第七話
森を出てしばらくココア砂漠を歩き、座れそうな出張った石を見つけ、休憩がてらに座ると小鬼達の森が思ったより小さく見えた。水を一口飲み、食事をするにはまだ早すぎるため小鬼達がくれた木苺やブラックベリーをつまんだ。ふとこの砂漠を歩いてずっと思っていた好奇心が顔を出した。
ココア砂漠という名前、茶色の砂、ココアの粉のように甘いものをずっと想像していた。はしたないと思いながら好奇心に勝てず人差し指を砂に付けてペロリと舐めると
「苦っ!?」
ココアはココアでも飲む方のココアではなくココアパウダーだった。甘いものを想像して舐めたため想像以上に理解するのに時間がかかった。一口水を飲み木苺の酸味でリセットする。ココアパウダーにはない甘い香りがするから油断していた。
この甘い香りがココアじゃないならどこから香るのだと思い、辺りを見渡すと黒い植物らしきものが所々に生えていた。
そういえばココア砂漠の入口辺りから生えていた気がしなくもない。近づいてみるとバニラビーンズだった。本来バニラの木は水苔で育つものであり砂漠ですくすく育つわけでもなければここにはバニラの木というよりバニラビーンズが野菜のように生えていた。バニラビーンズ自体もバニラの種子鞘を発酵と乾燥を繰り返して出来るものであり、こんな成長方法は絶対しない。が、この世界に来てから生態系がおかしいのは慣れてしまったため、さながら不思議の国のアリス状態でこんなもんか、とバニラビーンズを眺めた。
休憩をしている間に少しだけ風が出てきたと思い、早めに休憩を切り上げヴァレンタイン王国へと歩き始めた。念の為フードを被り目元以外を隠して歩くとものの数分後には強い風に吹かれ、目と鼻の先であるヴァレンタイン王国まで走った。
城壁を見上げると首が痛くなるほどでかい。
ここも同じく検問所らしき所がありそこを尋ねるとゲームやアニメで見るいかにもな鎧を纏った男がそこにいた。
「旅の人間か。通行証を。」
最初の検問所で貰った紫色のチケットのようなものを見せるとその人は目を細めた。
「あちらの世界の人間か。」
「分かるんですか?」
「この通行証はあちらの世界の人間用だからな。
何用があってここへ?」
「アメジストの魔女を探していて、ここに行くと何かだろうと分かると言われ来ました。」
「女王様に謁見予定ということか。」
まあ平たく言えば。と言うとその鎧の男は奥へ行きどこかに電話している様子だった。
数分話して戻り
「あまり長居はするなよ。女王様はすぐ職務を怠るからな。特にお前のようなあちらの世界から来たとなるといつもの何億倍か投げ出すのが目に見えている。」
と釘を刺され、気をつけまーすと言うと門を開いてくれた。なんだが学校の厳しい先生みたいだ。
やっとここまで来たと門をくぐるととても甘い香りに包まれた。