力はいらない
女の元に再び近づき、私は後の方で見ていることにした。
さて、ユウトはこの女をどうやって説得して利用するつもりなんだろう?
「後ろのあの娘、貴方の仲間なのね…。何が目的なのかはっきりさせて」
「何って言われると困るんだよな。こっちは質問することが目的なんだけど、あわよくば少々力を借りたいなぁ。なんて。まずはお名前を聞かせてはもらえないでしょうか?」
「貴方ふざけているの?」
「ふざけてなんかいないよ。でも、信じてもらえないか…」
私はユウトの背後で少し殺気を出した。前に、相手から欲しい情報を引き出すには二つの方法があると聞いたことがある。信頼による交渉か脅しによる尋問か。私は前者に向いていないので、こうやってユウトをサポートしよう。
「うっ…」
「あ、自己紹介は先にしないと失礼だね。俺はユウト。そして、後にいるのがユユだ」
「…キリアール、です」
まあまあ。話が進めばどうなろうと関係ないや。
「キリアールさん。ユユに聞きましたが、あなたは召喚師ですね。なぜ、あの場所にいたのか教えてください?」
「……」
キリアールは悩んでいるような様子だった。ユウトの雰囲気と私の雰囲気の違いに戸惑ってるいるようにも見えるが、本当にそうなのか分からない。
会話が途切れる度に威圧すればいいし。
「こちらからもいいですか?」
「どうぞ」
「この問答が終われば無傷で解放してくれる保証はありますか?それが保障できな…」
「うん、いいよ。最初からそのつもりだし」
「……ううん?」
クソ。完全に私のことを警戒して話が止まってしまった。今度からは記憶が残らないようにぶっ倒そう。
「…うーん。面倒だから僕たちのことを明かす、って手もあるけど。そうしたら
…たたでは済まなくなるし……」
出た!ユウトのモヤモヤモード。これはユウトが勝手に自問自答して、相手に変に勘違いさせる、もしくは、深読みさせて空回せること表す。一番近くにいる私ですら狙ってやってるのか、そうじゃないのか未だに分からない。
ただ、話の途中で意味深なことを言って区切られるとその後が気になって仕方なくするという絶大な効果がある。
「ユユ。キリアールさんをちょっと見張ってて」
「いいけど、なんで?」
「もしかしたら深ーい穴が必要になるかもしれないからね……ここは頼んだよ」
ユウトはニヤリとしてから変な足取りで奥の方に消えって行った。
私といる時は全然こんな風じゃないのに、変な奴だ。




