第十八話:忘却の庭へのダイブ、そして予期せぬ進化
「よし、行こう! 日和、常夜、お願いね」
ハルが鏡池の「星空」へ向かって飛び込むと、
そこには水の冷たさではなく、柔らかな光の粒子が満ちていました。
水中に潜ったはずが、そこは上下左右の感覚がない「純粋データの海」でした。
「うわっ、体が浮いて……泳げない!?」
カイトがパニックで手足をバタつかせる中、
ハルは冷静に双剣を構えました。
『主、僕たちを『櫂』にして。
この海の波長を整えれば、滑るように進めるよ』
『日和』のアドバイスに従い、
ハルが空間を優しく「撫でる」ように双剣を振るうと、
光の波が道を作り、一行を猛スピードで奥底へと運び始めました。
それはまるで、光のソリに乗っているような心地よさです。
「忘却の庭」の入り口が見えてきた瞬間、周囲の魔力密度が一気に跳ね上がりました。
その時、ハルがずっと着ていた、
あの『ぼっち初心者の初期装備(ボロ布の服)』が激しく発光し始めます。
「わっ、服が……解けていく?」
いえ、違いました。
あまりに純粋なハルのこだわりと、
庭の「原初データ」が共鳴し、
ボロ布が『境界の庭師の装束』へと再構築されたのです。
見た目は質素なままですが、布の一筋一筋が細かな回路のように光り、
周囲のバグを自然に浄化する「静寂」を纏い始めました。
いよいよ庭の門をくぐろうとした時、
情報の海から巨大な触手が伸びてきました。
現れたのは、全身が文字化けしたスクロールで覆われた、
山のようなサイズの『門番:ロスト・クラーケン』。
「ハル、あれはダメだ! 戦闘力計測不能、触れただけでデータが消去される……!」
カイトが叫びますが、ハルは触手の合間を縫うように近づき、
その巨大な吸盤をそっと撫でました。
「君……ずっとここで、一人でお掃除してたんだね。
吸盤に『古いゴミ』が詰まってて痛そう」
ハルは『常夜』の切っ先を使い、
クラーケンの吸盤にこびりついた「石化したエラーコード」を、
歯医者さんのように丁寧に、
かつ素早くパチンッ、パチンッ、と弾き飛ばしていきました。
「……キュピィィ!」
門番は攻撃を止め、気持ちよさそうに全身を震わせると、
ハルの周りをぐるぐると回って喜びを表現し始めました。
もはや戦う気ゼロ。
それどころか、ハルの頭の上に自分の子供(小さなイカ型バグ)をポスッと乗せて、
「通っていいよ」と道を開けてくれたのです。
【今回得たもの】
• 新装備:『境界の庭師の装束』(防御力より、掃除しやすさがUP)。
• 門番の友情: クラーケンの子供が一時的にパーティに加入。
• カイトの悟り: 「もう、驚くのはやめよう……」




