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第49話 モブ、時間を稼ぐ

「なんでって……こんなに楽しそうなことやってるんだもの。私も参加するしか無いでしょ?」


いや……何当たり前のことみたいに言ってるんですか?

俺の記憶が確かなら手錠&縄で拘束に加え目隠しまでしてたはずなんですけど?


「む……何よ、その顔」


「いや……その……マクスウェル様はいつから人間を止めたのかな、と……」


「私はいつでも普通の人間よ。私のどこを見てそんなことを言ってるわけ?」


そう言ってシャーロットは小さく首をかしげる。

確かに今のシャーロットの姿は普通の制服でいつも通り最強の悪役令嬢って感じがするが俺は見逃していなかった。

首元に光るチョーカーという言い訳が正直通らなさそうな首輪を未だに着けていることに。

そして若干興奮のせいか顔が赤らんでいることに。


「えっと……全部ですね。そもそもどうやってここまで?」


「ふふん、あの程度で私が動けなくなると思ってるの?」


そう言ってシャーロットは不敵に笑い手からパチパチと小さな雷を出す。

しかもこれは()()()()()()()()使()()()()()()


(そうか……めちゃくちゃシャーロットが強くて忘れてたけどシャーロットは霊剣を持つ前から魔法が使えたんだった──)


今まで全力の戦いのたびに操っていた黒雷はギルバートだけの力ではない。

そもそもシャーロット自身も霊剣に頼らずとも魔法を使える選ばれし人間であり、ギルバートとシャーロットの雷が融合することであの強力な黒雷を生み出している。

わざわざ霊剣化しなくとも自分の雷で縄やら手錠やらも自分の雷で焼き切ってしまったのだろう。


「っていうかリサ様はどうしたんですか?」


「リサ?着替えるついでに余った縄で拘束強めにしてきたから今頃部屋にいるんじゃないかしら?」


「血も涙もないな!?」


ついツッコミが口に出てしまった。

なんで自分の拘束を解いたらリサの拘束を解く、じゃなくてもっと拘束増やしたろ、なんて話になるんですか!?

やっぱりドS!?

ドSか!?


「まあそんなことは置いておいて」


「あ、はい……」


シャーロットの表情が真剣な顔つきに変わる。

そして自らがゲルナを蹴り飛ばしたことによってできたであろう壁の小さなクレーターを見つめた。

モクモクと粉塵が舞っていたがその中からゲルナが立ち上がる。


『フフフ……まさか本調子ではないとは言えこの私を蹴り飛ばす人間がいるなんて思いませんでしたよぉ……いやぁ、誤算ですなぁ』


ゲルナはニタニタと笑みを浮かべ余裕を見せる。

流石にシャーロットの蹴りだけじゃダメージにならないか。


『本当は相手なんて面倒ですししたくないんですがぁ……仕方ありませんねぇ。ワタクシの前に平伏してもらいましょう』


「まずはあいつを倒すわよ。リサの調きょ……訓練はそれからだわ」


「はい!……え?」


調教って言いかけるのも相変わらずだが訓練という言い方もどうなんだろうか。

つい反射的に頷いてしまったから俺もヤバいやつみたいじゃないか?


『さて、いきますよぉ!』


「集中。来なさい、ギルバート」


シャーロットの呼びかけに応え、ギルバートが霊剣化し美しくも禍々しい剣へと変わりシャーロットの手に収まる。

やはりこの二人はとても画になる。

シャーロットが変態すぎてギルバートが見限って契約破棄、みたいな展開にならなくて本当によかった。


「その汚らしい顔面を私に晒したこと、死を以て償いなさい」


『このワタクシのイケメン具合がわからぬとは人間は美的センスに欠けるようですねぇ!』


その瞬間、ゲルナの前に大きな魔法陣が現れる。

色合いとゲルナという前情報からおそらく使ってくるのは闇系統。

だったらここで俺達が取るべき行動は──


「マクスウェル様!退避を!あれに触れたら──」


「退避?なぜこの私があの不細工に背を向けないといけないのよ?王者たる最強(この私)が進むべきはただ一つ……前だけよ」


は!?

