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アロワナ  作者: 修さん
6/9

アロワナ⑥

続編16

十六


 梅雨の中休みなのか、流れる雲の隙間から午後の太陽がどんよりと鈍い光を放っていた。

 久しぶりに休みを取った修は、二女智花の誕生祝を買うためにお台場に足を向けた。様変わりした東京の風景に戸惑いながら、新橋から「ゆりかもめ」に乗った。

車窓に目を向けていると、「芝浦埠頭駅」を過ぎた辺りで眼前にお台場の全景が姿をあらわした。

「ほうー、この辺りばい。ペリー艦隊の来航に触発されて台場を築造したところは。変われば変わるもんたいね。今は家族連れとカップルのメッカばい」

 修は一人納得して、顔を綻ばせた。

 台場駅で降りて駅の周りをうろうろしていると、ショッピングモールのある大きなビルを見つけた。

「こりゃぁ立派なビルたい。たしか、店はこのへんやなかったろか」そうつぶやいたとたん、修は大勢の人たちに押されてビルに呑み込まれていった。

 ビルの中に一歩足を踏み入れると、人の波がいく重にもうねっていた。幼児を抱えた父親と、ベビーカーを押す母親でごった返している。ショッピングモール全体が子どもたちの歓声で包まれていた。

 人ごみを掻きわけながら通路を三十メートルほど歩くと、修の額には汗が浮き出てきた。空調は効いているのだろうが、一人で買い物をする気恥かしさもあって、やたら蒸し暑く感じる。

 修の目指す店は、中一の智花が好きなアニメのグッズを販売している店だ。どうもそれはビルの二階にあるようだ。

 奥のエスカレーターで二階に上がると、一階よりもいくぶん人の波が緩やかだった。しかし、ここのフロアも何台ものベビーカーが往来している。若い母親たちは、ベビーカーを押していなければ一流企業のOLと見間違うほどセンスのいいファッションとアクセサリーで身を飾っていた。

「若いお母さんばかりやなぁ。なんかかんか言うても日本は平和たい」

 混雑しているにもかかわらず、母親たちはみな余裕のある顔をして落ち着いた笑みを浮かべている。裕福そうに見える父親たちも、気遣かうかのように母子に優しい視線を送っていた。

 探している店は、通りの中ほどにあった。入口では入場制限をしているのか、長い人の列ができている。店員はハンドマイクを手に、まるでテープでも回しているかのように、淡々と待ち時間の説明を繰り返していた。

 修が列の最後尾に向かって足を進めていると、突然大きな叫び声が聞こえた。

「キャアァァァー」店の中からだった。

 入口付近に並ぶ父親たちは、喧騒を打ち破る女の声に恐れ戦きベビーカーに覆いかぶさった。

「なんやッ」修はとっさにからだを反転させて、急いで列の先頭に割り込んだ。

 その叫び声には何となく聞き覚えがあった。

「どうしたんやッ。なんがあったんやッ」修は我を忘れて声を張り上げた。

 店員は倒れた女に駆け寄り、何度も肩を揺すっている。

「大丈夫ですか?しっかりしてください」

店員の肩越しに覗き込むと、倒れた女に出血などはない。どうも失神しているようだ。ジージャンの下に着ている赤いTシャツの裾からヘソが覗いている。それはまだしも、運の悪いことに、紺色の短いスカートが尻の方まで捲れ上がっていた。

「ひょっとしたら、キリコ・・・・・・。桐子じゃなかかッ」

 修は慌てて桐子の着衣を整えた。

「お知り合いですか?」

 女性の店長がうしろから声をかけた。

「え、えぇ。友人です。ご迷惑をおかけしとります」

 修は振り向きざまにペコリと頭を下げた。

 修はその姿態に対する恥ずかしさよりも、桐子の容体が気になって仕方がなかった。桐子は前任地でも数回倒れたことがある。そのときもたまたま修が一緒だった。持病といえば持病になるのだろうか、でもすぐに意識を取り戻している。

桐子のようなこころの病に病名をつけるとするなら、その範疇の境目はいかにも曖昧模糊で、専門家らしき医者の判断を仰ぐしかない。その医者によると、桐子の症状は「パニック障害」の部類に含まれるということだった。ただ、普通は時間の経過とともに症状は改善していくというのだが、桐子の場合は一般的な症例とは違って、とても改善しているとは思えない。発症の周期にまったく変化がないからだ。

 修は昔、「メンタルヘルス」の検定試験を受けたことがある。そのわずかな知識を元に素人なりに分析してみると、このところその病名に疑問を感じている。桐子の症状は「PTSD」いわゆる「心的外傷後ストレス障害」ではないかと思う。発作のときの症状を見ていると、昔遭遇した事件か何かのトラウマによって、様々なストレス障害を引き起こす疾患のような気がしてならない。

