ここが帰る場所
「おまっ!何で……!!」
「しぃ!静かに!」
ユユの口を押さえ、バレていないかドキドキした。
「…どういうことか説明しろ」
「は、はい」
ラヴェールとの戦いは見晴らしの良い所で行った。
もちろん周囲に俺以外の物はない。だが、何故俺がラヴェールと対等以上に戦えたのか?
「実は、さっきまでいた場所の真下」
家の中心から円を描く様に自宅守衛者のテリトリーは展開される。特例として地下があるが、基本的にこの範囲内なら力が発動する。
足元の地面を凹ませ、そこに家を埋める。その際、ギリギリ範囲内となるように高さを調整すれば、
「あら不思議。何も無いところで無敵状態を演じることができちゃうんだ」
「このっ!」
「あぁ!ここ、浅いから声が外に漏れるかも!」
「お前の方が声がでかい!」
「分かったから静かにしよう」
地中ということで照明や酸素的な問題があるが自宅守衛者の手にかかれば何てことはない。
台所で紅茶を淹れた。一仕事、終えた社会人の気持ちが今なら分かるかもしれない。
「何であんな無茶したんだ?」
「言ったろ。あれが俺なりの覚悟、ってこと」
少しカッコ良く言ってみた。
「逆にユユは随分大人しかったみたいだけど?ユユが戦えば俺、多分負けたよ」
「…別に」
「まぁ、これでリカールに拐われた勇者二人ってことで自由にできるね。俺は顔が知られてないし」
「…ユウト……」
「何?」
「……ありがと…」
「どういたしまして」
知ってるよ。
ユユは本当の意味でサラヴィスに必要とはされていないってこと。そして、それがユユ本人も知っていること。
力があれば誰でも良かった。世間体が良ければ誰でも良かった。
サラヴィスの飾りが欲しかっただけだってこと。
だから、俺は戦争を止めるという口実でユユを拐った。
ユユには言わないつもりだ。変に気を使われるのは嫌だ。
ユユのありがとうは、お疲れ様という意味で言ったものだろう。それでいいんだ。
「そうだ。助けてもらったお礼言うの忘れてた。ごめんね」
ユユの前に紅茶を置いた。
一人分だけ作ると寂しいんだ。
いつも側にいてくれなきゃ駄目なんだ。
「ありがとう」
俺はユユの全てに感謝している。
「そしておかえり」




