している』
◇◇◇◇◇
ここはノヴァイル城の上空。私は、リカールに変装し、キリアールの能力で空を飛べる魔物を私の背に配置し、今の状況を作り上げた。
携えた拡声器からユウトの芝居じみた声が大音量で流れる。
下のあちこちで小さな騒ぎが起こっているのが見えた。
ステップ1!まずは国全体をパニック状態にしよう!
紙に再び目を通し、次にやることを確認した。
片手を高く挙げ、それを振り下ろした。それを隠れているキリアールが確認し、次の行動へ移った。
キリアールの能力は召喚。ただし、それには条件があった。ユウト曰く“反比例”。キリアールの説明は、“外側が強く見えれば中身が弱く、中身が弱いと外側が強い”というものだった。
多分、見た目を取るか、強さを取るかということだと、私は思っている。
合図を受けたキリアールは私より更に上空に黒い小さな球体を無数に出現させ、それを地上に一斉に落とした。
小さく簡単な見た目とは裏腹に、あの球体にはとてつもない秘密がある。それは、重さ。
球体は道路に凹みを作り、民家を次々と粉砕していった。前にやった破壊工作の似ている。
ステップ2!度肝を抜いてやろう!
ノヴァイルは魔法より、技術面で優れているそうだ。つまり、上空にいる私には魔法弾でなく、実弾が飛んでくるということらしい。
ユウトの予想通り大砲の弾が一発飛んできた。
度肝を抜くって
こうか!!
着弾のタイミングを見計らって、それを握り潰した。
爆発するタイプじゃなくて良かった。