 修は前回と同じように、桐子の頬を叩くと、朦朧とする桐子を背負って屋外に出た。ビルの前には人工の砂浜が広がっている。木陰にベンチを見つけると、修はそっと桐子を座らせた。

 桐子はボロボロと涙を流しているものの、何とか意識を取り戻したようだ。フラッシュバックが少し治まってきたのかもしれない。

「どや、大丈夫か?」

 嗚咽を押し殺して、桐子は小さくうなずいた。

「名古屋のメンタルクリニックから東京の病院を紹介してもろたやろ。その病院には行っとうとか?」

 桐子は無言のまま首を横に振った。修から叱られることは承知しているようだ。

「なんで行かんとや。薬は続けないかん、て先生が言いよったやないか」

 目を閉じたまま、桐子はきつく唇を噛んでいる。

「自分を大事にせんやっちゃなぁ」

 修は桐子にハンカチを与えて、ゆっくりと背中を擦った。涙は止め処なく流れて、足元の砂を濡らした。


 その後、二人は一時間ほど海風に吹かれた。

「気分はどうや?」修の靴は半分ほど砂に埋もれていた。

 桐子はやっと口を開いた。

「もう大丈夫。ごめんね」目にはいっぱいの涙を溜めている。

 桐子は我に返りハンカチを目頭にあてた。

「何でこげなとこにおったとや?」

「まゆちゃんのお洋服を買おうと思ったの」

「誰やそれ」

「オサムちゃんは知らなくていいの。まゆちゃんのことなんか」

 か細い声だった。

「・・・・・・まぁいいわ、知りとうもなか」

桐子は少女のようにはにかんだ。

 前に失神したときもそうだったように、桐子は発作の前後に口調を変える。変わると言った方がいいのかもしれない。作られたアニメ声ではなく、母親のような慈愛に満ちた優しい声に変わる。まったく人が変わってしまったような気がする。

「腹はへらんか?」

「うん。すこ~しすいたかなぁ」

「もう歩けるとか?」

 桐子は目を細めてゆっくりと顎を引いた。頬にはいくぶん血の気が戻っている。

「新宿で焼き鳥でも食うか?」

 桐子は、修の左手に自分の右手を添えることで彼の優しさに応えた。


 時計を見るとまだ四時前だった。

 この時間に開いている店といえば、昔よく通った「思い出横丁」の焼き鳥屋だ。修は迷わずその店に入った。五十人ほど収容できる店だが、客はまだ疎らだった。

修は桐子を庇うようにして、カウンターの一番奥に座らせた。そしてメニューを物色したあと、マスターと何やら言葉を交わして桐子の左隣に腰を下ろした。

焼き鳥のほかに、和食、中華と、数十種類のメニューを書いた短冊が所狭しと貼ってある。桐子は少し驚いたような顔をしたが、ほっとしたのか、わずかに目を潤ませた。

 しばらくすると、ビールと砂肝の炒めものがカウンター越しに店員から手渡された。

 修は桐子が好きなものをしっかりと憶えている。修のなにげない気配りに、桐子はハンカチで目尻の涙を拭った。

「なんでんよかけん、乾杯たい」修はグラスを軽く持ち上げた。桐子もはにかみながらほんの少しグラスを差し出した。

「しかし、こっちに来てから初めてやなぁ、症状が出るとは」

 桐子は唇を曲げて、躊躇しながら二本の指を立てた。

「えっ、二回目か」

「そう、オサムちゃんがいないときに一度あったの」桐子は視線を落とした。

「桐子、ちゃんと病院に行かんとー」

「でも、仕事が忙しいし・・・・・・」

「仕事より病気を治す方が先や」

「でももう治らない。そう思う・・・・・・」

「そげな弱気でどげんするとや。いつもの桐子はどこばいったとかッ」

「でも、これだけは・・・・・・」桐子はじっと目を閉じた。

 修はビールを一気に飲み干すと、思い切って訊いてみた。敢えて避けてきたことだった。

「昔、なんか怖いことば経験したとやなかか?火災とか、交通事故とか、言いにくいばってん、男に襲われたとか・・・・・・。そげな悪夢が甦って、心理的苦痛が続いとうとやないとか?」

「よく聞くわ、それ・・・・・・。外傷後ストレス障害っていう病気よね。でも、もしそうだったらもう治っていてもいいころよ。私の場合まったく症状に変化がないの。回復傾向が見られないのよ。三十年も前のことなのにね」

