始まりはいつも家
ポリツァーの栽培の際、家の地下に大きな一室を作った。
これが面白いことに、いくら広くしても自宅守衛者が発動するのだ。今じゃ庭よりも地下の方が広いくらいだ。
これに関しては出入り口が一つしかなく、家に繋がっているため一つの部屋として認識されているからだと思われる。
鬼ごっこをしていた理由は、最近狩りに行かなくなったユユが「体を動かしたい」と言ったからだ。
敷地内なら対等以上の力が出せるため、良い暇潰しの相手になっていると思う。
と言ったものの、俺自身の性格的に動くのはあまり好きではない。魔法とか銃とか遠距離系の方が個人的に好きなのだ。実際、ドラゴンを倒した際の結界やレーザーを放った瞬間は気持ちよかった。オーバーキルじゃなければ、だが。
「ユウト、腹へった」
「はいはい。その前に汗かいてるし、お風呂にでも入ったら?」
「ん?じゃあ、そうさせてもらうか。今日は……カレーが食いたい」
「…これはまた……」
カレー
スパイスによって味に深みの増した、野菜スープ。
前の世界では簡単に食すことができた、日本人なら皆が大好きな料理の一つ。
それが、カレー。
カレーの再現がどれだけ大変か…。
アーレンさんや他の店などで様々な香辛料を買い集め、この世界風のカレーを作ろうとしてみたが未だに作れないでいる。
近いものは出来ているのだが、こう、イマイチ感が隠せないのだ。
王都に出向いたときに知人に試食させてみたりするが、「もう十分だ」「美味すぎる」などで参考にならない。そもそも、カレーはこの世界に無いのでアドバイスを貰える方がおかしい。
ユユはいつも「まだまだだな」と言いながらも完食するのだが、料理をする身としては結構凹む。
一度、この世界に存在する香辛料じゃ再現は不可能だと思った。
しかし、新たな香辛料を作ったら?調味料なんかで代用できたら?
と考えると諦めるに諦められないのだ。
何より、俺も美味しいカレーを食べたい。
ポリツァーを栽培したように頑張れば、完成するかもしれない。
本気を出したら自宅守衛者の力でポンっ、と、
………出ることはないな。楽は出来ないってことだ。
「今回は前に仕入れたカララの実、だっけか?あれの乾燥したやつを、試してみよう」
失敗しても麻婆豆腐やマスタードなんかの調味料のヒントになるし、やってみるか。
……。
「…もぐ、もぐ、もぐ……まだまだだな」
「……っすよね~」
くっそぉ!!
だが、オレはこういう逆境には燃えるタイプだぜ!!
次こそは、必ず成功させてやる!!
「はぁ……悪くはないんだけどなぁ……」
カレーもどきを一口。
異世界でレストランなんか経営するのも面白そうだ。しかも、自宅で産み出したもので調理して、美味しいと言われたら……。
悪くないかもなぁ…。
ただ、やるとしたら家じゃなければいけないということになってしまう。
調理スキルや家事スキルは家にいる時に無敵レベルに上昇するため……。
……あ…………。
良いことを思い付いた。
カレーは代謝を良くし、脳の回転を良くする。って、前の世界で言ってたような、言われてないような。
まぁ、何はともあれ。良いことを思い付いた。




