第九話:お土産は「世界のバグ」
「カイトさん、僕ちょっと街に戻ります!
この素材、どうしてもガラムさんに見せたくて」
「えっ、今!? せっかく誰も来ない秘密のエリアに入れたのに……」
呆れるカイトを尻目に、
ハルはナハトの影の中に、
磨き上げたばかりの**『七色に明滅する歯車』と、
『質感がリアルすぎて没になった黒鉄の塊』**を詰め込みました。
ナハトも「キュゥ!」と鼻息荒く、影を膨らませてハルの後を追います。
ルミナスの街に戻り、ハルは勢いよく鍛冶屋の扉を開けました。
「ガラムさーん! すごいもの、見つけました!」
奥で巨大な剣を叩いていたガラムが、不機嫌そうに顔を上げます。
「うるせぇぞ小僧。……あぁ? 頼んでいた素材はどうし……」
ガラムの言葉が止まりました。
ハルがカウンターの上にドサリと置いたのは、
ナハトの影から取り出した、物理法則を無視して空中に数ミリ浮いている黒鉄の塊。
ガラムは金槌を置き、震える手でその金属に触れました。
「……おい。これは何だ。
硬度が測定不能だぞ。
それどころか、叩こうとすると槌の方が避けていきやがる……」
「これ、『ゴミ箱』に落ちてたんです。
磨いたら、なんだか意思を持ち始めたみたいで」
「ゴミ箱だと!?
……小僧、お前、どこまで『境界』を越えてやがる」
ガラムは、職人としての恐怖と、
それ以上の狂喜が混ざったような顔をしました。
普通のプレイヤーが持ってくる「伝説の龍の鱗」や「オリハルコン」など足元にも及ばない、
システムそのものの構成材。
「……ミナ! 今すぐ店を閉めろ! 誰一人入れるな!
小僧、お前も手伝え。
この『理不尽な鉄』を、お前の精霊の力を使って強引に黙らせるぞ」
こうして、伝説の鍛冶師と、無自覚な双剣使いによる、
前代未聞の「お直し」が始まりました。
• ガラム: 槌で叩くのではなく、魂で金属の「形」を説得する。
• ハル: 砥石を使い、金属が嫌がる「ノイズ」だけを丁寧に削ぎ落としていく。
• ナハト: 影の触手で金属を固定し、精霊の魔力で熱を制御する。
数時間後。工房の中に、これまでのゲームの常識を塗り替える「音」が響きました。
それは剣が完成した音ではなく、世界がその武器の存在を「しぶしぶ認めた」音でした。
第9話 完
【今回得たもの】
• ガラムの信頼: 「小僧」から「共同作業者」へ格上げ。
• 謎の双剣(未完成): 名前はまだない。ただ、ハルが研ぐたびに形状が変化する。
• ミナの困惑: 「店を閉めるなんて、今日のご飯代どうするのよ!」




