小判
宇宙の中に、青と緑の星を目指して航行する一機の宇宙船があった。
「遂に辿り着いた」
「はい。長い道のりでした。様々なトラブルもありましたが、遂に辿り着きましたね」
「あそこに見えるのが目指す星、ワガダだ。ワガダには、多くの資源が眠っている。ワガダを我が星の植民地にすることができれば、我が星の産業や娯楽はより潤うことだろう」
「しかし、この場所は遠すぎるのでは…ここまで来るのに100年はかかっています。いくら私達の寿命が他星の住民より長いとはいえ…」
下っ端の船員が問うた。
「心配はない。我が星のワープ装置を使えば、あっという間だ。私達は、星の偵察の他に、そのワープ装置のゴールの設置も兼ねているのだ。さぁ、もうすぐ着陸だ。各自、着陸準備に付け!」
かくして、宇宙船は人気のない森の中に着陸した。そして、偵察部隊が船外へと偵察を始めた。
偵察部隊の報告は、以下のようだった。住民は警戒心が強く、怒る時は毛を逆立てること。しかし、気性は穏やかであり、支配もしやすいだろうとのこと。
「…では、早速始めるか。しかし、ここで焦ってはいけない。まずは、ここの住民と友好的にならなければならない。そのためには、住民の好物で釣るのが一番だ。おい、報告書にはなんと」
「はい。ここの住民は『金』、金銭がなにより好きなようです。ここに、この星の貨幣のレプリカがあります。精巧に作られておりますので、バレる心配は無いと思われます」
「よし。各自、貨幣をダシに友好を深めよ」
かくして、船員たちは行動を始めた。万事うまくいく、かに思われた。1人の隊員の報告を聞くまでは。
「せ、船長!大変です!」
「どうした」
「住民が貨幣に興味を示しません」
「なに⁉︎報告書と異なるでは無いか!」
すると、報告書を読んでいた船員の1人が声を上げた。
「船長!どうやら、今のこの星の住民は、この報告書に書かれている住民では無いようです」
「なんだと⁉︎」
「この報告書は、私たちが旅立つ前に作られたもの。報告書にあったのは、この星の言葉でニンゲンと呼ばれていた種族でした。報告書が作られてから、ここに到着するまでの間に、なんらかの原因で現在のネコと呼ばれる種族へと支配者が変わったのでしょう」
―「猫に小判」猫に小判の価値は分からないため、猫に小判を与えてもなんの意味もなさない―