 自分の過去については頑なに口を閉ざしていた桐子が、初めて自ら漏らした瞬間だった。吹っ切れたように、唇の両端がわずかに緩んだ。

「いつも人混みの中で起こるたい。それも、子ども連れの夫婦が多いときに限っとる」

 桐子は黙ってうなずくと、見る見るうちに目に涙を溜めた。

 修は一瞬のうちに、触れてはいけないことだと悟った。

「すまんな、気がつかんで。ほら、酢豚がきたばい。はよ食え」

 桐子はビールをひと口含むと、思い出したように煙草を手に取った。すーっと煙を吸い込んだあと、天井に向けてゆっくりと吐き出した。

「私・・・・・・、子どもを亡くしたの。若いときにね。昔、言ったことがあったでしょう、会社に入る前に一年遊んでたって」

 修は桐子の突然の言葉に耳を疑った。

「こ、子どもを産んだことがあるとか?」

「・・・・・・そうじゃないの」桐子は修を見つめ、ほんの少し唇を震わせた。

 修の優しさに触発されて、桐子はこころの底に堆積した赤い澱を吐き出そうとしているのか。それとも良心の呵責に耐えかねて、誰かに鬱然とした胸中を吐露したいのか。いずれにしても、桐子のわずかに捲れ上がった唇は、何かを発しようと赤味を帯びて生気を取り戻しつつあった。

 修は怖い話を聞く前の子どものように、期待と怖れで全身が強張り、ゆっくりと唾を呑み込んだ。

「もう三十年も前の話よ」桐子は覚悟を決めて、こころに仕舞い込んだすべてのものを吐き出すかのように、遠くに向けて勢いよく煙を飛ばした。

そして、慈愛に満ちた優しい声で話し始めた。

「私には両親がいなかったこと、知っているでしょう?子どものころは、施設からもらわれてきたって言われて育ったの。もちろん育ててくれたのはお祖母ちゃん。今でこそ、義母の母親だったって知っているけど、当時は、まったくの他人に育てられていると信じていたわ。だから物ごころがついたときから、親のない子だといじめられて、私ずーっと独りだったの。お祖母ちゃんはよくしてくれたわ。でも血の繋がりがなかったから、何となく他人行儀で、こころは通わなかった。そして小学校に入学したころには、母親代りのお祖母ちゃんはもう五十過ぎ、当時は二十歳前後で結婚する人が多かったから、周りの子の母親はほとんどが三十前後なの。だから私の出生は、いじめの恰好の材料だったのよ。それに・・・・・・、誰が噂したのか『飛田の娘』って囃し立てられたわ。オサムちゃんは知らないでしょうけど、大阪の飛田新地は、昔、沢山の遊郭があったところよ。子どもってねぇ、可愛い顔の裏から、時々邪悪が姿を見せるのよ」

 桐子は、グラスに残ったわずかなビールを飲み干した。

 修は桐子の話を咀嚼するかのように、何度もうなずきながら空のグラスにビールを注いだ。

「あこがれだった小学一年生のお誕生会なんて、とても悲惨だったわ。家は薬品会社をやっていて少し裕福だったから、お祖母ちゃんは沢山のお料理とケーキを用意してくれてね。お土産のクッキーまでもよ。それに私が十一月生まれだから、コスモスを部屋中に飾ってくれたわ。私も一生懸命お手伝いしたのよ」

桐子は思い出し笑いをしながら、また煙草に火をつけた。

 修は苦悶の表情を隠すために下を向いている。

「その日は、十人もの友だちが来てくれるはずだったの。でも、近所の四年生の父親から突然電話があったのよ。箕面に有名な日本画家がいるでしょう?『山村桂月』あの人からよ。彼は、当時天満橋に住んでいてね。私も子どもながらに有名人だと知っていたわ。でも傲慢で卑劣な人だった。『息子はお宅にはやれまへん。売春宿なんかにはやれまへん。町内会の子らにもよう言うときましたさかい。二度と呼ばんようにしてくれますか』あとでお祖母ちゃんに聞いたけど、そう言ったらしいわ。私は電話の内容が分からず、ずっと家の中で友だちを待っていたの。お祖母ちゃんが頭を下げながら友だちの家に電話をしていたのを憶えているわ。どんな内容なのか理解できなかったけど・・・・・・、今考えると、私のために、誕生会に来てくれと頼んでいたのよね。母親らしきことをしてくれていたんだわ」

 修は上目遣いに桐子を見た。

 桐子の唇は怒気を帯びて小刻みに震えている。

「その日、暗くなるまで待ち続けた私は、友だちを捜そうと家を飛び出したの。私を追ってお祖母ちゃんも外に出たわ。近所の公園とか駄菓子屋とかを捜し回って帰ってきた私は、玄関の前で泣き崩れているお祖母ちゃんを見たの・・・・・・。そして、家の塀に貼られた何枚もの紙もね。それには『売春宿』と書かれていたわ。一年生の私はどんな意味なのかも分からず、だた泣くばかりだった・・・・・・」

