第一話
初投稿です。
魔帝の間に剣を打ち付け合う音が響く。
剣を持ち、相手を倒さんとする者は『魔帝』と『勇者』。
そして『勇者』の援護をしようと藻掻く俺。
だが俺の前に居るのは『生きる屍騎士』と呼ばれる元『英雄』達。
意思は無いが技術は有るらしくその一撃一撃が俺の身体を削る。
焦る気持ち、進まぬ足、ならばと『勇者』に送るは強化魔術。
「強化!」
魔法効果を受けた『勇者』は俺を見て微笑みそして…
「魔帝……そろそろ決着を着けましょう」
魔帝との距離を離し剣を構え直す『勇者』。
「勇者……一つ答えろ、なぜ戦う?」
『勇者』とは逆に、構えを解き自然体で立つ『魔帝』。
「どうして、そう問うのですか?」
「貴様の事は調べた。普通の人間、普通の市民、普通の女……まあ、〝女神の加護〟により〝勇者〟に成った事を除けば平々凡々な普通の女だ……その貴様が、なぜ命懸けで我を滅ぼそうとする?我にはそれが理解出来ない……答えろ、〝勇者〟」
気が付けば俺の周りの『生きる屍騎士』も動きを止めていた。
先ほどまでの剣撃の音が止み、静けさに包まれた魔帝の間で『勇者』も構えを解き……
『魔帝』に……そっと微笑んだ。
「はい、私は女神様に選ばれた唯の町娘です。国の理想も、教会の思想も、何より女神様のお考えも、私には解りませんし解ろうと思いません。そんな私の戦う理由は……」
「理由は何だ?」
「愛しい彼を……元の〝世界〟に返す事です」
「……どういう事だ?」
「彼を召喚した女神様と約束したのです。貴方を倒せば、彼を元の〝世界〟に返すと……」
そう言って顔を俯かせる『勇者』。
「……我の命は良いとして、貴様それで良いのか?人間とは愛しき者と添い遂げるものではないのか?」
『魔帝』は俺を見て、そして『勇者』……いや、彼女を怪訝な眼で見た。
「確かに……それも正解でも有ります。ですが、あの人はこの世界の人間では無いのです。元の世界に残してきた夢や両親、友人達がいます。それをこちらの都合で諦めさせるのは……間違っている。と、私は想うのです」
彼女は顔を上げ『魔帝』を見た。
「……それが永久の別れでも?」
「はい」
「……後悔無いのか?」
「それは……解りません」
その言葉を最後に魔帝の間は再び静かになり、そして『魔帝』は……
「……勇者、名は?」
剣を頭上に振り上げ、爆発的な剣気を振りまいた。
「……エレハイムです」
彼女もまた、剣を顔の右側面に構え剣気を開放した。
「よかろう、エレハイム殿。汝を我が怨敵と認め、この一撃で葬ってやろう!!!」
「はい……私も、この一撃に全てを込めて…貴方を倒します!!!」
その言葉を最後に二人は、己の間合いに敵を収める為動きだす。
『魔帝』は苛烈に、『勇者』は華麗に。
そして俺は……
「エリィィィーーー!!!」
彼女の愛称を叫び、『生きる屍騎士』の群れを越えようと剣を振り回した。
もはや動かず唯の壁なのだが、数が多く彼女達の決着の瞬間には間に合わない。それでも…
(彼女が死ぬかもしれないのに見ている事しか出来ないなんて!)
その思いが必死に剣を振るう。
そして壁を越えた先に……
『魔帝』の胸を貫いた彼女の姿が有った。
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