日ノ本の吸血鬼 クロウ
「─アンタさっき故郷って言ってたよな、聞き馴染みのない単語にその喋り口調…どこから来たんだ?」
リリィの父親はそのヴァンパイアの男に問いかける。
「俺ァ日ノ本の国から来た。"日の本"から来た男が吸血鬼…そっち風に言えばヴァンパイアか、皮肉めいたモンがあるよな、ククク」
吸血鬼の男は自嘲気味に笑った。
「ヒノモトか…なにはともあれ、娘を助けてもらったんだ、恩人の名前だけでも覚えておかなきゃ罰が当たる、是非教えてくれ。」
「俺の名前はとら…」
言いかけた言葉を飲み込み、男は名乗りなおす。
「いや、クロウだ。ヒノモトの言葉は伝わりにくいみたいだからな、異国人のアンタらにも言いやすいクロウでいいよ。」
「いや異国人って…こっちからしたらアンタが異国人なんだが…まぁ、娘を助けてくれてありがとう、クロウ。」
「礼なんていらねーよ、礼よりもこっから出る方法が欲しいぜ…オッサンが何して捕まったか知らねーがこっちはほぼ無実なんだぜ?」
ハハハとリリィの父親が小さく笑う
「礼はいらないからここから出る方法が欲しいと言っていたな…」
そう言いながら懐から牢の鍵を取り出した。
「なっ…!オッサン、アンタ…!」
クロウは驚き目を開く。
「あの兵隊ども、やたらと慌ててたからな。抜き取るなんて簡単なことだよ。」
「…手癖が悪ィのは父親譲りだったみてーだな。」
呆れながらクロウは言った。