「桂月か・・・・・・。何ちゅうやっちゃ」

 山村支社長の父親だということは今は言うまい。修は歯型がつくほどきつく唇を噛んだ。

「それと四年生の息子か・・・・・・」

それは雄三だろうか。もしかしたら雄三と桐子は幼なじみだったー。何か釈然としないものが修の脳裏をかすめた。

「あとで聞いたんだけどね。桂月はうちの会社の胃薬を飲んで、胃潰瘍を悪化させたらしいの。それが原因で作品が納期に間に合わなかった、って逆恨みをしていたらしいわ。子どもじみた単純な話よね。今考えたらバカみたい」

 修は桐子の辛い幼少時代に思いを馳せながら、一気に冷酒を呷った。


「柳田さん、これを見てください」

 稲垣がカウベルを鳴らして飛び込んできた。手には何枚もの遺留品リストのコピーを持っている。

「そんなに慌てるなよ。飯くらいゆっくり食べさせろ」

 柳田は口元についたケチャップをナプキンで拭った。

「やはり思ったとおりです。みんなの遺留品リストの中にありました」

 稲垣はリストのコピーをテーブルの上に広げた。

「どれどれ」柳田はゆっくりとからだを起こした。

「これは『魚の形をしたキーホルダー』それからこれ、『大きな淡水魚のキーホルダー』それと、『古代魚のキーホルダー』最後に、『大型熱帯魚のキーホルダー』様々な表現で書かれていますが、すべて『アロワナ』のことですよ」

 稲垣は腰を下ろす前に、焼きそばの大盛りとハンバーガーを注文した。

「そうか、やっぱり・・・・・・」

「共通していたのはこのキーホルダーだったんですね」

 稲垣はグラスの水を一気に飲み干した。

「それと、成実の休暇届けについて各所轄から連絡がありました」

「で、どうだった」

「池川の休暇とピッタリ符合しました。福岡、鹿児島、愛知の三件に関しては池川と同じ日に休みを取っています」

「そうか、ご苦労さん」

 柳田は腕を組むと口を真一文字に結んだ。

 稲垣は、ハンバーガーをまた喉につまらせたのか、慌てて柳田のアイスコーヒーを飲み干した。

「誰のコーヒーを飲んでるんだッ」

「すみません、喉がつまっちゃって。で、でも、もう一ついい報告があります」

「何だ、言ってみろ」

「高尾山で目撃者が、いや目撃したわけではなく、鼻で匂いを嗅いだ、というか何というか」

「何を言っているんだ。もっと落ち着けよ」

「実はあの香水の匂いを嗅いだ人間が見つかりました。当日、リフトで山を下った客の中に、あの匂いをさせていた女がいた、というんです」

「誰の証言だ?」柳田の目が光を放った。

「リフトの案内係をしているアルバイトの女子大生です。あの事件の翌日から学校の試験があったため、しばらくバイトを休んでいたそうです。だから聞き込みの網に引っかからなかったんですよ」

 稲垣は自慢げに胸を張った。

「女は最終時刻寸前に乗り込んだので、記憶に残っていたそうです。夏シフトの運転時間は朝の九時から夕方の四時半までです。土日も延長はありません」

「その香水に間違いないのか?」

「間違いありません。僕が『ロマン』という香水を持って、粘り強く聞き込みをしたんですからね。その女子大生も日頃その香水をつけているので、しっかり憶えていたそうです。それにつけ過ぎで、強い匂いを発していたようですからね。ただ服装とか体型についてはほとんど記憶にないそうです」

 柳田はニヤリと頬を緩ませた。

「アマンというんだ。その香水は」

「すみません、とにかくその香水です。それに四時半なら山村の死亡推定時刻とも一致しますよ」稲垣は焼きそばの青のりで口の周りを汚している。

 柳田はゆっくりと目を閉じた。

 その女は果たして成実だろうか。もしかしたら池川・・・・・・。池川も同じ香水を使っている、と稲垣から報告を受けている。池川が高尾山にあらわれたとしたらどうだろう。山村は以前大阪北の支社長をしたことがある。だから池川があらわれても、「成実は遅れてくる。私はそれまでの代役よ」とでもおどけて、適当な理由さえつけておけば違和感はないはずだ。

