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第20話 モブ、絡まれる

シャーロットとの楽しい楽しいコスプレごっこの翌日。

俺は学園に向かうべく、ハンクと一緒に寮からの道を歩いていた。

別に昨日の猫耳シャーロットを他の人に言いふらしたいわけでもないのでハンクには俺が昨日シャーロットに何をしたのか伝えてない。


「な、なぁ……本当にお前マクスウェル家のご令嬢を怒らせることしてないだろうな……?俺が巻き込まれるのも嫌だけどお前が処されるのも絶対に嫌だぞ……」


「はは、大丈夫大丈夫。死んだら俺はそこまでの人間だったってことだ」


「ってことは何か怒らせるようなことしたのか!?おい!答えろよ!?」


流石にあのシャーロットの状況を言っても信じてもらえないだろうけど言いふらしたらマクスウェル家に消されるかも。

まあ俺だけの秘密ということで。


『私は全部知ってるんだけど?マスター』


(楽しかったか?)


『楽しいわけないでしょ!自分の契約者が可愛い女の子にアブノーマルな趣味を押し付けてニヤニヤしてる姿を私はどんな顔をしながら見るのが正解なわけ!?』


(俺は断じて楽しんでない。恥ずかしがってるのが可愛いくてもっとやりたいな、くらいにしか思ってないぞ)


『それは十分アウトなセリフだよ!?』


アウトじゃないだろ。

猫がいたら可愛がるのが人間として当然のことだ。

犬は懐いてくれるのが可愛いけど猫は気まぐれでたまに甘えてくるのがいい。

命令でニャンニャン言わせたのを甘えと言っていいかは審議かもしれないが。


「取り敢えず大丈夫だ。少なくともお前には飛び火しないさ」


「だからお前がいなくなったら俺が嫌だって言ってんだろうが……」


「告白?だとしたら本当に申し訳ないけど俺は女の子のほうが好きだからお断りを……」


「違えって!俺だって野郎より可愛い女の子のほうが好きだわ!友情だっての!」


「冗談だ。ありがとう」


ハンクは多少バカなところもあるが良い奴だ。

生まれも良いのになんか庶民っぽさも感じるし俺にも理解を示してくれる。

本当に俺の友達に勿体ないくらい良い奴だよ。


「それで今日の薬学の宿題はちゃんとやってきたのか?俺がいない間一人でやってたんだろ?」


「うっ……嫌なこと思い出させないでくれよ……昨日図書館で薬学系の本を何冊読んだことか……もうしばらくは文字も読みたくないくらいだ」


「残念ながら1限目から語学だけどな」


ハンクは薬学が大の苦手。

まあ前世で言う理系科目みたいなことばっかりしてるしこの世界に文理選択なんてものはないから文系脳の人には難しいのかもしれない。

俺は賢さを種で上げてるから割となんでもできるんだけどな。


「あれ?もしかしてエドワードさん?」


俺がハンクとワチャワチャしながら歩いていると突然後ろから声をかけられる。

後ろを振り返るとバッグを持ったアリシアとジェシカが立っていた。


(は、はぁ……!?なんで貴族棟で過ごしてるはずの二人がここにいるんだよ……!?こんなところアレック王子たちに見られたら俺が殺されるんだが!?)


アレック王子や攻略対象たちにジェシカや攻略対象の目の前に二度と姿を表すなと言われているが当然アリシアたちにそんなことは言ってない。

もちろんアレック王子との約束を守るつもりはサラサラ無いが破るときは今ではない。


だがかといってアリシアも伯爵という高位貴族。

俺が近づかないでください、と言ったり逃げたりなんてことは絶対にできない。

ここはいかに穏便に話を終えるかが大切になってくる。


「これはハミルトン様にジェシカさん。おはようございます。このようなところでいかがしたのですか?」


「おはようございます、エドワードさん。所要がありまして少し遠回りしてたんです」


「あ、あはは、そうでしたか」


「はい。あ、それと昨日の決闘も拝見させていただきました。あのマクスウェル様に戦勝を収めるだなんてエドワードさんはとてもお強いんですね」


「あ、あはは……それほどでも……」


普段なら素直に喜べる賛辞だが今は全然喜べない。

俺は内心冷や汗を流しながら笑顔を浮かべる。


「あはは、本当にエドワードくん強かったよねぇ」


そう言ってジェシカが笑顔を浮かべる。

そしてゆっくりと歩いて俺に近づいてきた。

ジェシカは人好きのする笑顔を浮かべて口元を俺の耳元に近づける。


(ふふ、強ーいエドワードくんでもこんなところを見られちゃったらおしまいかもね)


