全ての地下は俺の家
俺が勇者として召喚されたノヴァイルも、ユユが召喚されたサラヴィスも文明の発展は停滞しているようだ。
理由は様々だが特に資源不足が目立つ。
限られた領地内での農作や鉄工業には当然のように限りがある。限界があれば、発展するものも停滞ししてしまっても仕方ないことだ。
ギルドや政策などで、外界に干渉し文明を向上させる資源集めをしているようだが魔物の存在で難航しているのも確かであった。
何より資源を探す人材も、技術も、機材も、時間も、土地も、全てが不足していた。
しかし、誰も手を着けていない地下を自由に行動できる人間がいたら…。
「ポリツァー同様、市場が荒れるかもなぁ……」
土魔法で周囲を補強し、光魔法で地下を照らし、雷魔法の磁気で鉱石を探知し、水魔法の高圧水流で岩盤を削り、風魔法で土や砂を払い除け、上質かつ傷のない鉱石や宝石を掘り出していた。
敷地内のため全魔法が扱え、加減の調整なども自由自在だ。
たまに、地下に眠る魔物を掘り起こすこともあるが、自宅守衛者がそいつらに遅れをとることはない。
某キャラが全ての天を支配する者なら、
「全ての地下は俺の支配下だ」
魔物を一撃で倒し、使えそうな部位を剥ぎ取った。
無職のモットーは「限界の前の前の前で止めること」
ある程度作業を終わらせ、家に戻った。
途中、魔法を使い自身の汚れを落とした。
居間に行くとユユの姿はなく、時計は昼を示していた。この時間になったら無言で空腹を訴えてきてもおかしくないのに……。
「お……っらぁあぁぁ!!!」
ユユの気合いの入った声と巨大な何かが強大な何かによって吹き飛ばされる音がした。予想はできるが、はっきりしたことが知りたかったので庭に顔を出した。
「このっ!さっさと……!」
「そこのおねーさん」
「あ”あ?」
「そんな怖い顔しないで、ご飯にしませんか?」
にかっ、っと笑って見せるとユユは顔を伏せてこちらに来た。
「…食う」
興奮気味のユユを宥め、家へ入れた。
庭に目を向けると、敷地外に置かれたビニールハウスの中で育つ幾つかのポリツァー。それと、それを食べに来たと思われる大型の魔物の姿。もちろん、拳がめり込んだら跡がある。
ユユなりに俺のために頑張ろうとしてくれてるのかな?
…全くっ……!
可愛いやつだぜ!!
今日昼食は贅沢に、高い食材を使った絶品サンドイッチを全力で作らせていただきました。