しかしなぜ、山村をはじめアロワナのキーホルダーを持った人間を狙わなければならなかったのか。そして、なぜ二人は共謀したのか・・・・・・。

ちょっと待てよ。山村が起こした交通事故、これが今度の事件に繋がっているのだろうか。柳田は冷めた番茶をゆっくりと飲み干し、椅子に深々とからだを沈めた。


「具合はどや?」

「ありがとう。もう平気よ」

「少し太ったんとちゃうか?」

「やっぱり分かるのね。休みの日なんか食べ始めたら止まらないの」

「何となく分かるばい。極度のストレスかもしれんなぁ」

 桐子は、中華スープをれんげでゆっくりと口に運んだ。

「最近、昔の嫌なことばかり思い出すのよ」

 修は渋い顔で冷酒を飲み干した。

「そやろな。辛い時代やったなぁ」

「あのときは、ずっと、ずっと思ってたわ。家族、少しでも血の繋がった家族が欲しいって」

「考えたら、小学生なのに天涯孤独やもんな」

 桐子は修の方に少しからだを寄せて、またわずかに目を潤ませた。

「でも・・・・・・、高校に入学が決まったころ、突然、お姉ちゃんが大阪の家を訪ねてきたの。私、もうびっくりしちゃった」

「えっ?桐子にお姉さんがおったとか」

 桐子はゆっくりと顎を引いて煙草に火をつけた。いまから話の本質に入るのだろうか、満を持すかのように目をつむると、深く煙を吸い込んだ。

「私に姉妹がいるなんて・・・・・・、そんな気振りさえ見せなかったのに、お祖母ちゃんも魔が差したのよね。東京にいる義母にお姉ちゃんの高校の入学祝を託したの。こっそり渡してってね。たまたま義母が留守で、その封書をお姉ちゃんが見たのよ。お姉ちゃん宛ての書留だったからすぐに開けてしまったらしいわ」

「どういうこっちゃ。桐子には、ほんまに実の姉がおったとか?それから義母?よう分からん。そら、どげな関係や・・・・・・」

 桐子は時間をかけて、姉との関係、そして義母との関係を詳細に語った。

 特に出生の秘密について話すと、修はしばらく口をつぐんだ。手を動かすことさえ憚られるのだろう。下を向いて必死に涙を堪えている。

「オサムちゃんが落ち込むことないよ。少し飲んだら」

その言葉を聞いた修は、照れ隠しなのか、慌ててグラスに酒を注ぐとまた一気に飲み干した。

「お祖母さんが娘に、お姉さんから見れば義母宛てに送った封書を、お姉さんがこっそり見たということやな。それで大阪の住所と、桐子の存在が分かったんか」

「そういうことなの。行動的なお姉ちゃんはすぐに天満橋の家を訪ねてきたわ。私、嬉しかったー。本当に嬉しかった。だって、天涯孤独だと思っていたからね」

「お姉ちゃんはその後どげんしたとか?」

「東京の複雑な家庭環境の中で、高校の三年間じっと耐えたわ。時々大阪に遊びにきてたから、大阪の大学を希望して受験したの。優秀なお姉ちゃんは合格、私は第一志望の専門学校に入学が決まり、これから姉妹で楽しい暮らしができると思ってた。辛かった子ども時代を取り戻せる、って二人とも有頂天だったわ」

「それから?」

 桐子が言っていた「空白の一年」とは、その後の何かで引き起こされたのだろう。子どもに関係した何かがあったはずだ。

桐子は、まだ吸いかけの煙草を灰皿でつぶした。

「慌てないで、もう全部話すから」

 修は正面を向いて居住まいを正した。

「・・・・・・実家のそばの道で交通事故に遭ったの」

「誰が?」

「私よ」

「なんともなかったとか?」

「腰を骨折したわ。だから、今でも腰骨には数本のボルトが埋め込まれているの」

「後遺症は?」

 しばらく桐子は天井に目をやった。こぼれ出る涙を堪えようと、強く唇を噛んでいる。

「子どもが産めないからだになったわ。それと・・・・・・、そのとき子どもを亡くしたの」

「死んだやてーッ。なんやそれはッ」

 修は血相を変えて立ち上がった。

 桐子の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。それを拭おうともしない。

「落ち着いてオサムちゃん。遠い昔の話だから」

 桐子は何度も修のシャツの袖を引いた。

 我に返り周りを見ると、もうほとんどの席が埋まっていた。

「子どもを亡くしたて、どげんしたとや」

 修はバツが悪そうに、声のトーンを落として訊いた。

「流産しちゃった・・・・・・」

 桐子はか細い声でつぶやくように言った。

「えぇー?」

 修は最悪の事態を予想していたとはいえ、その言葉を聞いて愕然とした。しかしすぐに自分を取り戻すと、桐子のフラッシュバックを気遣った。

「桐子・・・・・・、よう分かった。気分が優れんなら、もうこれ以上話さんでもよかぞ」

 桐子は涙を堪えて健気に微笑んでいる。

「私ねぇ、好きな人がいたのよ。高三のときだったわ。そう、オサムちゃんと同じ大学の人。たぶん歳も一緒かな。でも私たち若かったのよね、妊娠しちゃったー」

 目を潤ませた桐子は、努めて明るい表情を繕った。

「また『飛田の娘』と揶揄されないように、お姉ちゃん以外には誰にも話さなかったわ」

 修は黙って顎を引いた。

「当然、入学が決まっていた専門学校も断念したわ。母親になることに躊躇などなかった。だって家族のいない私だったから・・・・・・。彼も喜んでくれたわ。自分が就職したら結婚しよう、ってね」

