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閑話 春と夏

 少し、飲みすぎたみたいだ。

 

 ヒロ君には申し訳ないことをした。


「ふ、別に構わんよ。あいつがガキの頃アタシらだってさんざ迷惑かけられたんだから。」


 そういうのは少し顔が赤くなった千夏。


 いくら酒豪の彼女といえど、昼前から飲めば多少は酔いが回るらしい。

 ……それでも全然酔いを感じないのが恐ろしい。


「そうねー。千夏伝説ももとはと言えば、あの子の色々もあったからだしね。」

「全くだ!くそ!あいつのせいでアタシのお気にの衣装が何度ダメになったことか!」


 おっと、この話をするといつもこうだ。


 でも彼女が彼のことを嫌っているとかそういうのではない。


 彼が色々駆け回って危ないことに首を突っ込んでも、本当に危険が及ばないように陰から守ったり、不穏な気配を近づけないよう行動していったら、メラ高の千夏伝説ともいわれるほどに名を遺すようになってしまったのだ。


 かくいう私もそれに付き合っていた仲間の一人なのだが。


「そういえば千夏、アンタ最近リバイバルされてるあのキャラの衣装制作に携わってるんだっけ。」

「ん?おおそうだな。大人になったあの子たちがそのまま子供時代の衣装を着るというなんとも痛いシーンだが、それなりに需要があるみたいでな。」

「……楽しみね。」


 私は色々な思いを込めてそう言うが、彼女は何がだ、と悪態をついてグビと酒を飲む。

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