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無職は正義  作者: 半半人
勇者×→無職○
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家でも彼女が強い

自宅に穴が空いたものの、寝ずに結界を張り続けて一日が経った。


いくら家の中では無敵とはいえ不規則な生活スタイルはよろしくない。なんとかして、修理しなければ。


「はぁ?お前がやれよ」

「材料を持って来てくれたらあとはやるから、この通りお願いだ」


ユユに土下座をし、事の重大さを伝える。

今まで魔物に襲われなかったのは俺が自宅守衛者(ホームガーディアン)の能力で結界を張っていたからだ。だが、破壊された部分の結界に歪みが生じ、勘の良い奴にバレてしまう。そうなると色々面倒だ。


「やだ」

「そこをなんとか」

「やだ」

「好きな物作るから」

「食べ物で釣られるわけねぇだろ」

「…どうしたらお願い聞いてもらえる?」

「今日は何もしたくねぇ。ってことで、寝るから。起こしたら殺すかんな」


居間で朝食を終えたユユは自分の部屋に行ってしまった。

…自分の部屋の天井が無いのによく寝れるなぁ。


「はぁ……俺がやるしかないのか…」


この家に使われた木材でなければ、自宅守衛者の能力が発揮されない。そのために、一度ノヴァイルに足を運ばなければ


可愛いユユのためだやるしかない。

家を留守にしたらユユが危ないし、俺は家から離れられないし……。

仕方ない。裏技を使うか。


自宅守衛者が有効な範囲は敷地内のみ。この辺りはジャングルっぽい森林のため、敷地なんて境界はない。そのため、外壁から二メートル離れると敷地外と判断されてしまう。家の中心から形成される球体が敷地内と考えてもらうと分かりやすいだろう。

つまり、だ。敷地内にさえいれば俺は無敵でいられる。


俺は外に出て、地面に手刀を突き刺した。そして、思い切り力を込め地面から家をひっぺがす。それを担ぎ俺はここから近いノヴァイルに向かった。

家自体が動いているから能力は働くし、ユユに危険は及ばない。何より、ユユを起こす心配がない。どんな魔物に会うよりもユユの眠りを妨げる方が死に近づく。


ある程度、強い魔物が出ない所まで来たので担いでいた家を下ろした。長くは続かないが結界を張り、町に繰り出した。



俺はノヴァイルの城にいた。


「おぉ!勇者ユウトよ。此度は何用か?」

「俺活動してないし、ただのユウトでいいよ」

「そう謙遜するな。今日に至るまで、サラヴィスの勇者を抑えているではないか」

「抑えてるつもりはないんだけど……で、用事なんだけど。俺の家を建てた職人、もしくは、建築に使った木材を教えてくれ」

「木材でいいなら、この城の倉庫にたくさんある。今、使いを呼ぶ。そやつが案内してくれるであろう」

「ありがとうございます」


用が済めばここに用はない。さて、足早に…。


「一つ、言わなければいけないことがあるのだ」

「…はぃ…」


言葉の節から面倒そうだ。召喚されといてなんだが、厄介事は御免したい。


「お主に頼みたいことがあるのだ」

「…やっぱり」

「魔物を使役する集団が最近目立っておる。まだ、詳しくは分かっておらんが近々呼び出すかもしれん。その時は」

「ダッシュで駆け付けますよ」


王の言葉を遮り、俺はその場を後にした。

外に出ると若い召し使いが倉庫まで案内してくれた。荷台を借りて、修理に必要な木材を持ち帰ることにした。帰りの途中に小腹が空いたのでユユのお土産のついでに焼き鳥を買っていった。

ユユは肉が好きだからなぁ。喜んでくれたら嬉しいなぁ。


何事もなく家に着き、屋根の修理に取りかかろうとした。

が、問題が一つ。


「ユユがまだ寝てるんだよなぁ…」


ユユの真上で作業しようものなら必ず目を覚ます。目を覚ました瞬間、殺される。

いくら家の敷地内で最強とはいえ、ユユが相手だ。間違いなく死ぬ。ドラゴンを素手で倒せる、サラヴィスの勇者に勝てるわけがない。

となると、ユユが目覚めるまで待つ以外ない。自分の命もユユの睡眠も守れる。うん、完璧だ。


屋根の上で寝転がり、ユユの顔を覗き込んだ。

普段とのギャップでとても可愛い。今すぐにでもベットの隣に潜り込んで添い寝したい……。まぁ、そんなことしたら殴り殺されるからしないけど。


…ベキッ……!


屋根の一部が折れ、体が宙に浮いた。

落下の最中に脳をフル回転させ打開策を考えた。


魔力を使って体を浮かせば…!!


だが、遅かった。


「…お・は・よ・う」

「……お、おはようございま」

「とりあえず死ね」

「ぐばっ!!」


ユユの鉄拳が顔面に炸裂した。


「抱き付いたの悪いけど、もうちょっと加減」

「メガラッシュ!!」

「あばばば…!!」


強烈な連打を浴びせられたが俺は死ななかった。ただ、異世界に召喚されてから今に至るまでで一番痛かった。


「んで、私に何か言うことねぇか?」


あんなに殴ったのに謝罪を乞うのか!?だが、ここで機嫌を損ねたらもっと殴られることは明白だ。


「本当にすいませんでした!」

「もっと頭下げろ!」

「はいっ!!」


ノーマル土下座から床にめり込む土下座をしてなんとか許してもらった。


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