 桐子の眸に、若いころの郷愁が浮かび上がった。

 修は唇を噛んだままじっと聞き入っている。

「お姉ちゃんも喜んでくれたわ。そして、そのまま荷物をまとめてお祖母ちゃんの家に越してきたのよ」

 桐子は少しだけ冷酒に口をつけた。

「お姉ちゃんは、二人の生い立ちを知るまでは、普通の家庭の子どもとして育ったわ。でも、中三のときに真実を知ってから、父の愛人の子として育ての親と寝起きを供にすることになったのよ。こんなことって、私だったら耐えられない。すぐにでも家を出たわ」

「そのとおりやな」修は唇が渇くのか、上唇を丹念に舐めた。

「それからはお姉ちゃんと一緒に、お祖母ちゃんの目を盗んで、育児の本を一生懸命読みあさったわ。出産のときの呼吸法とか、オムツの替え方、離乳食の作り方、いろいろ勉強したのよ」

 桐子は口をきつく結んで、涙がこぼれないように顔をわずかに上げた。

「一番楽しい時期だった・・・・・・。お姉ちゃんなんて、慣れない手つきで産着まで作ってくれちゃってね」

 桐子は目を細めて、下の瞼を指でなぞった。

「だから・・・・・・」

 修は口ごもった桐子を庇うように、手で肩を抱いた。

「大丈夫か?」

「大丈夫よー」

 桐子は気丈な顔をしている。

「・・・・・・私が流産したときなんて、それはもう私より大変だったわ。加害者の手がかりといえば、事故現場に落ちていたキーホルダーだけだったの。お姉ちゃんはそれを手に、私たちの夢が潰えたって、狂ったようにその男を捜し回ったんじゃないのかな。でもキーホルダーだけで犯人を捜すなんてどだい無理。雲をつかむような話よね」

 桐子はしきりに目をしばたかせている。

「桐子はどないしとったんや」

「私?私はねぇ」桐子の唇がへの字に曲がった。

「私も捜したわ。逃げたフィアンセをね・・・・・・」

「その男はどげんしたとやッ。行方を暗ましてしもたんか?」

「私が病院に運ばれて、気がついたときには消えていたの、彼・・・・・・。残っていたのは手の中のキーホルダーだけよ」

 修は拳を握りしめて声を荒げた。

「どこに行ったんやッ、その男は。なんちゅうやっちゃーッ」

「オサムちゃん、興奮しないで」

 桐子は優しい目で修を窘めた。

「そ、そやかて・・・・・・」

「私も一生懸命捜したわ。でも下宿はもぬけの殻だし、大学も辞めたのか通っていなかったわ。警察にも届けたんだけど、途中から潮が引くように警察は事件から手を引いてしまったの」

「その男は誰やッ。今どこにおるとや」

 桐子は首をゆっくりと左右に振って、男の名前を言おうとしなかった。

「そのうち、彼のことは諦めたわ。彼が子どもを殺したわけじゃないし、考えたら彼も子どを亡くした被害者なのよね。今はどうしているのかな・・・・・・」

 桐子は懐かしさと寂しさが混じった顔で、ただじっと天井を見つめた。

「逃げたんやな。何ちゅう酷い男やッ」

 修は怒りで顔を真っ赤にしている。

「ただ、事故現場に残された『キーホルダー』が、その後の私たちの人生を変えたわ」

「なんがあったとや」修は憂いを帯びた桐子の眸を覗き込んだ。

「お姉ちゃんの人生も、私の人生も、加害者が落とした『キーホルダー』で狂ってしまったの」

「どういうことや」

 修は上半身を起こすと、頼んでおいた口直しの水を飲み干した。

「彼は、そのキーホルダーを持っていた加害者のことを、『リョージ』と呼んでいたわ」

「じゃぁ、彼と加害者は知り合いやったちゅうことか」

「たぶん・・・・・・」桐子はゆっくりと顎を引いた。

 すると、またあのときの声が甦ってきた。「リョージー、リョージー、戻ってこいよッ」

 桐子は一瞬めまいを感じたが、口元を引き締めて正面を見据えた。

「知り合いじゃないのかな。同級生?親戚?兄弟?分からないけど。たぶん加害者に迷惑がかからないように彼は姿を暗ましたのよ。私とお腹にいる子どものことなんてどうでもよかった。そんな男だったんじゃないのかなぁ」

