心機一転。始まりの我が家
ユユには「王の意思で死ぬ」という制約があったようだ。それは、自宅守衛者の能力で打ち消すことが出来た。
しかし、俺にも制約はある。
本当はここに召喚された時、俺の本当の能力は守護者だった。魔法はそこそこ、物理系統の全てが特化しているというものだった。その時の召喚者が俺の力を恐れ、簡単に能力を発動できない条件を付けたのだが、
それが自宅守衛者であった。
ある意味無敵になったが不便と言えば不便だ。
そして、この制約は自宅守衛者の力であっても解くことは出来ない。もし、出来たとしたら俺はただの物理特化に成り下がってしまうだろう。
いや、よくよく考えてみたら空腹も睡眠も本当は必要ないし、家を担いでる状況でも片腕で何とかなるし結界砲も使えるし……
明らかに召喚者のミスだよな。
「ユユ。君の呪いはもう……」
「……うん…うん…っ!」
「だから、泣かないで」
ユユを抱き締め……っっ!!?
「そういことは早めに言えやぁぁあぁぁ!!!」
「ぶへらっっ!!」
ユユの捻りを加えた鉄拳が見事に喉の真ん中に命中した。
分かるよ。今まで黙っていたのは悪いと思っているけど切り替え早くない?喉仏を拳の固い部分で抉るの超痛い!
「な…!」
「あんなに…心配、したんだ、ぞ!それなのに…それなのに………!!」
ユユの涙は止まっていなかった。
馬鹿か、俺は。
ユユはこの三年近く、もしかしたら死ぬかもしれないという恐怖を感じていたんだ。
それを隠して、何事もないような顔で、毎日を送っていたんだ。
俺は何も言わずに、今度は力強くユユを抱きしめた。
声を漏らすユユの拳が俺の胸を何度も叩いた。小さく、何度も。
「…俺と一緒に第二の人生を……」
「ん…?」
「いや!何でもない…」
目を瞑り、優しく微笑んでみせた。
いいんだ。
俺の願いなんか二の次で。
ユユが幸せになるなら、脇役だろうが悪役だろうが構わない。
サラヴィスが全面戦争を仕掛けてもねじ伏せるだけだ。それほどに、俺の決意は固かった。
「両国を敵に回したようなもんだし………ユユ、これからはフリーダムに行こうぜ!」
「…おう!」
そうと決まればやることはたくさんある。
「国どころか世界まで変えるのはどうかな?」
「自由なんだろ?アリに決まってる」
「ははっ。それもそうだ」
呪いも、勇者の肩書きも、今日で全部終わりだ。
これからは自由に、楽しく、全力で生きてやる!
…結婚は…………まだまだ先になるのかな?