何いってんだよ!?

闇属性の魔法食らったら持続ダメージ貰うから!

そんなの俺達程度のステータスであんな奴のを食らったら一撃で終わりだから!


俺が驚愕に目を見開いていると、シャーロットはギルバートを地面に突き刺した。

目を閉じ、集中するシャーロットにゲルナの魔法が直撃するその刹那。

シャーロットはゆっくりとその目を開いた。


「消し飛びなさい」


その瞬間、ピシャリと黒雷が落ちる。

ゲルナの魔法は跡形もなく消え、その場には無傷のシャーロットが立っていた。


(は、はは……魔法で相殺だって……?やってることが無茶苦茶すぎるだろ)


『一歩も動かずワタクシの魔法を無傷とは目障りな小娘ですねぇ……やはり流石は……いえ、これはやめておきましょうか』


ゲルナが何やらブツブツと言っているが気にしている場合ではない。

俺はすぐさま駆け出し、ゲルナへと接近する。


「マクスウェル様!今回は俺が補佐に回ります!こいつを倒しましょう!」


今回ばかりはラナも何も言ってこない。

1人だと絶望的だったあの状況が変態猫が一匹乱入するだけでここまで状況が好転するとは思っていなかった。


「アンタの補佐、ね……悪くないわ。3分稼ぎなさい。後は私がやるわ」


「了解!」


俺は自分自身のリミッターを外す。

3分間耐えきれば後はシャーロットがなんとかしてくれる。

ご主人様としてペットを信じるのは当然のことであり全力を尽くすのもまた当然。

だったら後のことは考えず、この3分を耐えきるためだけにここで使い切るのだ。


(ラナ!3分だ!3分稼ぐぞ!)


『余裕!まっかせて!』


俺は懐に入り込み白兵戦に持ち込む。

しかしゲルナは最低限の動作で俺の剣を防ぎ、超近距離から遠慮なく大量の魔法を放ってくる。


(容赦ねぇ……!だけどそれでいい!俺が狙われればその分、シャーロットが狙われることはない!)


よく見て、魔法を躱しながら隙を見て攻撃し、どうしても避けきれない一撃はラナが氷の力で防ぐ。

俺はラナに防御を、シャーロットに敵を倒す攻撃を託し、戦い続けることだけを考える。


『ちょこまかと……!目障りですよぉ!』


「ぐっ……!?」


ゲルナの振り下ろされた拳が右肩に直撃する。

想定外の攻撃だったことと、見た目以上にゲルナの力が強いことも相まって俺の体勢が崩れる。


『マスター!持ち上げるから反応して!』


何を言ってるのかわからなかった。

しかし地面から氷が出て俺を押し込んだ瞬間、ラナの意図を理解し剣を左手に持ち替え、無理やり剣を振るう。


その剣はようやくゲルナに完璧な形で直撃した。

右手と比べたら威力は低いがここまで完璧に入ればゲルナと言えどノーダメージではいられない。


『くっ……!やってくれましたねぇ……!このワタクシに傷をつけたことをぉ!後悔して死になさい!』


「残念ながらその未来は訪れることはないわ」


後ろから聞こえてくるのはシャーロットの声。

俺達の勝利を告げる3分を知らせる一声だった。


「お前はここで私に殺されて終了。この私が直接引導を渡してやることに感謝して死になさい」


『何を身の程知らずのことを!』


「身の程知らずかは見ればわかるでしょう?」


その瞬間、シャーロットの膨大な魔力が漏れ出る。

その魔力だけで周りには威圧感を与えてしまうほど重厚な魔力。

たった3分間でここまで練れるのか……!


「さあ、終焉の時間よ。死になさい……『天ノ鳴神(あめのなるかみ)』」


そしてこれこそが。

人類が初めて神の境地に手が届きかけた瞬間だったのかもしれない。

シャーロット=マクスウェルという天才の力によって──

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