 桐子は修の手前、愛した男の行動を無理に蔑んだ。

「何やそれは。とんでもない男やぞッ。ふざくんなッー」

「オサムちゃん、もういいのよ。すべて終わったんだから」

 深いため息を吐いて、桐子はゆっくりと目を閉じた。すると、涙がひと滴、糸をひくように頬を滑り落ちた。

 それでも・・・・・・、よく夢に出てくる、流産したあとのことが。

腕を失くした人は、いつまで経っても腕があるような感覚が消えない、というが、今でもお腹の中に「まゆ」がいて、壁を蹴っているような感覚が消えない。吸わせることのなかったおっぱいが張ったように痛む。乳首が小さくて、おっぱいを吸ってくれるか不安だったのに・・・・・・。一度でいいから「まゆ」を抱きしめたかった。

子どもが産まれてきたときのために用意していた『産まれてくれてありがとう』という言葉が、頭の中で反響を繰り返している。桐子の口からは、吐いても吐いてもなくならないため息が、また漏れて出た。


「ルルルー、ルルルー」修の携帯が突然鳴った。

「桐子、すまん」修は上着のポケットから携帯を取り出した。

「今ごろ誰や」

 修は携帯の画面に表示された相手の名を見つけると、急に声を落とした。

「おー、珍しいな。今どこにおるとか」

「新宿?ライブのリハーサルが終わった?」

「ん、今ちょっとな・・・・・・」

「明日の早朝大阪に帰る?でもなぁ」

 よりによって、先ほどの話に出てきた桂月の息子、雄三からだった。修は桐子に背を向けて、雄三からの電話だということを隠そうとした。

「オサムちゃん。私なら大丈夫よ。また今度ゆっくり話すから」

 桐子は寂しげに微笑むと小声で言った。

修は桐子の話の核心をまだ聞いてはいなかった。しかし雄三とまた会えるかというと、それも覚束ない。雄三には訊かなければならないことがある。これがどうしても気にかかっていた。

 修は迷いに迷って、苦渋の決断をした。

「分かった。ほな二十分後やな」

 修は申しわけなさそうな顔をして携帯を切った。

「いいの、いいの。気にしないで。今日は疲れたからもう帰るわ。今度また話すよ」

「すまんな。なかなか会えん友だちなんや」

「ところで誰なの?電話の人」

 桐子は煙草に火をつけて、わずかに目を泳がせた。

今の電話を、おかしいと思い始めているようだ。しばらくは明かさない方がいい。芸名の『ユウヤ』を使えば桐子には分からないだろう。修はそう判断して、高を括った。

「昔からの友だちや。ほらっ、有名人やから桐子も知っとるやろ。あの『ユウヤ』ちゅうやつや」

 修の声は微妙に上擦っている。

「私も知ってるわ。大阪では結構名の知れた人よね」

 とたんに桐子の顔が明るく輝いた。

「へぇー、オサムちゃん。知り合いだったの」

「まぁな」修の顔が微妙に歪んだ。

「たまに会ってるの?」

 桐子は微笑みながらも、冷めた口調で訊いた。

「大学時代からの友人や、この前も雄三に会うてきた」

「あっ!」と思った瞬間、思わず口を滑らせていた。

「もう一度言ってッ、名前は?」

 桐子の笑みが一瞬にして消え失せた。

「・・・・・・」修は絶句した。

「もう一度言ってよッ。なに雄三っていうの?」

 桐子の顔から瞬く間に血の気が引いていった。

「・・・・・・」二人の間に冷めた空気が流れた。

「ヤマムラ、そうでしょう?」

 ユウヤの顔は何度か大阪のテレビで見たことがある。でも気づかなかった、あのユウヤが雄三だなんて・・・・・・。派手な衣装を着て、舞台用の化粧をしているからだろうか、テレビで見る雄三は昔の面影などまったくなかった。

「言ってよッ。どうなの?」

 沈黙がしばらく続いて、修の額には珠のような汗が浮かび上がった。

「・・・・・・そうや」ポツリと言った。

 修はガックリと肩を落として下を向いた。全身が強張って、あとの言葉が出てこない。

 桐子は、今からここに来る男が雄三と分かって、こころの中を猛烈な風が吹き荒ぶような感覚に襲われた。すぐにでも会いたい。でも、どんな顔をして会えばいいのか・・・・・・。雄三はどんな服を着て、どんな顔をしてあらわれるのか。そして今何を考えているのか。

 なぜッ、なぜあのとき姿を消したの?あのとき私のことをどう思っていたの?まゆちゃんのことは?そして、どうしてすべてを捨てたの?・・・・・・私を本当に愛していたの?

