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第33話 モブ、見抜かれる

「アンタ……あのピンク頭と何かあったでしょ?」


シャーロットからの鋭すぎる的確な質問。

今俺が一番突かれたくないポイントでもあった。

なんでこんなに聡いんだよ……


「マクスウェル様……もしやとは思いますがピンク頭ってジェシカのことですか?」


「そんな名前だったかしらね。興味が無くて覚えてないわ」


少し怒ったようなアリシアの声に対し、シャーロットはつまらなさそうな表情をして返す。

シャーロットからすれば平民なんて全員興味無いんだろうな。

俺なんて決闘で勝って辱めたり、色々とお話もしたりしてるのにいつも『アンタ』とか熟年夫婦みたいに一度も名前を呼んだ試しがない。


『普通に辱めたりしたからじゃないの?名前を呼びたくないくらい嫌われてるとか』


(バカ言え、俺が嫌われるわけないだろ。それにシャーロットは罵られて発情するド変態だからそれはマイナスポイントにならない)


『そんなことを力説されてもね……それに名前を呼ばれないって状況ですぐに熟年夫婦って例えが出てくるのもどうかと思う』


(長い歴史を共に歩み、全てを語らずともお互いを理解する。良いことじゃないか)


『マスターって意外と乙女なところあるんだね』


(お、乙女……だと……!?)


ラナから放たれる結構ショックな一撃。

男である以上乙女だね、という言葉は全く持って褒め言葉にならない。

しかもラナの声に含み笑いが混じっているような気がしてなおのことショックだ。


「マクスウェル様、彼女は私の家ハミルトン家が後見人を務めていますし私自身も彼女の友達です。あまり悪く言わないでください」


「そ。気を悪くしたなら申し訳ないわ。ね?アリシア」


「い、いえ……こちらこそご無礼を働いてしまいすみません……」


意外とこの二人も仲がいいのか?

でもゲームでもこの世界でも二人が仲良く話したり遊んだり……なんて見たこと無いからなぁ。

同じ派閥とは言えシャーロットが謝る姿なんてほとんど見ることないし。


「それで?実際はどうなわけ?」


逃げられてなかった!?

シャーロットの矛先がアリシアの方に向いたから大丈夫だと思ったのに!?

しかもシャーロットだけじゃなくてアリシアとリサ、そして背中からハンクの問い詰めるような少し興味が混じったような視線を感じる。

まさに四面楚歌。

俺を助けようなんて人物はこの場にはいない。

俺は諦めて一つため息を着くと小さく両手を上げるのだった。


「はぁ……まさかマクスウェル様に一瞬で見抜かれるなんて思ってませんでしたよ」


「……!それじゃあエドワードさんは本当にジェシカと何かあったんですか!?」


アリシアはシャーロットの話が疑い半分って感じで俺を見てきていたから俺が実際にジェシカと話したと知ると驚いたような様子を見せる。

まあいやらしいことどころか嫌なことだらけだったけどな。


「そんなに大したことはありませんよ」


「命令よ。話しなさい」


俺が話をふらつかせて話題をそらすのは絶対に許さないと言わんばかりにシャーロットが一瞬で俺の退路を塞いでくる。

この人はなんでこんな優秀なんだよ……って優秀だからこそ仲間に引き込みたかったんだけどな。

最近ちょっとヤバい姿しか見ていなかったからこの人の有能さを忘れていた。


「別に……ただジェシカさんにデートに誘われただけですよ」


「デート!?あ、あ、あの子が……!?」


俺のデートという単語にアリシアが顔を赤くして驚く。

思ったよりもウブなんだな。

貴族令嬢ってみんなこんな箱入り娘でウブなのかな、とも一瞬思ったけどシャーロットは全く動揺どころか顔色一つ動かさなかった。

多分これはアリシアの性格的な問題だろう。


「ええ、まあ模擬戦闘とかいう色気のかけらもないものですけどね」


「なんだ……模擬戦闘でしたか……」


俺が付け加えるとアリシアはそっと胸を撫で下ろす。

そんなにジェシカを男に盗られたくなかったんだろうか。


鈍感主人公ならおい!ってツッコミたくなるところだけど残念ながら俺とアリシアの場合はまじで本当に何にも惚れる要素がなかった。

顔を隠して人助けとかも、実は幼い頃に出会ってたとかも絶対にありえない。

幼少期の俺は種を求めて魔物とずっと窃盗イチャイチャしてたし。

恋は理屈じゃないって言うし一目惚れの線も無くはないのかもしれないが攻略対象という顔良し・性格悪し(一目惚れ特化型)の男がたくさんいるんだからそれが俺であることはまずないだろうな。


「っていうかなんでいきなり模擬戦闘なんですか?別にジェシカとエドワードさんはそこまで仲が良いというわけでもないですよね?」


「まあそうですね。ですが向こうが誘ってきたので意図は俺にもわかりません」


実際には俺の心を折るためって本人が言ってたので知ってるのだが多分俺がそんな暴露をしようと信頼度の差で信じてもらえず俺が嘘つきのレッテルをお貴族様たちに貼られて終了だ。


「ふーん、模擬戦闘ねぇ……」


「マクスウェル様?」


シャーロットは何かを考えながら呟く。

俺は思わず質問してしまうがシャーロットはまだどこか上の空だ。


「一応可能性は無くはないかもしれないわね」


「……?」


「こっちの話よ。とにかく当日は私もアリシアも見に行くわ」


「えっ?私もですか?」


「当たり前じゃない。どっちにしたってあのピン……平民が戦うならアンタだって見に行くでしょ?」


「まあそれはそうですが……」


今完全にピンク頭って言おうとして言い直したな。

なんか相変わらずって感じがする。


「そういうわけよ。アンタは一応この私に勝ったんだからあの平民に負けたら消すわよ」


その言葉はとてもじゃないが冗談には聞こえず俺は思わず背筋に冷たいものが流れるのだった──

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