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無職は正義  作者: 半半人
稼げる無職×→捨て身の無職○
30/69

家外戦争(サラヴィス視点4)

「やられた」



ハンクは空を見上げた。だが、いつも見る景色とは全く異なっていた。



「…化け物だな」



シュフトはため息を吐き、半ば投げやりにそう言った。



「リカールだし、そんな驚かないけど」



ラヴェールの強がりも今では何の意味もない。





サラヴィスは国ごと()()()()()



ーーーーーーーーーー


リカールは会話が苦手と言った。

リカールの目的はユークリッドである。


それは、政治的理由なのか



私的理由なのか。



政治的理由なら投降しても悪いようにはされないだろう。


だが、私的理由なら潰せる。



ラヴェールは笑った。



気球は囮。城壁外もおそらく。ユークリッドから注意が離れた今、私なら仕掛ける。


リカール本人、もしくは仲間が手薄になった今を見逃すはずがない。確率は低いが、ユークリッドとリカールが知り合いなら簡単に(さら)える。



ユークリッドのいる部屋のドアを勢い良く開けた。


「…ユークリッド様?いらっしゃらないのですか?」


確定だ。リカールは内部組織にいる。そして、ユークリッドはリカールと知り合いの可能性も上がった。


「どうしました?」


ちっ。


「いえ、敵からの襲撃をお知らせしようかと」

「そうですか…他に異変は?」

「今のところはありません。何かありましたらすぐに」


ちっ。何も収穫が無かった。

だが、今回の考えは正解に近いと思える。もう少し、様子を見れば全てが分かるかもしれない。


ラヴェールは王の元へ戻った。


「ふぅ(ギリギリ間に合ったぁ!!)」


ユークリッドは深いため息を吐いた。




「サラヴィス様。国民への呼び掛け、大変よろしかったです。被害の割には騒ぎになっていないようです」

「…そうか」

「全部隊への警戒度を引き上げ、シュフトと共に対策を練ります」

「そのことですが、先ほど多重結界の展開に成功しました。次に来る結界の匣には有効…」


「大変です!!多重結界が…!」

「あ”あぁぁぁぁんんんん!!ぶっ殺すっ!!あんのくそ野郎がぁぁ!!」


とうとうシュフトが壊れた。


「アホは放っておいて方角は?」

「それが…」


ドドドドドドドドドドドドッッ!!!


爆発!?いや、この音は花火?


「…全方向です……」


「今行く!」

「我々も行くぞ」

「はいはーい」



上空は派手な花火で輝いていた。音も凄まじい。


「どれだけの火薬を使っているのだ?」

「硫化の鉱石と木炭があれば簡単に生成できるとか」

「さすが軍師、博識だな」

「もっと誉めてもいいよん」


冷静に分析する二人の横で、


「サンダー!!サンダー!!サンダァァーーーっ!!!」


一人の魔法使いが飛んでくる結界を一つ一つ撃ち落としていた。


だが、それ以上の手数に観念し、放心した。



「ん?何か、空が遠くなってない?」

「何を……」



空が遠く…否、自分達が遠ざかっていた。


しかも、壁はそのままに城壁内部のみが沈んでいった。その際に地面が割れることはなく、垂直に落ちていった。


深さにして十数メートル。壁も含めると二十数メートル。

地の利を完全に覆らされた。

花火の音で地響きを消すのが本当の狙いだったと気付いても、もう遅い。


「魔法でこの地盤を浮かせることはできないのか?」

「はぁ、はぁ、はぁ…出来なくもないが、相当な時間が掛かる」

「それは、あっちがさせないみたい」


落とされた穴の壁に洞窟が幾つかある。


「罠にハマった時点でこっちが後手。あの穴に魔物もしくは更なる罠があるんじゃない?」


ラヴェールが言うと何故か説得力がある。男二人は黙りこみ、話をしっかり聞いていた。


「正直、こうなったら打つ手無し。お手上げー」




しかし、ラヴェールには確実な一つ策があった。



「おい…東側から何か一体出てくるぞ」

「マジかよ…ハンク!ゴーレムだ!!」

「待て!兵士を集め、数で押す。それまでは様子を見るぞ!」



リカールの新手に翻弄される団長達。





二人を残し、ラヴェールは城へ向かった








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