 すべて終わったこと、と言いながらも、雄三の思い出が一瞬にしてこころの中を埋めつくした。

 じっと唇を噛んでいた桐子は、掠れた声で言った。

「・・・・・・ごめんなさい。私帰る」

 そして振り向きもせずに、逃げるように店を出ていった。

 修は言葉を呑みこんだまま、歯をカタカタと鳴らした。


「柳田さん、やっと分かりましたよ。雄三の住所」

 柳田は相当疲れが溜まっているようだ。応接のソファーに深くからだを沈めていた。犯人の動機を推理していたのか、テーブルの上には書きなぐったメモ用紙が散乱している。

「おう、早かったな」

 柳田は背中を凭れかけたまま、ゆっくりと煙草に火をつけた。

「大阪北署のマル暴が、あの有名な『京阪プロダクション』から訊き出してくれました。現在、心斎橋にある『工藤音楽事務所』というところに所属していて、住まいは新大阪です」

「新大阪のどこだ?」

「新大阪駅の北側のマンションです」

「ふーん」柳田はしばらく目を閉じた。

今は雄三のことにまで気が回らないのだろう。仕方なく、稲垣も反対側のソファーに腰を下ろした。

 柳田の思考は二人の姉妹に飛んだままのようだ。雄三の住所にはさほど興味を示さない。

「分からない。成実の動機はもう少しで何とかなる。しかし、共謀したと思われる池川の動機が・・・・・・、何とも分からない」

 柳田は目を閉じたまま腕を組んだ。口の周りには無精髭が目立ち始めている。

「稲垣、福澤正一の携帯番号は?」

「はい、知っています」稲垣は両膝に手を置いて神妙な顔をしている。

「訊いてみてくれないか。三十年前の交通事故のとき、山村が失くした車の鍵のことを。でも・・・・・・、もう憶えていないかもな」

 柳田の声は力がなかった。

「分かりました。訊いてみます」

「それと、雄三の今後のスケジュールを細かく調べておいてくれ」

「はい」稲垣は慌てて応接室を出ていった。


「連絡がありましたよ。柳田さん」

 入れ替わりに、先週から捜査班に加わったチエが飛び込んできた。

「対馬中央署からです」

 柳田はソファーにからだを沈めたままだ。

「やはり二人は対馬にいたのか」

「えぇ、仲里が自殺する前日に泊まっていました。厳原港そばの『つしま屋』という旅館です。たぶん成実と池川だと思います」

「たぶん?」柳田が充血した目を開いた。

「二人連れの女性が泊まっていますが、偽名を使っていたようです」

「どんな名前で泊まっていたんだ」

 チエは一瞬言い淀んだ。

「・・・・・・カズコとキリコです」

「何だ、そのままじゃないか」

 柳田はまた目を閉じた。

「でも、対馬中央署から送られてきたこのファックスを見てください」

「どれどれ」柳田はゆっくりと背中を起こした。

 そこに書かれていたのは「長崎一子」と「福岡霧子」という名前だった。

 それを見た柳田は、すぐに立ち上がると大きな声を上げた。

「何だこれはッ。笑わせるんじゃないッ、あまりにもふざけてる!」

 コメカミには稲妻のような血管が浮かびあがっていた。

「柳田さん、怖~い」

「悪いな。今日は何だかイライラしてるよー」

 柳田はすまなそうに鼻を擦った。

「すまない、続けてくれ」

 チエは気を取り直して、再び説明を始めた。

「対馬中央署は端から自殺として処理したようです。殺人事件なんてめったに起こらない島ですし、飛び降りた屋上には、仲里の靴が揃えて置いてあったそうです。また体内からは睡眠薬も検出されています。よって、精神を病んで自殺したということで事件は解決をみています」

「靴と睡眠薬か・・・・・・。共犯ならどうにでもなるな」

 柳田は無精髭のはえた顎を何度も擦った。

「一連の犯行はすべて凶器が使われていない。物的証拠として凶器が発見されることはないわけだから、やつらは舐めてかかっているんだ」

 チエは眉間に皺を寄せて可愛い唇を尖らせた。

「チエちゃん、成実と池川、それと山村雄三に尾行をつけてくれ」

 チエは大きくうなずくと、いよいよだな、と奥歯をきつく噛みしめた。

「チエちゃん。悪いがもう一つだけ頼む」

「はい。何ですか?」

「以前沖縄で調査してくれたとき、雄三も『ユシナテラス』に泊まっていた、って言っていたよな」

 柳田はくわえていた煙草を灰皿でひねりつぶした。

「そうです。お話ししたとおりです。山村了司の宿泊を確認しているとき、ホテルのパソコンにたまたま山村雄三がヒットしたんです」

「事件に絡む人間が、その日、他に泊まっていなかったか至急調べてくれ」

 チエは、獣のように光る柳田の目を久しぶりに見た。

「は、はい。了解しました」


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