閑話 ツンデレと委員長
彼らが去ったのを見届け赤みがかった茶髪の女の子がその小さい口を開く。
「にしても、彼がヒーローねぇ。聞いていた話とずいぶん違うじゃない。」
拍子抜けのように言う彼女に首を振ってこたえる。
「まぁ、なにせ小学生時代ですからね。風貌も変わりますよ。」
「ふふ、アオイが言うと説得力が増すわねぇ。」
茶髪の女性からいたずらな笑顔で言われ思わず苦笑いをする。
「エルちゃん・・・。」
彼女は続ける。
「でも、彼。私の身のこなしとかに気づいてるようでしたよ。」
エルと言われた女の子は目を見開いて感嘆する。
「へぇ。伊達に皇様の筆頭近衛騎士をやっているていうわけじゃないのね。」
彼女の言葉に思わず苦笑が漏れてしまう。
もちろん、彼自身が筆頭近衛騎士を名乗っているわけではない。
皇さんと彼女で創作した架空の称号だ。
それは皇さんのファンたちへのアピールでもある。
あのどこぞの馬の骨とも知らん男はちゃんと公認ですよ、といった具合の。
……まぁ彼からしたらいい迷惑かもしれないが。
横目に、彼女を見る。相変わらず、好きなものには盲信してしまう彼女がまぶしい。
中学時代離れて少し荒れていた私と再開しても彼女は眩い笑顔で、手を差し伸べてくれた。
この後別件である子に呼び出されている私はえるちゃんと一緒にその場所へと向かう。
会いに行くのは中学時代の同級生であるが相も変わらず慕ってくれている子だ。
うれしい気持ちもあるけど、苦い過去なだけに少しこそばゆい気持ちもある。
その点、小学校時代町を賑やかせるだけにぎやかして自分だけ颯爽と姿を消した彼がうらやましい。
面白半分でもあったが確かな羨望も含まれヒーローとまで呼ばれた彼が。
私は何を残せただろうか、ふと思う時がある。
とどろかせたのは勇名か悪名か。
そんな私の気持ちをくんだのか彼女ははにかみ答える。
「安心しなアオイ。あなたのおかげでこの町は守られもしたんだから。あいつがいない間はあなたがヒーローだったのよ。」
こういう風に悩んでいると彼女はいつもこう励ましてくれる。それが救いであった。
過去は消えない。
彼も……私も。
忘れるふりなんてできないんですよ、上杉さん。
全く、彼女がかわいそうである。
色々頑張っていたというのに彼は何も気づかないのだから。
変に奥手な部分があるから仕方ないといえば仕方ないのだが。
これからの部のことを考えると色々大変そうだと頭を抱える。
でも、退屈はしなくて済みそうだ。
そう思うと、自然と歩が弾んだ。