無職だけども家で稼げる
勇者ユークリッドが王都ノヴァイルを訪れて半年が経ち、市場は荒れに荒れていた。
供給不足であった「ポリツァー」が定期的、かつ、安定した量出回るようになったのだ。
栄養が多く味が無いため、多くの人が嫌わず食べられるある意味野菜の王様が突然に、だ。
調味料や調理方で好みの味に仕上げられるが、栽培の困難さから高等な人間のみにしか出回らない高級品であったポリツァー。
故に、定期的、かつ、安定した供給は市場に大きな影響を与えた。
しかし。
それだけに留まらず、ポリツァーが安定して供給されてから四ヶ月後。
「ポリツァーに味がある」とほざく輩が現れた。
最初はタチの悪い悪戯だと、聞き流していたが時間が経つほどにはその噂は広がっていった。
結論から言うと、それは本当だった。
しかも、普段出回るポリツァーに加え、味付きのポリツァーという異常な事態に世間は荒れた。
一時期このポリツァーには呪いや毒があると言われたがそれもただの噂で終わる。
一体、どこの誰がどうやってポリツァーの栽培を可能にし、味を付けるという偉業を成し遂げたのか興味が尽きないところである。
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と、新聞に書いている。
嘘だろ?
ユユにポリツァーの栽培を辞めろと言われたが、体調が整い再開してから半年。
とんでもないことになってしまった。
普通に自宅守衛者の能力を使い栽培しているだけなのに。
自由研究感覚で砂糖水や薄めた塩水などで実験しているだけなのに。
アーレンさんに市場に回すように言っただけなのに。
金が半端ない。噂が半端ない。
金が手に入るのは良い。文句どころか、お礼を言いたいぐらいでもある。
ただ、変に騒がれるのは好ましくなかった。
どっかの成金が買い占めを始めるだとか何とか。普通のおいしい野菜として広まれば良いのに。
まだ、元の世界の常識が頭に染み込んでいるからこんな安直な考えなのかもしれない。
正直誰がどうなろうが俺には関係ない。
ただ一人、いつも側にいてくれる大切なあの人だけが笑ってくれるなら。それでいい。
ユユは最近機嫌が良い。
狩りという働きに行かなくても生活に困らないからなのか、それとも、ポリツァーの味を気に入り家でなら食べ放題ということに喜んでいるからなのかは分からないが。
快適に過ごせる普通な日常と彼女の笑顔は最高だ。
家事だけをこなしていた日々より、やりがいのあることを見付けられてよかった。
そして、今日もポリツァーに愛でるのであった。




