アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 8話 朝
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
ひんやりした朝焼けが部室棟を照らす朝。あさぎは部室棟の廊下を歩いていた。
「ふあぁ……ねむ。」
朝はあさぎの弱点である。
「……朝ってお化け出るのかなぁ?」
この頃、あさぎは部室で何者かに襟足をテシテシされる感触を覚えていた。
「丑三つ時には遅いし、流石に誰もいないかぁ……。」
あさぎがスマホの時計を確認すると時刻は朝6時半。朝練の生徒もまだ来ていない時間である。
「っていうかほんとにお化けいたらどうしよ……カロリーバーで餌付けできるか?」
こんな早い時間にわざわざあさぎが部室棟まで足を運んだ目的は、自身の襟足をテシテシしてくる推定お化けに会ってみることであった。
「……ん?」
あさぎがあーかい部の部室前に来ると、部室の中から独り言のような声が聞こえてきた。
「……ッ!?」
あさぎは思わず口を手で覆い、息を殺した。
(『いる』〜〜〜っ!?)
あさぎはドアに耳をピッタリとつけると、中の声を伺った。
『……で、……が……よ♪』
(この声……、白ちゃん先生でもきはだでもひいろでもない……。どっかで聞いた声なんだけど……誰だっけ?)
あさぎは寝ぼけて回らない頭で記憶を辿った。
(……う、足きつ。体勢変えよ)
あさぎはドアに貼り付く体勢を変えようと重心を移動すると、ドアに肘がぶつかった。
『誰ッ!?』
(やば
あさぎが身を隠す間もなく、内側からドアが開けられると出てきたのは、ひいろを彷彿とさせるが落ち着いた赤みのある髪に、目尻の垂れた栗色の瞳をした大人の女性であった。
「あさぎちゃん?」
彼女こそがひいろにおばさんと慕われ、白ちゃんが畏怖する、池図女学院の権力者……
「教頭先生……?」
教頭先生である。
「……とりあえず入ってちょうだい。」
「は、はい……。」
教頭先生はあさぎを部室のパイプ椅子に座らせた。
「…………あの、
「どこから聞いてたの?」
教頭先生は目を合わせてくれなかった。
「中で誰か喋ってるな、とは。内容までは……。」
「……そう。よかった。」
「『良かった』?」
「いや、なんでもないわ。それよりあさぎちゃんはこんな時間に何を?」
「わ
「忘れものを取りに来るのは、いつもお昼休みだったわよね?」
「……。」
あさぎは咄嗟の嘘に先手を打たれ口ごもった。
「……『正直に』話してくれると嬉しいのだけど♪」
教頭先生はあさぎの両肩に手を置き、目線を合わせて優しい笑顔を向けてきたが、その栗色の瞳の奥には絶対に嘘はつかせないという圧力を孕んでいた。
「……………………会いに、来ました。」
「誰に?」
「その、幽霊……に。」
「そう。」
教頭先生はあさぎを解放すると、あさぎの隣にパイプ椅子を移動して腰を下ろした。
「……怒らないんですか?」
「あさぎちゃんはなんで『怒られる』って思ったのかしら。」
「だって……この部室は教頭先生が用意してくれたようなものだって。」
「用意したのは白久先生……あなたたちの『白ちゃん』よ?」
あさぎ達が普段使っているこの部室は、あーかい部の発足時に白久先生、改め白ちゃんが爆速で確保した元カーリング部室であった。
「それもこれも全部、教頭先生の手のひらの上だったとも聞いています。」
「やだ、筒抜けなのねぇ……。」
「そんな部室をお化け屋敷呼ばわりされたら……その、
「『怒られる』……かもしれないわね。」
「……はい。」
あさぎは肩をすくめて俯いた。
「……あさぎちゃんはもう会ったのかしら?」
教頭先生はあさぎの隣から優しい声色で問いかけてきたが、今度は声の奥底に、絶対に嘘はつかせないという圧力が籠っていた。
「……あったというか、テシテシされました。その……襟足を。」
「!?」
教頭先生が座っていたパイプ椅子を蹴散らしてあさぎの肩を鷲掴んだ。
「テシテシされたの!!??襟足を……ッ!?」
