第十三話 鉄火場と、黄金のオムレツ
「ガラムさん、ミナさん。お詫びと言ってはなんですけど、これからご飯行きませんか?
僕、ババさんの店に行く途中で、すごくいい匂いのする屋台を見つけたんです」
「あぁ? 俺は忙しいんだ、そんな暇は……」
「いいじゃない、お父さん! 私もお腹空いちゃった。ハルの奢りよね?」
ミナに背中を叩かれ、
ガラムは「チッ」と舌打ちしながらも、エプロンを脱いで重い腰を上げました。
たどり着いたのは、大通りから一本入った路地裏にある、こぢんまりとしたビストロ、『猫の髭亭』。
看板には、どことなくシャリに似た猫の絵が描かれています。
「いらっしゃい。……おや、珍客だね。頑固職人のガラムじゃないか」
店主のNPCがニヤリと笑います。
どうやらガラムとは旧知の仲のようです。
ハルたちはテラス席に陣取りました。
ナハトはハルの影に隠れ、
シャリは椅子の上で「シャリシャリ」と喉を鳴らしています。
運ばれてきたのは、この店の名物『雲海鳥の黄金オムレツ』。
フォークを入れた瞬間、中からトロリと溢れ出すソース。
その香りが、グラフィックを越えてハルの脳を刺激します。
「……これ、美味しい。データの味じゃないみたいだ」
「当たり前だ、小僧。
この店の主は、食材の『鮮度データ』が劣化する前に調理する、
これまた変態的なスキルを持ってるからな」
ガラムが豪快にビール(風の飲料)を煽りながら教えくれます。
ハルは、一口ずつ丁寧に味わいました。
バターのコク、卵の甘み、隠し味のハーブの爽やかさ。
「効率」だけを求めるプレイヤーなら、
一瞬で消費してバフ(ステータス上昇)を得るだけのアイテム。
でもハルにとっては、この一口が、この世界で生きている実感そのものでした。
「ナハトも食べる? はい、シャリも」
ハルがオムレツの端っこを影に差し出すと、
ナハトは嬉しそうに形を「フォーク」に変えて食べ、
シャリはリンゴの頭をプルプルさせながら完食しました。
それを見ていたガラムが、不器用そうに口を開きます。
「……小僧。その『日和』と『常夜』、
明日もう一度持ってこい。飯を奢ってもらった礼だ。
鞘だけは、俺が最高のものを作ってやる」
「えっ! 本当ですか!?」
「あぁ。だが、その変な鍵の件はカイトとかいう青二才に任せとけ。
……冒険に出るなら、しっかりした準備が必要だからな」
【システム通知】
ガラム・ミナとの「食事会」を完遂しました。
パーティ全員の「親密度」が大幅に上昇!
特殊バフ:『満腹の幸福感(24時間、全スキルの成功率微増)』が付与されました。
【ハルの心境】
• 美味しいご飯で、心もお腹も大満足。
• 頑固なガラムさんの優しさに触れて、ちょっと泣きそう。
• 「鞘」ができれば、いよいよ本格的なお散歩(冒険)に行ける!




