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ねずみ小僧

「や、あの、マジで知らなかったんスよ〜!あの女、盗人だったんスね〜!それで貴方達はその盗人を捕まえようとしていたこの国の兵隊さんだったと!も〜言ってくださいよォ〜!人が悪いなぁーッ!」

わざとらしくヘコヘコしながら拘束された男は話す。


兵士の一人が、鎖で繋がれた言い訳を続ける男を引っ張り、(ろう)に入れ言い放つ。

「黙れ。処刑は明日だ。大人しくしていろ。」

「処刑!?ふざけんな!ちょっとカッコつけただけだろうが!なんで処刑までされなきゃならねーんだよ!!」

返事をすることなく兵士達は目配せをしながら急いだ様子で牢獄を去る。

「あっウソウソ!だから戻ってきて〜!お願いします〜!!」

訴えも虚しく、ポツリと男は取り残された。


しばらくして、突然向かいの牢から声がした。

「…アンタ、何してココに入れられたんだ?」

声をかけられ少し驚いたが、どうしようもないのでとりあえず話すことにした。

「何もしてねーよ…というか、何もさせてもらえなかったんだよ。」

「さっき盗人の女とか聞こえたが…?」

妙に食いついてくるな、と思ったが正直に答えた。

「ああ、何かを大事そうに抱えながら逃げてるようだったんで何事かと思ってな、少し()けたらさっきの奴らに襲われていて、助けようとしてこのザマさ」

「その女はリリィと呼ばれてなかったか?その後どうなった?」

「ん?ああ、確かそんな名前だったな…そのまま俺の獲物(ぶき)も盗ってどっかに行っちまったよ…」


素直に話したが、やたらと聞いてくるのでやっぱり気になり聞き返すことにした。

「なぁオッサン、そのリリィっつー盗人についてなんか知ってんのか?」

少しの沈黙の後、向かいの牢の男は話し始めた。

「少し長くなるが…よその国から来たらしいアンタには一から全部話そう…」

この国の王族達は主に魔法を駆使し、隣国との戦争を続けようとしていること。

ここ数年は休戦状態にあるものの、その休戦中は国民の中から魔法の才ある者を強制的に呼び出し、無理矢理戦わせていること。

国のやり方に疑問を持った国民が革命軍として立ち上がり、王族側と革命軍側で内戦が起こっていること。

リリィは革命軍の一員として王族に与する組織から金銭を奪い、貧しく家族を奪われた国民に還元していること。

リリィが革命軍に協力しているのは自分の母親が魔法の才を見出され戦争に駆り出されたからであること。

─そしてそのリリィが自分の娘であることを。


すべてを聞いた男が呆れたように口を開く。

「おいおい…あの小娘の父親かよオッサン…どんな教育してんだ。」

「あの子には何もしてあげられなかった…親としてできた事は…おとぎ話を読み聞かせてあげることぐらいしかできなかった…」

「おとぎ話ねぇ…それを聞かされて育った娘が今や立派な盗人ってか?ねずみ小僧でも読み聞かせてたのかよ。」


リリィの父親である向かいの牢の男は首を傾げる。

「ネズミコゾウ?」

聞き返されなんと説明すればいいかすこし頭を悩ませながら、適当に答える。

「あ〜…俺の故郷で有名な義賊の話さ。」

「故郷か…アンタ見た感じ魔族だろ?それも…ヴァンパイアだ…」

「お、よくわかったなオッサン。」

「その肌を隠すように着込んでいる衣服でもしかしたらと思ってな。」

「ま、みなさまご存知の通りヴァンパイアってのはお天道様が苦手でね、死にゃあしねーができるだけ浴びたくないのさ」


またリリィの父親は首を傾げる

「…オテントサマ?」

「…太陽のことだ」

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