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俺の嫁は勇者さま!  作者: おチビ
第一章――勇者は既に人妻です――
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第十四話

やっと投稿できましたが、短いです。

 馴染みの鍛冶屋に向かう為、俺達は街の外側に足を進めた。


 別に全ての鍛冶屋、武器屋、防具屋が街の外側に有る訳じゃない。事実、大通りに店を構えている店もいる。そして、活気のある大通りに店を出すぐらいなのだから、その品揃えも一級品だ。


 しかし、今から行くその鍛冶屋も決して品質が悪い訳じゃない。実際、その作品を使っていた俺達が言うのだから間違えないだろう。


 品質の悪い武器は、結構簡単に壊れてしまう。歪んだり、折れたり、斬れなくなったり……それが実戦だったら目も当てられない。


 では、何故その鍛冶屋は外側にあるのか?


 ……その鍛冶屋の店主は何かを作るのが好き過ぎたのだ。


 何かを作りたくなれば、昼夜を問わず作る。そんな店が街の中心でいい顔をされる訳がない。その結果、街の外側に追いやられてしまってのだ。


 しかしこの店主、反省なんかしなかった。


「これで思う存分、好きな事に没頭出来る」


 そう言ってニヤリと笑ったのは、今も鮮明に覚えている。


 そんな事を考えてるうちに、目的地に到着。ドアを開け中に入れば、多種多様の刃物が目に入った。良く言えば、何でも作れる。悪く言えば、節操がない。相変わらず、此処の店主の腕は確かなようだ。


「いらしゃいませ~ 少々お待ち下さい~」


 艶のある声が、店の奥から聞こえる。どうやら声の主は、手が離せないようだ。


 俺達は、久しぶりの店内を見て回り、時間を潰す。武器は、剣、槍、槌、弓などなど。防具も革鎧から金属鎧など実に様々だ。そして、鍬や包丁などの家庭用品まで置いてある。


 まるで、ホームセンターのような店内。しかし、そんな店内を見て回るのは不思議と面白い。


「ふふ」


 隣のエリーが、俺の顔を見て笑う。


「どうしたの?」


「ナオトが子供の様に、何か喜んでいるのを見て嬉しくなってしまったんです」


 どうやら知らないうちに、俺は笑っていたようだ。……実を言えば、俺はホームセンターなどに行けば楽しくなってしまうタイプだ。そしてこの店は、どことなくあの雰囲気に似ている。


「お待たせしました。……あら? あらあら」


 ドアから俺達を見回した後。


「髪と瞳の色は違うけど、お久しぶりね、エリーちゃん、ナオト君」


 ほんわかとした笑顔で俺達を迎えてくれた。


「はい、お久しぶりです。ミラさん」


 微笑む返すエリー、俺は解釈だけ返す。


「立ち話もなんだし、中に入って」


 店の入口に行き、閉店作業を始めるミラさん。時刻はまだ昼過ぎ。閉店するのには早すぎる。


「いいんですか? 別に俺達の為に閉店しなくなくても……」


「いいのよ、お金に困っている訳じゃないし。それにね」


 振り返ったミラさんは苦笑いを浮かべていた。


「今のこの国で、余り〝武器〟を売りたくないのよ」


 俺達は促されカウンターの奥から、中に入る。『店』と商品を作る『工房』の間には、休憩室みたいな部屋に成っている。


「ちょっと待ってね、お茶を出すわね。それと、亭主を呼んでくるわ」


 声を掛けながら工房に向かうミラさん。暫くすると、


「おう、久しぶりだな」


 小太りの如何にも『ドワーフ』って感じのオヤジが出てきた。


「全く、連絡も寄越さず今の今まで……まあ、心配はしてなかったがな!」


 ハッハッハと豪快に笑う、この店の店主。通称『親っさん』……名前は忘れた。


 一頻り笑った後、俺達は近状を報告した。この一年の事、これからどうするかの事等を。


 総てを話した後、


「どれ、先ずはお前達の武器(エモノ)を見せてくれ」


 ニヤリとした笑顔で催促する、親っさん。この人はホントにブレない。


 俺達は苦笑いを浮かべながら、剣を手渡す。


「ふむ」


 先ず親っさんが手にしたのは、魔帝の剣。その刀身を睨み、そして叩く。


「……〝剣士〟には最高の剣だが、〝鍛冶屋〟には面白みの無い剣だな」


 不満そうに呟く。


「〝折れず、曲がらず、傷付かず〟か……オマケにドワーフの俺でさえ、この剣が何で出来ているか解りゃしねえ。〝鉱物〟なのか、それとも〝生物〟なのかそれさえもな。正に〝魔剣〟だな。ホントに鍛冶師泣かせの剣だ」


 そう言って、今度はエリーの使っている剣を手に取る。


「……こりゃダメだな。今の嬢ちゃんじゃあ、この剣じゃ釣り合わねぇ」


 エリーの使っている剣を研ぎながら、親っさんは話を続ける。


「〝達人は剣を選ばず〟って言葉が有るが、ありゃ嘘だぜ。どんな達人も、その腕に合った剣じゃあなければその力を十分に発揮出来る訳がねぇ。そして、今の嬢ちゃんがその状態だ。こんな剣じゃあ、嬢ちゃんの腕を活かしきれねぇ」


「例えるなら……今のこの剣でも、嬢ちゃんは〝加護〟を使う事無く〝竜鱗〟を斬ることが出来る。だが、それだけだ。〝竜鱗〟を斬った時点で、この剣はへし折れる」


 一通り整備が終わり、鞘に収めた剣をエリーに手渡す。


「と言っても、嬢ちゃんに合う剣は今はねぇ。今度来るときには用意しとくぜ」


 ニヤリと笑う親っさん。用意とは、やはり鍛造と言うことだろう。


「さて……あれ? 嬢ちゃん〝魔弓〟はどうした?」


 エリーが魔帝との戦いで使っていた魔弓、あれを作ったのも親っさんなのだが……


「城から逃げる時に、置いて来ちゃいました」


 素直に言って謝るエリー。あの時は、装備の回収まで気が回らなかった。


「……大変だったのは解る。だが、嬢ちゃんはもうちょっと装備に愛着を持てよ……」


 怒るに怒れず、項垂れる親っさん。俺だったら、ぶん殴られるかもしれなかった。



「さて、そろそろこの一年で何が有ったか話すとしようか」


 俺達の装備の手入れが終わって暫くしてから、親っさんは話し始めた。


「まあ、変化が起こったのはホンの二ヶ月前ぐれぇだがな……」


 深く息を吐き、徐に親っさんは告げた。


「……二ヶ月前、〝勇者〟が帰還した」

おチビの近状ですが、職種変更、スランプ、夏バテです。頑張って書いてますが、暖かい目で見守って下さい。


ご意見、ご感想お待ちしております。

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