家内最強を忘れていませんか?
ウィーズに手紙と携帯試作品を持たせ帰らせた。
今、俺たちはリカールに捕らえられていることになっているからな。身勝手な行動は不審に思われる。
「はぁ。これはこれで面倒だな。買い物に関してはリカールの名があるから良いとして、外出が制限されるのが……」
「家から出ないくせに」
「それでも不便には違いないよ」
「別に…。あと、ユウト」
ユユが本を置き、俺の隣に座った。
「どう、したの?」
「いや…その……」
ちょっと気まずい雰囲気が継続していたから話し掛けてくるということはそれなりに重要な……愛の告白とか?
ふざけるのはこれぐらいにしておこう。
「この間のこと?それなら別に気にしてな…」
「それだけど、ちょっと違う……」
深刻そうな顔がことの重大さを表している様だ。
「ユウトは勇者召喚についてどれぐらい知ってる?」
「えっ、っと。うーん…そういえば全然知らないなぁ…」
少し嘘である。
「少し話が遡るけど…」
年代としてサラヴィスが先に行い、遅れてノヴァイルが行った。サラヴィスもノヴァイルも、開拓した土地を統合し大きな国となっている。かなり前に政経の授業でそんな感じのやつがあったような……。
あの、小さな国がくっついて大きな国攻められないようにする…そんなやつ。
そして、その勇者召喚が成功して両国の王は真っ先に思った。「第二の問題が生まれた」「勝敗などとは違う次元の」と。
これについては話を聞くまでもなく予想できた。領地や資源がほしいのに、大規模の破壊やオーバーキルなんかされては困るし、何より敵になったら厄介すぎる。
そのために制約を設けるのだが、
「そういうのあるか?」
「制約?さぁ、よく分かんないや。自宅守衛者自体が制約みたいものだし」
「…そう」
「私にはある。王は呪いと言ってた」
「…で?」
「で?、じゃない!その呪いがやばいんだよ!!」
「爆発するとか?はは、は?」
ユユが俺の肩をぎゅっと掴んだ。
「死ぬ、かもしれないん…だ……よ」
「…」
「呪いの引き金はサラヴィスの王が持ってる。その気になれば……」
「知ってるよ」
王の意思でユユが死ぬのが制約なんだろう。全くタチの悪い。
俺はユユを抱きしめた。
「大丈夫」
「……死にたくない…」
「大丈夫だから」
「……いくせに…」
「ん?」
「理由もないくせ慰めなんて…!!」
ユユが俺を突き放した。
もう一度抱き寄せようとしたがその手を払われた。
「なんで…私が…」
とうとう泣き崩れてしまった。堪えていたのか…。
「俺を信じて。絶対ユユを死なせないから」
「……」
「…」
……もうこれ以上、ユユの悲しむ顔は見たくない。真実を言おう。
「…呪い……もう解いてるよ……」
「…うん……?」
「いや、その、呪いならもう解いた、ってことなんすよねぇ……ねぇ」
実はユユと初めて会った時に解呪は済ませてある。
一応、俺。
最強の自宅守衛者なんで。




