第十二話:雷鳴の如き怒号と、双剣の「名付け」
「おーい、ガラムさーん! 戻りました!」
ハルが呑気に鍛冶屋の扉を開けた瞬間、
凄まじい熱気と共に向こうから金槌が飛んできそうな勢いの怒鳴り声が響きました。
「この大馬鹿野郎がぁーーーっ!!」
ガラムは仁王立ちでハルを待ち構えていました。
その背後ではミナが「言わんこっちゃない……」という顔で頭を抱えています。
「街がバグだらけになったと思えば、
運営の連中まで降りてきやがって!
おまけにその腰の剣は何だ!
まだ銘も打ってねぇ『名無し』の状態で、
あんな得体の知れねぇリンゴの化け物と遊ばせやがって!」
「ごめんなさい、ガラムさん。
でも、この剣のおかげで街が綺麗になったんですよ」
「当たり前だ!
俺とお前が打ったんだ、そこらのなまくらと一緒にすんじゃねぇ!
……だがな、名前のねぇ武器は魂の抜けた器と同じだ。
さっさと名付けねぇと、
その剣、へそを曲げてただの鉄屑に戻っちまうぞ!」
ガラムの言葉に、ハルは腰の双剣を見つめました。
確かに、激しい「お掃除」を終えた剣は、
どこか少し寂しそうに鈍く光っているように見えました。
ハルは、ナハトと、その影で眠るシャリ、
そしてこれまで出会った人々を思い返しました。
「……決めました。
この剣、『日和』と『常夜』にします」
一本は、どんな曇り空も晴らして、
元の日常を取り戻すための光。
もう一本は、ナハトのように優しく全てを包み込む、影の安らぎ。
「『日和』と『常夜』か……。
ふん、お前らしい、戦う気のない名前だな」
ガラムは鼻を鳴らしましたが、その表情はどこか満足げでした。
彼が改めて剣の茎にタガネを当てると、
剣が嬉しそうにキィィィンと高い音を立てて共鳴しました。
【システム通知】
ユニーク装備:『日和&常夜』が登録されました。
属性:清掃・調律
効果:汚れ(デバフ・バグ)を拭き取るたびに、
武器の「輝き(切れ味)」が増す。
ガラムの説教がようやく(二時間ほどで)終わり、
ハルが店を出ようとした時、
足元のシャリが「シャリッ!」と短く鳴いて、
ハルのズボンの裾を引っ張りました。
シャリが口から吐き出したのは、
先ほどのバグ騒動で飲み込んでいたらしい、虹色に光る小さな『鍵』。
「これ……さっきの『ゴミ箱』の奥にあった、一番頑丈そうな鍵じゃないか?」
いつの間にか背後にいたカイトが、目を丸くして身を乗り出します。
「シャリ、これを持ってきちゃったの?
……しょうがないなぁ。これ、どこの扉の鍵なんだろう」
ハルが鍵を手に取ると、街の噴水広場の方角から、
見たこともないような「透明な糸」が一本、
空に向かって伸びていくのが見えました。
第12話 完
【ハルのやりたいことリスト・進捗】
• ガラムの説教に耐える: 完了!(MPが少し減った)
• 武器に名前をつける: 完了!『日和&常夜』
• 謎の鍵の使い道を探す: 追加!




