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1/人気者の定義

「思ったけどさ。安西さんってどうしてそんなに無理してまで人気者でいたがる振りしてんの?」


出会ってから日を跨がずにそんな突飛な質問をぶつける様な自分は冒険者なのか。


勇気は無謀と紙一重。


大人になっていく過程で誰でもいつかは思い知ることなのに。


そのときの俺は気付いたらそうするしかなくなっていた。


まあ不幸中の幸はその少女が世間一般には捕らわれない広くて深い器の持ち主であるということに他ならなかった。


そうでなかったら俺等とうに拒絶されている。


意味不明な奴だ。とその後の人間関係の輪にすら入れて貰えない、そんな典型的拒絶を受けていたことだろう。


俺の問に彼女はこう返す。


「人気者ってどこからどこまでを言うのかしらね」


逆に質問し返された。


答えない理由はない。少し考えてみる。


「そう……だな。まず前提として友達が多いことが挙げられるか。そうでなければ人気者とは言えないしな。あとは誰からも好かれる性格の持ち主でなければならない。敵が味方を上回るようじゃ人気者としてそいつはまだまだだ」


軽い思考で浮かんできた考えを口にしてみた。


これで満足だろうか。


「それだけでは足りないわ」


反論された。


なら君の意見を聞こうじゃないか。さあどうぞ。


「人から魅力的だと思われる為にどれ程の努力が必要か考えてたことある?あの人カッコイイ。とかあの娘カワイイとか言われるような人はそれに見合う努力を積み重ねているものよ。たまにいるじゃない?本人は分かってなくても周りに煙たがられてしまうタイプの人間が。そうゆうのはね、やり方が悪いのよ。そうゆうのは気付かないから最悪なの」


なら君は気付いているから魅力的なのか。


周囲の眼を惹き付ける力を持っているのか。だから人気者なのか。


「へえ。面白い視点だ。それはいい。けどさっきの質問の答がまだだよ。誤魔化してほしくはないからな」


俺は答えたのに君が答えないなんて許さない。


「ふん。質問に質問を巻き込んでなかったことにしようと思ってたのに」


そんな作戦が通じるか。


逃げられはしないのだから。逃がしはしないのだから。


「集団の中心にいるとさ。自分が独りじゃないって思う気がするから。その思い違いが心地良くてやめられなくて抜け出せなくなったから……ていったらどうかな?」


そんないい加減な理由で人は自分を偽れるのだろうか。自分を偽り他人を騙し、


得られるものを天秤に掛けて、その結果が今の彼女を築いているのかもしれない。


そうゆう人間がいないとも限らない。


世界はどうしようもなく広いんだな。広いからどうした。


「なんてね。言ってみたかっただけだけど。本当のところは私だって半信半疑なんだよね。いつの間にかこうでした。わざわざ修正するのも面倒だからこのままなのよ悪い?」


悪くないと思う。誰だって同じだ誰でもそう。


自分の境遇にいちいち疑問を挟んでなんかいられない。


そんな暇ないって。人間なのさ。


「じゃあそんな安西さんとこれからもお付き合いさせて頂けたら光栄ですよ」


美少女と然り気無く交友関係を促す。


綺麗な人とはお近づきになっておきたいからな。


高三に進級してのクラス替え後の放課後の出来事だった。


「ええ。こちらこそよろしくね~」

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