第十六話:究極の寄り道コース
ババの店を出て鏡池へと向かう道中。
ハルの耳元では、新しく喋り出した双剣たちが賑やかに囁いています。
『主、あそこの茂み……力尽きた『命の音』がする』
『常夜』の冷静な指摘にハルが駆け寄ると、
そこには空腹でHPがミリ残しのプレイヤーが倒れていました。
「大丈夫ですか? はい、これ、
さっきのオムレツの残り(包んでもらっていたもの)です。
美味しいですよ」
「あ、ありがとう……。君、神様……?
効率重視で食料を削ったら、道に迷って……」
プレイヤーが涙を流してオムレツを頬張る横で、
ハルは「良かったですね」とニコニコ。
ついでにシャリがリンゴの蜜をお裾分けして、
そのプレイヤーのスタミナを一気に全回復させてしまいました。
『主! 感謝されてる場合じゃない!
あの男が倒れてた下の地面……見て!
すごく良い『泥』と『小石』が混ざってる!』
今度は『日和』が興奮して叫びました。
「え、これ? ……わあ、本当だ。
粒子の細かさが絶妙だね。仕上げ用の天然砥石に近い……」
ハルは目的地を完全に忘れ、
その場でしゃがみ込んで泥遊び……もとい、石の選別を始めてしまいました。
『主、その石を僕の刀身に当てて。
……そう、そこ! あぁ、極楽だ……』
夜の森で、光る双剣を泥と石で一心不乱に磨くハル。
その姿は、通りかかったプレイヤーが見たら「新種の怪異」にしか見えません。
そこへ、聞き覚えのある情けない悲鳴が響き渡りました。
「うわぁぁぁん! なんでこんな所にレベル不相応な大型モンスターがいるんだよー!」
カイトです。
その後ろには、
バグの影響で巨大化した『暴走するマシュマロ・ゴーレム』が、
ベタベタした腕を振り回しながら迫っていました。
「あ、カイトさん。ちょうど良かったです。今、新しい砥石を試してて――」
「話してる場合か! 逃げろハル! そいつ、物理攻撃が効か――」
「カイトさん、危ないですよ」
ハルは腰を上げた瞬間に『日和』と『常夜』を抜き放ちました。
「日和、あそこだよね?」
『うん。右の肘のあたりに、磨き残しの『汚れ(核)』があるよ!』
ハルが軽くステップを踏み、ゴーレムの懐へ。
斬るのではなく、オイルを馴染ませた刀身で「シュッ」と汚れを払うように一撫で。
「キュゥーン!」
ナハトの影がその一撃を増幅させると、
巨大なゴーレムは一瞬で浄化され、
真っ白でふわふわな「ただのマシュマロ」の山になって崩れ落ちました。
「……えっ?」
腰を抜かしたカイトの前に、ハルがひょいとマシュマロを差し出します。
「これ、日和たちが『美味しいよ』って。一個食べます?」
【今回得たもの】
• 感謝状: 腹ペコプレイヤーから(後日、いい噂が広まる予感)。
• 天然の仕上げ石: ハルのバッグに大量に追加。
• マシュマロの山: しばらくおやつに困らない。




