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無職は正義  作者: 半半人
無職×→稼げる無職○
16/69

自宅花

「おっ!鉱石に紛れて魔石が!しかも、なかなか純度が高い!」



自宅守衛者(ホームガーディアン)により鑑定能力も無敵なのだ!

アーレンさんと契約を済ませ、俺達は自由にしていた。


「ユウトさん。契約は先払いとして終わらせました。なので、実物の方を……」

「まあまあ。お楽しみは最後まで、って言うじゃないですか?それに、この意味は見たら分かりますよ」


ユユはアーレンさんをチラ見しながら本を読み、俺は夕飯の支度をしながらアーレンさんと会話をし、アーレンさんはそわそわしていた。例の商品が気になって仕方ないんだとか。


「約束通り商品は時間が来たら見せます。それまでの間一緒に夕食なんてどうですか?」

「…そこまで言うなら仕方ありません。その時まで待つとしましょう」


アーレンさんにはカレーもどきの試食を何度かしてもらったことがあるので、俺の料理の腕を知っている。実際、食べてもらった後に「いくら欲しいの?」と言い、レシピを売って欲しそうにしていた。


そのことを踏まえて、料理という餌を提示したら見事に食い付いた。


「ユユ、今日はお好み焼きにしようと思うけど…」

「お好み焼きっ!!」


ユユの食い付きもすごい……。


「お好み焼き、ですか?」

「小麦粉と水と具を混ぜて、熱した鉄板で焼き上げる料理です。具の種類で様々な味に仕上がることから、()()()で焼く食べ物。という由来でお好み焼きです」


こういう豆知識的なものは結構好きなので、説明していて楽しくなる。他にも料理だけでなく日常生活を快適に過ごすために役立ったりもする。


「ふむふむ…ユウトさんは博識ですね。どこの地方の料理かは分かりませんが期待しましょう」

「嫌いな食べ物はありますか?アレルギーとか?」

「アレルギー?」

「あ、なんでもないです。こっちの話ですから」

「うーん、そうね。魚介類は避けたいわね」

「意外ですね」

「なんで笑ってるのかしら?」

「それもこっちの話です」


日本の社会人は寿司が好きなイメージがあるから、そのギャップで笑ってしまった。


「ユユは?」

「肉だく、焼きそば、野菜なし」

「はいよ~」


ユユはいつも通りで良いとして、アーレンさんのはどうしようか?女性だし、高カロリーのものは嫌かな?


「…別にいいか」


これを食べれば、今までの固定概念も変わるだろう。



「お待ちどう様」


ユユの前にはリクエスト通りのお好み焼きを置いた。

アーレンさんの前には、刻んだ多めのキャベツ、天かす、紅生姜、油少なめの豚肉の薄切り……。


そして


「おい、マヨネーズは?」


ユユが先に言ってしまったか…。

本当は比較してほしくて隠していたが、バレてしまったら仕方ない。


「これが…マヨネーズだぁ!!」


マヨネーズの入ったボトルを高々と振りかざし、絶妙な角度で二人のお好み焼きにチェック模様を描いていく。青のり、鰹節があるべき場所に舞い降りる様は、さながら桜吹雪…。


「どうぞ召し上がれ!」


ユユは笑顔で黙々と食べ、すぐにおかわりを要求してきた。作った側としてはとても嬉しい。


「思ったより、変……」

「味は保証しますよ」

「ええい!!」


アーレンさんが一口。どうリアクションする……っ?


「……」

「どうですか」

「………おいひ…」


頬を赤く染め、完全に脱力し、微笑んでいた。

その表情は人間の感じる幸福を全て同時に味わっているようだった。


「おかわりもありますよ?」

「……ん…」


アーレンさんは目を閉じ、お好み焼きの味を堪能している。

あ、これ完全に自分の世界に入ってるよ。

本来なら、「これを大手飲食店に売れば…」とか、「大衆化したらいくら儲かる?」とか商業のことしか考えてないのに。


「ユウト。おかわり」

「早いなぁ」


ユユの二度目のおかわりを出し、別の準備を進めた。


「おいしい……まろやかで、コクがあって…でも、くどくなくて……」

「アーレンさん。外、見てください」

「?」


遠距離から魔法を発動させ、準備していた物を打ち上げた。


…ドーンッ!!


夜になりつつある空を明るく照らし、遅れて低音が響いた。

それを、何発も。


「どうですか?俺の商品は?」

「……綺麗…」

「ユウ、ト……」


そうだ。ユユにも内緒にしていたんだ。ふふ、驚いてる驚いてる。


元の世界に未練はないけど、たまにはこうしてたしなむのも悪くない。

そのために今日の夕飯はお好み焼きにしたんだ。


いやぁ、花火最高。






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