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くっついたま

午後の光は、やわらかく広がっていた。


時計屋の石段は、今日もあたたかい。


ガブはその上で丸くなっている。


いつもの場所。

いつもの昼寝。


そのすぐ隣に、ふわがいる。


昨日よりも、さらに近い場所。


ほとんど隙間はない。


ふわはまだ完全には丸くなっていない。


少しだけ体を起こしたまま、ガブの様子を見ている。


ガブは目を閉じている。


変わらない。


いつもと同じ。


通りでは、八百屋のおばさんが野菜を並べている。


「今日はいい天気だねえ」


魚屋の大将がうなずく。


「ああ」


商店街は静かだ。


風もほとんどない。


音もやわらかい。


ふわは、少しだけ体を動かす。


ほんの少し。


ガブの方へ。


毛が触れる。


ふわは止まる。


ガブは動かない。


逃げない。


嫌がらない。


それを確かめるように、ふわはもう少しだけ近づく。


今度は、はっきりと触れる。


体と体が、軽く当たる。


ふわは、そのまま動かない。


ガブも、そのまま。


時間が流れる。


ふわはゆっくりと体を丸める。


ガブに触れたまま。


背中を預けるように。


小さな体が、少し安心した形になる。


ガブの呼吸はゆっくりだ。


そのリズムが、ふわにも伝わる。


通りを歩いていた子どもたちが、足を止める。


「見て」


小さな声。


「くっついてる」


誰も大きな声を出さない。


ただ、静かに見る。


八百屋のおばさんも手を止める。


「ついにだねえ」


魚屋の大将もちらりと見る。


「そうだな」


それだけ。


午後の光が、少しずつ傾いていく。


石段の影が伸びる。


ふわは完全に目を閉じる。


もう周りを気にしていない。


ガブに触れたまま、眠りに入る。


ガブのしっぽが、ゆっくり一度だけ動く。


それから、また静かになる。


拒まない。


受け入れている。


それだけの合図。


風がほんの少しだけ通る。


二匹の毛が一緒に揺れる。


まるでひとつみたいに。


夕方になる。


光がやわらかく色を変える。


通りの人たちも、少しだけ足をゆるめる。


その石段の上には、二匹の猫がいる。


くっついたまま、動かない。


無理をしているわけではない。


ただ、そこがいい場所になっただけ。


夜が近づく。


街灯が点く。


それでも、二匹はそのまま。


少しだけ体を寄せたまま。


野良猫ガブは、今日も何もしない。


ただ、石段で眠っていただけだ。


その隣で、ふわがくっついて眠っている。


それだけで、商店街の空気は、少しだけあたたかくなる。


言葉はない。


でも、その距離が、すべてを教えている。


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