「ちょっ、教頭先生……!?」
「……あ、ごめんなさい。」
教頭先生は取り乱したことを詫びた。
「あの、襟足が何か……?」
「……、」
教頭先生は黙って何かもの凄い葛藤をした末、あさぎに向き直った。
「…………その子、私の親友なの。」
「親友……ですか。」
「私ね、ここの卒業生なのよ♪」
あさぎは、教頭先生の口から出た『親友』という言葉と、教頭先生のあからさまな空元気を見て全てを察した。
「……。」
「ごめんなさい!?そんな暗い顔しないでちょうだい?これでも私、嬉しいんだから♪」
「……。」
あさぎはかける言葉が見つからなかった。
「えいっ。」
テシっ……
「……?」
突然、教頭先生があさぎの襟足をテシテシした。
「えいえいっ♪」
テシテシっ
「あの……何を?」
「そっかぁ。あさぎちゃんも会ったんだ、『藍ちゃん』に♪」
あさぎが顔を上げると、教頭先生は童心に帰ったかのように無邪気な笑顔であさぎの襟足と戯れていた。
「教頭先せ
「そのまま……!」
「え……。」
あさぎは教頭先生に言われるまま、その場で静止すると、教頭先生はあさぎの両サイドの襟足を優しくつまんで揺れを止めた。
「あの、これ……なんですか?」
「昔ね?よくこうやって『藍ちゃん』の襟足と戯れていたの♪懐かしいなぁ……♪」
教頭先生はあさぎの左の襟足だけをテシテシしだした。
「へ、へえ〜……。」
「私に足りないのは『襟足』だったのね……。」
「襟足とは関係ないんじゃ
てしっ……
「「……!?」」
あさぎの右の襟足が『てしっ』と揺れた。
「うそ……。」
教頭先生は勝手に揺れたあさぎの右襟足を見て驚愕した。
「ああやっぱり……。」
あさぎは今までの感触が嘘ではなかったことを確信した。
「ねえあさぎちゃん?」
「な、なんですか?」
「頭そのままで。」
「は、はい……。」
あさぎは両襟足をされるがままにした。
「もしあさぎちゃんさえ良ければ、たまに朝の部室に来てくれないかしら?」
「……テシテシするんですか?」
「ええ♪」
「…………たまにですよ///」
てしっっ……、
あさぎの右襟足が今日一番の跳ねを見せた。
「はぁ。これじゃあ『除霊』なんてできないな……。」
教頭先生はあさぎのボヤきを聞き逃さなかった。
「除霊?」
「はい。昨日、白ちゃん先生が部室の幽霊の存在に勘づいて業務用の塩を買い込んでました……25キロほど。」
てしてしてしてしっっ……、
あさぎの右襟足が荒ぶった。
「あの……、『藍さん』……?に塩って効くんですか?」
「私が言うのもなんだけど、あさぎちゃんって適応早いのね……。」
「この部に来てから色々あったもので……。」
「そうだったわね♪」
「マッサージの修行とか言ってGの手掴みさせられたの忘れてませんよ……?」
「あらぁ、そんなこともあったかしらねぇ?」
教頭先生はまっすぐ伸ばした人差し指の先で顎を触り、すっとぼけた。
「あの、クソババアって呼んでいいですか?」
「だーめ♪」
てしてしてしてしっっ……、
「にしても元気ですね……『藍さん』。」
「時間帯かしらね?」
「丑三つ時には遅いですけど……。」
「丑三つ時に近いほどパワーアップするのかしら……?」
「あ〜、だから部活の時間はそんなにだったんですね。」
てしてしてしてしっっ……、
「ごめんごめん、それよりも『藍ちゃん』の除霊を阻止しないとだったわね♪」
教頭先生が『藍ちゃん』について語る口調に、あさぎは同級生と話しているかのような若さを覚えた。
「それで、塩だけど……『藍ちゃん』がこれだけ嫌がってるってことは……効くのかしらね。」
「塩といえば……昨日盛り塩して寝落ちしたらきはだと白ちゃん先生が塩水で部室掃除してましたけど。」
「それでこんなにピッカピカなのね。」
「もしかして今の状態って『藍さん』には居心地悪いんですかね?」
「どうかしら……?」
てしてしっ……、
「とりあえずもう少し遊んでいきましょっか♪」
「えぇぇ…….。」
それから小一時間ほど、あさぎの襟足は2人にテシテシされていた。




