家の中の不穏
結論、反対組織はいない。
それがいると思わせることだけが、ギリアムたちの狙いだ。ユユに「連想させることが大事」と言ったのもヒントになった。
「何が目的なんだ?変に国を煽っても良いことはないだろ?」
「そうではない人もいるんです。理由もなくこんなことはしないでしょう?」
目的については隠し通すつもりか…。それなら、それでいいが。
「まだまだ、会話が長引きそうだ。そこで、二つ提案する。一つ、俺たちに被害が無いことを保証できるなら力を貸そう。二つ、信用ではなく、利用価値があるからという意味で協力するということ」
「それは」
「これ以上に好条件があるなら言ってみろ」
ギリアムが「やれやれ」といった表情を見せた。あちらも利用する側。浅く関係を持つ程度のほうが都合がいい。
「分かりました。二つ目はいいとして、一つ目をどう証明すればいいのですか?」
「最低でも構成員ぐらいは教えてもらわないと」
少なくとも数人はこれに関わる人物がいるだろう。一人で出来るような奴がいるなら…明らかにこの世界の人間ではない。
「会わせてくれると助かるが」
「機会があったら、と言っておきます。自分を含め六人。四人はすでに知っているはずです」
「分かった。早速だが、国外を調べてみると面白いことがあるかもしれない」
「それはお互いにとって?」
「価値があるだろう」
そこに辿り着ければ、だがな。
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ギリアムは外に出た。
「名前を聞くのを忘れてしまいました」
それほどのことではないがつい口に出していた。
会話をした男の方は恐ろしい。年齢は自分より同じより下であるはずなのに、それ以上の含蓄がある。一般人を風船とするなら、鉄球のような重くて密度のある人間と言い換えたほうが伝わるだろうか。
後方にいた女も興味深い。家に入ってから全く隙を見せず、一定の重圧を掛け続けてきた。男が冷静に対応出来ているのは彼女がいるからだろう。
「終わりましたかー?」
「はい」
「どーだった?面白い人だよね?」
「そうですね。どこであの人たちを見付けたのですか、ウィーズ?」
俊足兼瞬間移動者であり、メンバーの一人であるウィーズに目を向けた。
「さー、忘れましたよ」
流すような態度は今に始まったことではないが、少し慣れないでいた。
「で、会話して何か分かりました?」
「全くです」
能力、証明者。相手の感情を読み取るのだが、あの男からは一つの感情しか読めなかった。「騙したい」や「警戒」でもない。こうなったらいいなぁ、ぐらいの軽い「願望」だけだった。
女の方は「殺気」二割、「苛立ち」四割、「空腹」四割だったかな?
「あ、あの人たちの名前は何ですか?」
「ユウトさんとユユさんだよ」
そこでウィーズは笑った。
「多分世界を変える、キーマンで間違いないよ」
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ギリアムが読心系の魔法か能力を発動していたのは分かっていた。発動したタイミングはおそらく…雰囲気が張り詰めた時。
あいつは俺たちの敵になる可能性が高い。理由あるけど、目的が無い奴は元の世界で言う快楽殺人に近い。個人の好き嫌いで行われるタチの悪い、関わりたくない人間だ。
「安心しろ。ヤバくなった私がワンパンしてやんよ」
発言の意味が濃すぎて色々危ないが、まぁ、あいつよりは大丈夫だろう。




