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第4話 モブ、計画を開始する

俺は早速計画を実行に移すことにした。

この計画はどれだけ時間をかけられるかと運が肝になってくる。

そしてその運を限りなく上に上げていくために準備が必要なのだ。


(まず必要なものは金だ……ある程度の金額でいいから集めなくちゃいけない……)


俺は街を巡りながら心の中で独りごちる。

常識通りにやっても上手くいくはずがない。

俺の記憶が間違っていても計画は破綻するがそもそも攻略サイトとか見るすべがないし自分の記憶を信じて足を動かすことしかできないのだ。

覚悟を決めてやるしかない。


(確かこの辺にあった気がするが……頼む!あってくれ!)


俺はとある民家の前に置いてあるツボを覗き込む。

俺の記憶が正しければ確かここに……!


「あ、あった!」


ツボの中にあったのは2305G(ゴルド)

この金額はそこそこ高く結構強めの装備とかも買えちゃうぐらいのお金。

ゲームでは主人公一行が訪れたときにツボの中を調べることでお金を手に入れられるが今はマジロマの世界の11年前だしそもそもそういったところまでゲームと同じかはわからない。

今もここにお金が入っているかは正直賭けだったが入っていてよかった。

交番とかもこの世界にはないので届ける必要もない。


「よし……これを取って……!」


だが子どもの俺にとってはツボの底に落ちているお金を拾うのが相当厳しい。

ツボの中に落ちてすっぽり入ってしまうというアクシデントがあったもののなんとか抜け出すことができた。

もちろん手にはしっかりとお金を握りしめている。


「はぁ……はぁ……ひどい目に遭ったよまったく……」


子どもの体というのは存外に不便なものである。

だが子供だからこそまだ未来に対処するための手を打てるのも事実だった。

ここがマジロマの世界でありハラルアだと気づくのにもう3年遅れていたらなんの手の打ちようも無かったかも知れない。

若いうちは無限の可能性と輝かしい未来があるっていうのもあながち間違いではないな。


(ほんと主人公様は良いよなぁ……本当はこの街でもっとお金やら装備やらを回収できるはずなのに全部民家の中とかなんだから……)


ゲームではごく自然にやっているが俺が今仮に同じことをすればいくら子どもとは言え犯罪行為である。

そうなれば俺の1人の人間としての信頼は地に堕ち両親を悲しませるだけでなく人生も終了である。

そして前科者はフリージア学園には入学できないので未来が見えているのにも関わらず街が魔物に襲撃されるのをただ見ていることしかできないという超バッドエンドである。


(本当ならなぜか宿屋のタンスに入ってる鉄製の盾と民家の棚にあるおそらくへそくりであろう1573Gも回収したかったのに……)


だがステータスを見れたりマジロマの原作通りにアイテムが用意されているというゲームらしい部分と犯罪をすれば捕まり死ねば文字通り死ぬという現実的な部分が混在することこそが俺がモブであり平民でありレベルシステムが存在しないという状況を打開する鍵になっていると思う。

それを考えれば鉄製の盾もお金も重要度は下がる。


(さて、次は店に向かうとしようか。お目当ての在庫があるといいが……)


俺は先程確保した生命線であるお金を絶対に落とさないように強く握りしめ、お目当ての品を買いに歩き出すのだった──


◇◆◇


街の立地はまさにゲームの通り。

それならなんで今まで気づかなかったんだって話だがまさか異世界に転生したらそこがゲームの世界だったなんてつゆにも思わなかったのだ。

あとゲームと違って街がめちゃくちゃ大きくなってるし。

ゲームの通りの人口だとしたら限界集落よりも過疎化が悲惨なことになってしまうしな。


マジロマにおけるハラルア、そして俺達が住むこの場所はこの世界のハラルアの東区角の一部に当たる。

他の区画がどうなってるかは知らないがゲーム知識が及ばない場所なのでもう少し大きくなって自衛の手段と心の余裕を持ってから行ってみようと思っている。

俺はそんなことを考えつつ目的の店を発見した。

早速俺は店主のおじさんに話しかける。


「こんにちは、おじさん」


「ん?なんだ、坊主。食いもんとかなら向こうの方で売ってるぞ。ここら辺は武器とか危ないものがたくさん置いてあるからあまり近づかないほうがいい」


坊主頭のおじさんはぶっきらぼうながらも優しい助言をくれる。

もし俺が本当に4歳でお使いでここに来ていたとなればその言葉は本当に助かったことだろう。

まあ今はこの店に買い物に来ているし精神的には社会人なのでお気持ちだけありがたく受け取るとしよう。


「ううん、僕はこのお店のものを買いに来たの」


「そうなのか?父ちゃんに何か頼まれたとか?」


「違うよ。僕が装備するやつ」


「あはは、坊主はまだ子供じゃねえか。買うのは無理かもしれねえが見せてやるくらいならできるぞ?」


まあ見た目も体も4歳だもんな。

多分ヒーローに憧れる幼稚園児みたいに戦うカッコいい冒険者に憧れる子供とでも思われているのだろう。

こんな反応されるのも無理ないか。

俺はお金を握りしめポケットに入れていた左手を取り出しおじさんに見せる。


「本当に僕の装備を買いに来たんだよ。ほら、これだけあれば足りるでしょ?」


「む……確かに……本当に買うのか?」


「うん。おじさんの店でほしいやつがあるんだ」


「まあ金があるならお客だし売ってやらんこともないが……危ないから街の外には出るなよ?それだけ約束できるか?」


「うん!約束できる!」


本当は約束を守るつもりなどサラサラ無く街の外に出るつもりしか無かったが嘘も方便である。

なんでもかんでもバカ正直に答えていたら人間やっていけない。

これくらいの嘘なら可愛いもんだ。

別に俺が死んだところでおじさんが罪に問われることはないしね。


「何がほしいんだ?やっぱりこういうやつか?」


そう言っておじさんは鉄製の鎧を持ってくる。

見た目は普通の鎧って感じで強そうだけど別に特筆するほど守備力が高いわけでもなければ追加効果もない。

そんなものを買ったところで結局僕の力では重すぎてまともに動けないのがオチだ。

おじさんは俺が勝手に街の外に出て無茶ができないようにという意味でもこれを勧めてきているのだろう。


「ううん。それじゃなくて僕は……あ!あれがほしいな!」


俺は店内を見渡して目当ての物を見つけると指を指しておじさんに教える。

そこにあったのはボロボロの布を無理やり縫い合わせて作ったような服。

明らかにこの店でも異質な存在感を放っており、すぐに見つけることができた。


「あ、あれがほしいのか?」


「うん!あれがほしい!」


「ほ、本当にいいのか?俺が仕入れた手前言うのもなんだがもう少し良いものを買ったほうがいいんじゃ……」


おじさんは渋々と言った様子で俺が指を指した服を持って来ながら言う。

その服は絵で見た通りのデザインで、実際に目の前にマジロマの装備があると思うとなんだかテンションが上がる。

それが例え……ゴミ装備と言われほとんどのプレイヤーが買わなかった不遇装備であったとしても。


「これ、ください!」


「はぁ……わかったよ。売ってやる」


おじさんはまだ少し俺を説得しようとしていたが俺の熱意に負けたのか苦笑する。

そして頷きながらポンポンと俺の頭に手を乗せてきたのだった──

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