第九話
PV100000、ユニーク20000突破!!
感謝感激です!!
これも読者様の御蔭です。これからも応援お願いします。
視線を左右に振り、状況の確認。
目に入ってくるのは、兵士、兵士、兵士……俺達は囲まれていた。
後ろに下がろうとして、背中に当たるのは壁。退路も無い。八方塞がりとはこの事か。
しかし、先程までと違い、こんな状況でも心には余裕がある。それはやはり、すぐ傍にエリーが居るからだろう。彼女が傍に居るだけで、心が落ち着く。そんな自分に苦笑いを浮かべ、この場をどうやって切り抜けるかを考え始める。
先ずは自分の確認。傷はある程度回復し、戦闘には支障はないだろう。問題は疲弊。俺もエリーもヘレンさんも何も言わないが疲れが見え隠れしている。
おまけに言えば、戦い難いのだ。新たに現れた兵士達、その顔を見れば浮かべているのは戸惑い、恐怖、疑念……そして構えは雑。これでは『新兵』でもなく『訓練兵』だ。
これが覚悟を持った『兵士』なら戸惑い無く倒せるが、こんな相手では此方も倒しにくい。さりとて、捕まるなど論外だ。倒さず出入り口に向かうなども今の状況では不可能だ。どうしたものかと考えてるうちに、一人の『兵士』が斬りかかってくる。俺はその『兵士』の剣を跳ね上げ、切り倒そうとしてやはり戸惑う。その恐怖に怯えた顔を見てしまったからだ。
「チッ」
舌打ちして、蹴り飛ばす。『強化』されている脚力で蹴っ飛ばしたので吹き飛んでいったが、死ぬよりマシだろう。ああ、本当に戦いにくい。
どうしたものかと再び視線を走らせた時、後ろの壁に小窓が有る事に気づいた。人は通れぬほど小さい物だが、そこから見えるのは……空。
刹那の閃き、俺はヘレンさんに声を掛ける。
「ヘレンさん、この壁の向こうは何処か解りますか?」
ヘレンさんはしばし考え、
「此処は城の一番外の城下側だから、この向こうは外だよ」
その答えを聞き、俺はこれしかないと決断する。
――――出口が無いなら作ればいい。
「エリー、少しの間……」
「解っています。貴方には、指一本触れさせません」
全てを言わずとも理解してくれるエリーに、俺は感謝し驚いた。両手に剣を持ち、数人を相手にしている。斬撃を受け止め、払い、一度に数人を切り払う。その姿は剣舞を舞っているようだ。
俺は見惚れそうになるのを耐え、壁に向き直る。エリーがああ言ったのだ、周りは意識しないでいい。俺は先ず、壁を軽くコン、コンと叩いてみた。とても硬い音と感触があった。
深呼吸しながら、俺は剣を振り上げる。
求める物は『威力』。だが、どうする? 『魔力』で『強化』するか? いや、駄目だ。『魔力』はこの後必要になる。今は使うべきじゃない。使うのは『加護』、それのみでこの壁を破壊する。
次に本当にこの『壁』が崩せるかだ。どれくらいの『雷』でこの壁を崩せる?そもそも『城』というのは『王族』を護る『鎧』みたいな物だ。簡単に崩せはしないだろう。今の俺に砕けるのか?
