無装の本音
私はこの世界が好きだ。元の世界に戻ろうとは一切思わない。だが、ユウトはどうだろう?
「その方法が分かったら考える」と言っていたが、その本心は分からない。もしかしたら、諦めているのかもしれないし、戻りたいのを我慢しているのかもしれない。ユウトの本心を知りたいから元の世界に戻る方法があって欲しかった。
ユウトの口から「この世界に留まりたい」と聞きたかったのだ。
元の世界の私は目立たない、普通より下のグループに属していた。いじめられていたわけでも、勉強ができないわけでも、運動ができないわけでもなかった。ただ、何もかも普通に感じることが苦痛でもあった。
もっと簡単に言うと、全てに無関心だった。
当たり前とか、常識がつまらなかった。ただ、それだけだった。
そして、この世界に来た時とてつもない喜びを感じた。呪いや勇者という制限があったが、同時に自由も手に入れたと思っていた。
色々大変なこともあったが、ユウトがいたおかげで助かったことも多い。私なりに恩返しがしたかった。
だから、私の期待していた答えが存在しないと知り落胆した。
女の作った魔物を倒すことはただの八つ当たりだったのかもしれない。
このもやもやした気持ちは当分、いや、一生晴れることはないかもしれない。
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「…ここは……?」
「やっと目が覚めた。ユユ、コップ一杯の水を持ってきて」
あの女の目が覚めた。これから何かが始まるということは分かるが気が乗らない。
「ん」
「ありがとう。どうぞ、飲んでください。質問はそれから」
「…はい?貴方は……!!貴方あの時の!!」
私を見て顔が強張った。当たり前か。
「落ち着いて落ち着いて。悪いようにはしませんから」
「信じられると思う?」
「言いたいことは分かりますけど…」
「何が目的?私をどうするつもりなの……」
「落ち着け、って言ってんだろ」
ユウトも思わずこっちを見た。別に私は悪くないだろ。その女が慌てるから…。
「「…はい」」
お前も畏まらないでいいだろ!!
そんなに怖いのか?
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「ユウト。いい加減に第二段階がなんなのか教えろよ」
「教えてもいいけど、内緒にしてくれる?」
「お前以外話相手いないけど」
「お、おぉ。その言葉は嬉しいんだけど、友達がいない可哀想な…」
「誰が可哀想な女だ。別に気にしてないし、どうでもいいし」
「…分かった。教えるよ。その前に、前々から王様が忠告していたこと覚えてる?」
簡単に言ったら、現王国反対組織がどうのこうの…だったかな?
「まぁまぁ」
「火のないところに煙は立たない、だっけ?まあ、そんな感じだよ。噂は何か理由があるから広まるもの。国のトップの忠告が全くの嘘ってことは考えられないから…」
「回りくどい。もっと簡単に」
ユウトにアイアンクローを食らわせ、持ち上げた。
「痛っ、痛っ!!ごめんってば、簡潔に言うから!」
「ならよし」
「つまりですね。あの忠告は本物で、それを利用して国をひっくり返そうかなぁ。と」
あ、なるほど。そういうことか。
「それっていつ思いついたの?」
「最初から。ひっくり返そうと思ったのは最近」
「お前すごいな」
前々から思っていたが、こいつは本当にすごい奴なのだ。
ただし、それを口にしたことはあまりない。




