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荒治療
ぼったくり店から解放された。いや、むしり取られた挙句に捨てられたという方が正しい表現か。
濡れた衣服。冷たい風が吹く。寒い。体も、懐も。
11万。あのデブのどこにその価値があったのか。いや、そんなはずがない。
トラウマ。夜の街で刻まれた。
切ったのは親のカードだ。自宅警備員の俺にクレカなんて作れるはずがない。店の名前が明細に載る。どうする。教育費とでも答えておくか?
確かに、高くついた授業料ではあったが……。
疼く胸。ざわつく心。これから、どうしたらいい。
いや――
迷うことはない。答えは分かり切っている。
夜の街で刻まれたトラウマは、夜の街でしか拭えない。
試練を乗り越えてこそ男だ。夜の街ごときにイモを引いてどうする。
「俺だって、やってやるさ」
決意を口にすると、俺は再び歌舞伎町へと戻っていった。