疑問は俺の頭を回り続けるが、一つ深呼吸して考えるのを止める。解らないならば、今持てる力全てを出せばいい。どのみち崩せなければ、俺達に未来はないのだ。ならば信じるだけだ。
己に宿りし『加護』を。
俺は想像する。『全てを切り砕く雷』を。媒体は既にこの手にある。文字通り俺の敵を全て切り倒した『魔帝の剣』が。それを『雷』で強化する。
故に、紡ぐ言葉はただ一つ。
属性付与発動音声、宣言。
「全力属性付与・雷……形成、雷の剣!」
轟音など、生易しいと思わせる音と目を焼く程の光が剣から放たれる。大気を震わせ、その『威力』を撒き散らす。それに合わせ、身体から『力』が引っこ抜かれる。気を緩めれば、膝から崩れ落ちそうだ。
放たれた『雷』は、『魔帝の剣』の『刀身』を『心金』とし、新たな『刀身』を形成する。作られるは正しく『雷の剣』。
「ウオオオオオッ!!」
咆哮と共に『雷の剣』を力の限りに振り下ろす。剣が壁と激突する。しかし、深く切り裂くが貫通しない。ならば開くまで切り続けるまでだ! 斬撃、斬撃、斬撃……何度も何度も繰り返す。しかし、まだ壁は砕けない。
疲労は身体に蓄積していく。思考は淀み、目は霞み、剣を振るう両手は重くなる。それに伴い、『弱気な俺』が囁き始める。
(もう十分だろ? 諦めろよ)
――――黙れ
弱気を振り払い斬撃、まだ壁は砕けない。
(俺はよく頑張ったよ。楽になれよ)
――――黙れ!
再び斬撃、まだ壁は砕けない。
(後ろの兵士の命とエリーの命……大切なのはエリーだけだろ?)
――――黙れ!!
斬撃、まだ壁は砕けない。だが、俺の両足から力が抜け、その場に膝を付いてしまう。
「まだだっ!!」
それでもと、上半身だけを捻り刺突を繰り出す。壁に深々と刺さるが、それだけだった。
(ダメ……なのか?)
諦めが心を犯し、剣を持つ手からも力が抜けそうになった時、
「ナオト、信じて下さい。……私が信じる貴方自身を」
エリーの言葉が聴こえた。そうだ、諦めるには早すぎる。まだ全てを出し切ってはいない!
持ち手を強く握る。しかし、既に剣を振る程の力は残っていない。ならば、
「全力属性付与……解放! 穿てぇぇぇぇぇぇ!!」
『刀身』を形成していた『雷』を、『壁』の中で解き放つ。元来、『壁』などを破壊するには、『壁』に『穴』を開け、その中に『爆発物』を入れ、爆破する。そうすることで、その『威力』が余さず『破壊力』に転化するのだ。奇しくも同じ状況になった事により、解き放たれた『雷』は、壁の中で暴れまわり、『壁』を内部から破壊していく。そしてついに、頑強だった『壁』を砕く事に成功する。
『壁』を砕くことにより、入って来た外の光に目を細める。それでも目を凝らせば、城下が見える。俺は喜びと共に後ろを振り向き、
「あれ?」
戸惑いの声を上げた。
見れば、この場に居た『兵士』の殆どが倒れている。倒れていない『兵士』も『目』か『耳』を押さえ、膝を付いていた。エリーやヘレンさんは、『白光の防壁』を展開しその中で苦笑いを浮かべていた。
「え、なにコレ? 何が起こったの?」
俺はエリーに状況説明を求める。
「実は……ナオトが〝全力属性付与〟をした時の〝光〟と〝音〟で殆どの人達が倒れてしまって……それで私は咄嗟にヘレンさんと自分を〝白光〟で包んだのですけど……」
成程、意識してした訳ではないが、『全力属性付与』の余波が奇しくも『閃光手榴弾』と同じ効果をもたらした訳か。
まあ、結果オーライだ。このまま逃げてしまおう。
俺はふらつきながら立ち上がり、『穴』に近づく。見れば自分達が居る場所は、かなり高い位置に有るみたいだ。城下を見下ろしながらそう考える。この高さから飛び降りれば、『強化魔術』を掛けていても無事では済まないだろう。『飛行魔術』も無いし。
一応『策』は考えているが、成功するかは解らないしな。だが、『城内』を逃げるのは無謀だろう。此処以外に『兵士』が居ないとは思えない。しょうがない、覚悟を決めよう。
俺はエリー達に、『策』を話そうとした時、
「待て……勇者よ」
