家で踏み込まれる
ラヴェール?
何か聞いたことあるような……っ!!
思わずユユの方を向いてしまった。その、視界の端に確かな笑みを浮かべるギリアムが見えた。
まさか、こいつ…サラヴィスのスパイなのか?なぜノヴァイルの情報課で働いているんだ?そもそも、瞬間移動出来るということは俺の行いも全て知られているということなのか?
(馬鹿っ!顔に出しても、こっち向くなよ!落ち着け!)
ユユの睨みで何となく察した。
戦いとは違う、ピリピリとした緊張感が辺りに広がっていた。
「何でも、戦争を仕掛けようとした、まさに、その瞬間に敵に国ごと攻め落とされたんですって」
「へ、へぇ。それは面白い冗談だね。サラヴィスについての情報を持ってるってアピールか?」
(…あっ!ユウトの奴……冷静を保とうとして何口走ってんだ!)
「姉がサラヴィスにいるとは言っていないのですが。どうしてご存じなのでしょう?」
しまった!普通はノヴァイルに仕えていると考えるはずなのに、何でサラヴィスっ言ってしまったんだぁ!?
どう誤魔化せば……。
「そう警戒しないでください。情報を扱う身ですのである程度は覚悟しています。いやぁ、ここまで話が早いとはむしろ光栄です」
「…お前、本当にメモを読んだだけで悟ったのか?」
「はい。だいたいは、ですけど」
「…どういうこと?」
ユユが耳元で囁いた。
「…メモに何て書いた?」
「お前らの企みは知っている。とだけ、書いてある」
「は??それで伝わるのか?」
「あぁ。薄暗いといえば?」
「なめこ」
「というように連想させるのが大事だ」
本当はなめこじゃないがこの際どうでもいい。
相手は俺を警戒し、上の立場だと錯覚している。でなければ、今頃誘導されたような迂闊な発言を攻めらているはずだ。
「回りくどくなったが、本件はそれだ。お前たちのことを聞きたい。話によっては手を貸してもいいと思っている」
「おぉ!なかなか友好的で助かります。ですが、その件については勝手に判断することはできません」
「当然だな。代表者がいれば楽なんだが…」
「いいえ。代表者はいません」
「組織的なものなんだろ?だったら」
「だからこそです」
組織というものには必ず、それを率いるリーダーが必要だ。リーダーが目的や目標を示し、それにたどり着けるように誘導する。リーダー不在の集団を、ことわざでは烏合の衆と言う。
目的が無い、目標を達成しなくてもいい組織…そんなものがあったところでどういった影響を与えるのだろうか?
「情報と同じです。見えないから、そこに存在しないから、価値があるのですよ」
…あー、なるほど。考えてみれば簡単なことだ。盲点というか、なんと言うか。
俺はユユの方を見た。
(何でこっち見…!?)
ニヤッ、と悪そうな笑みを浮かべた。