その瞬間、嫌な予感がして後ろにバッと飛び退く。

ジェシカは貴族推薦を受けた平民なので無礼として切り捨てられることはない。

そしてそれ以上にまずい事態になっていることに気づいた。


「おい、そこの愚民。何をしている」


一度は絶望させられた声。

ゲームでも数え切れないくらい聞いた声。

そんな声を俺が聞き間違えるはずがなかった。


「あ、アレック王子!おはようございます!」


ジェシカが満面の笑みを浮かべて挨拶した先には冷ややかな表情を浮かべたアレック王子。

その鋭く厳しい視線は全て俺に向けられている。


「あ、はは……おはようございます、アレック王子殿下。本日は天気も良く大変ご機嫌麗しゅう……」


「ご機嫌麗しいと思っているのか?」


思っていませんとも!

全然俺もご機嫌麗しくないしお前の顔なんて見たくなかったよ!


だけどこの状況はかなりまずい。

このタイミングで登場するということはジェシカが俺に近づいてきたのを観ていた可能性が高い。

俺が歯噛みしながらチラリとジェシカのほうに視線を向けるとジェシカは俺を嘲笑うように見ていた。


(なるほど……わざとってことか……ゲームの本性からそうだったのかこの世界ではそうなのかは知らんけど腐ってやがるな……)


俺は世直しリストの対象に攻略対象だけでなく主人公ジェシカもこっそり加えておく。

こいつも腐敗してしまってるなんて、相変わらず胸糞悪い世界だ。


だがジェシカがやばい、ということがわかったのはいいが今の現状は全くよくなってない。

どんな弁明を並べようが今の王子に届くわけないし、ジェシカが率先して潰しに来るに決まってる。

今学園から追い出されたり殺されたりしたら俺はただ種を集めまくって、美少女に猫耳付けさせてニャンニャン言わせただけの変態男で終わってしまう。

考えろ……!この状況を打開するためには……


「あら、皆様お揃いなのですね、ご機嫌よう」


「……!シャーロット……お前がなぜこんなところにいる……!」


そこに現れたの人物を見て、アレック王子の顔が歪む。

現れたのは意外にも俺が昨日猫耳を付けたその人であった。


「あら、私がここにいておかしな点でもあるのですか?醜い平民にご執心の王子さま?」


「平民は醜くなどない!彼らも一人の人間であり尊重されるべき1個人だ!お前に何度言えばそれがわかる!」


これはゲームでもあったセリフ。

だが王子の本性を知った後でこのセリフを聞かされても全く響かない。

つい先日、国民(雑草)がいくら死のうが自分には関係ないと言っていた人物と同一人物とは思えない言葉。

だがそれが何もおかしなことでもないかのように攻略対象たちもそれに加わる。


「そうだよ?マクスウェル嬢と言えど宰相の息子としてその発言はできないな」


「本当に学年首席か?学習能力が見えないぞ」


「黙りなさい」


しかしそんな彼らの言葉をシャーロットはたった一言でぶった切る。

攻略対象たちはまだ何か言いたそうにしていたがシャーロットの有無を言わせない雰囲気がそれを止めていた。


「私は公爵令嬢で貴方たちは最高でも侯爵令息。口の利き方には気をつけないと消すわよ?」


王子以外の攻略対象たちに釘を刺す。

なんか彼女はいつ見ても、誰といても変わらないな〜と一種の感動を覚えてしまう。

マジロマのキャラで一番の推しになったかもしれん。


「シャーロット、答えろ。お前がなぜここにいる」


「ただそこの平民に少々用があっただけです。何か問題が?」


「……わかった。ここは俺が退くとしよう」


王子はそう言って背を翻す。

攻略対象たちも舌打ちを残しながら去っていき王子を追うジェシカをアリシアは慌てて追いかけ去っていった。

婚約者同士とは思えない冷え切った会話。

だがこれはゲームでも現実でも変わらなかった。


嵐のような時間が終わりこの場には俺、ハンク、シャーロット、シャーロットの従者だけが残る。


「それで平民」


シャーロットは去っていく王子たちを見送ると俺のほうに声をかける。

というかシャーロットもどうしてここにいるんだ?


「なんですか?」


「少し話があるわ。放課後時間を開けておきなさい」


男なら一度なら憧れる美少女からの放課後デートのお誘い……なわけがない!

え?なんで!?

俺もしかして昨日やりすぎた!?

体裁とかなんにも気にせず殺しに来られたら終わるんだけど!?


しかしこの時の俺はまだ気づいていなかった。

シャーロットの首に昨日までは無かったおしゃれなチョーカーがついていることに……

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