再び『王』の声が聞こえてきた。どうやら近くの『兵士達』が壁となり、『光』や『音』から『王』を護ったようだ。それでも完全では無いらしく、座り込み、頭を降っていた。
「何処へ、行こうというのだ。〝勇者〟を求めるのは余だけではない。他の〝国〟や、〝権力者〟が〝勇者〟を求めぬ筈がない。ならば、余の元に……」
「確かに、それは真実でしょう。今や〝勇者エレハイム〟は、一部の人達にはとても魅力的なモノなのでしょう。しかし、私は……いえ、私達の使命は、終わったのです。これ以上、誰かの〝欲望〟の為に戦うつもりはありません」
そこで言葉を切り、『王』に向き直りながら、エリーは片手を胸に添えた。
「次に戦う時は、自分の為、ナオトの為、悲しみに涙を流す誰かの為に。その為ならば、私は喜んで〝剣〟を取りましょう」
そう言って微笑むエリー。その姿と言葉を聞き、俺は再び実感する。
――――ああ、やっぱりエリーは『勇者』なんだな。
そう思い、苦笑いを浮かべる。彼女に掛かった『勇者』という『呪い』は一生解けないようだ。
まあ、いいさ。俺はエリーが『勇者』だから『嫁』にした訳じゃない。彼女を護り、一緒に生きて行きたいから『結婚』しただけだ。
エリーを己の『欲望』の『道具』にしようとする輩が居るならば、戦うだけだ。
そんな事を考えていると、エリーは話は終わったと此方に歩いてくる。『王』がまだ後ろで叫んでいるが、もう振り返らなかった。
「さて、どうやって逃げるんですか?」
そう言って微笑みかけてくるエリー。俺は意識を切り替え、二人に説明する。説明を終え、二人の反応は、
「面白そうですねっ!」
エリーは楽しそうに言った。一方ヘレンさんは、
「全く、お前は変な事ばかり考える」
何故か呆れ気味だった。
「まあいいさ。では、〝認識阻害〟と私に〝強化〟を掛けてっと」
次々と『魔術』を掛けてくれるヘレンさん。よし、これで逃げる準備は整った。
俺達は一つ頷き、『穴』から飛び降りる。そして、『魔術障壁』を足元に展開する。
『魔術障壁』とは、『魔力』を固め文字通り『壁』とし、『物理攻撃』や『魔術攻撃』から身を護るものだ。なら、『体重』を支える事も出来るのではないのかと考えたのだが……上手くいったようだ。
空中に展開した『魔術障壁』は見事に三人を支えた。だが、
「ヤバい、これ〝魔力〟の消費が激しい!」
三人分の『重さ』を支えるという事は、かなりの『強度』が必要になり、その分『魔力』の消費が多くなってしまったのだ。
そして疲労困憊な俺には、それはキツすぎた。再びフラフラに成る俺。その姿を見てヘレンさんは、
「ハァ~。後は私がするよ」
ため息を付きながら、次の『魔術障壁』を展開しだした。俺もしょうがなく、エリーに肩を借りようと声を掛ける。
「エリー、すま……」
「はいっ!!」
全てを言う前に、俺はエリーに抱き上げられた。俗に言う、『お姫様抱っこ』だった。これは恥ずかしすぎる。
「エリー! 〝お姫様抱っこ〟は駄目だ! 肩を貸してくれるだけでいい!!」
「嫌です、ダメです、離しません♪」
俺の抗議は尽く却下された。だが、俺は諦めない。こんな羞恥プレイは認めない。
「お・ろ・せ~!!」
「却下します」
「あんたら! イチャつくのは後にしな!!」
ヘレンさんに怒られた。
「ナオトは大人しくエリーに抱かれてな! それで、どうやって逃げるのか考えは有るのかい?」
ヘレンさんの疑問に、俺達は顔を見合わせ首を振る。逃げ出すことに精一杯で、後の事など考えて無かった。
「あんたら……まあいい。ならついて来な」
そう言って次の『魔術障壁』に飛んでいくヘレンさん。俺達は頷き合い、追いかけていく。俺は相変わらず抱っこされたままだったが。
この時、俺達は『城』に『エリーの装備』を残して来てしまった。回収はあの時の状況では不可能だったのだが……
この事を、俺達は後に後悔することになる。
これでやっと半分ですかね。
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