俺、家、出ない
サラヴィスのアフターケアを済ませた後、家を掘り返し、辺境の地へ担いでいった。
一週間も経ったせいかとても久しぶりだ。
あ。ノヴァイルに報告に行かないと……。
でも、どうせスパイから情報が入っているんだろう。行く意味無いな。
一週間後
「すいませーん。ライン商会のウィーズでーす。アーレン先輩とノヴァイル様から伝言を預かっているですがー」
「ど、どうも」
彼はこの辺境に色々と運んでくれるウィーズ君だ。俊足を持っているため商会の中の運びを担当している。カレーもどきを試食する一人でもある。
「いつも悪いね。ささ、上がって」
「ありがとーございまーす」
ウィーズを家に上げ、お茶とお菓子を出した。
ちなみに、彼は俺が自宅守衛者であることを知らない。
「まず、アーレン先輩から生存確認してこい、と」
「それはもう済んだね」
「あと、ノヴァイル様が『一度会って話がしたい。近々来れないか』と」
「手紙出すからそれでいいかな?」
「相変わらずのニートっぷりですねー」
「別にいいだろ。家から出なくても生活出来てんだから」
「それより…」
ウィーズがユユの方を見た。
「相変わらずの美人さんですね」
「おぅ。やっぱり分かるか?」
「分かりますとも。よくニートの分際で同棲してますねー。羨ましいです」
「まぁ、悪口はスルーして。アーレンさんもなかなかの美女だろ?他にもいるんじゃない…」
「いやいや。仕事メインの人たちばっかですよー。恋愛は、お金の次の、仕事の次ぐらいー、にしか思ってないし。何より、可愛い子にはもう相手がいます」
「分かるぜ!」
何か凄い楽しい。
最近ちょっとユユと気まずい感じになってるから人と気楽に喋るのが嬉しいのかな?
ちらっとユユの方を見たが、読書に夢中になっている。ウィーズに視線を戻し会話を再開した。
「そうだ。良いものがあった」
以前、ノヴァイルに向かったときにこの世界の通信技術に対する不満を溢したことがあった。ライン商会のは元の世界で言うファックスみたいな物で、文字だけを送ることができる。そこで、この一週間を使い、発明してみた。
映像をリアルタイムで映し出すものは作れなかったが、音声だけなら可能であることを発見した。簡単に言う携帯が作れたのだ。二つで一組のこの道具は一方に魔力を流すと、魔素(空気中の微少な魔力。酸素みたいにだからそう名付けたもの)と反応し、近辺の魔素に次々と伝わっていき、最終的にもう一方の道具へ音声を伝えることが出来る。
ただ、第一号のためタイムラグや繋がりにくさが大きく目立つ。
それでも、声を聞けるというのは文字に比べて色々な利点がある。それについてはまた今度で。
「そんなに家から出たくないんですかー?」
愚問であるがしっかりと答えよう。
「もちろんだ」




