格闘家
「おりゃあ!完璧な読み〜最強〜ちょっと弱すぎやしないかね諸君。」
「強すぎるわ。そろそろサトさんアップよろしくお願いしまーす」
「了解」
「くっ、ついに魔王くるか」
「サトさん、ボッコボコにしてやってくだせい」
「ちょ、お手柔らかにおねがいします、、、」
ルイたちは大人気ゲーム「パワーナックラーズ」をプレイしている。通称「パワナク」と呼ばれており、「みんなで楽しむパーティゲーム!」などと謳っているが、パワナクプロが生まれるほど奥が深いゲームだ。発売から数年経つが、今でも多くの人を魅了している。
もちろん、ルイたちも大好きなゲームだ。そんなにゲームをやらないルイでもやったことがある。
イブニアはそこそこ、アサはかなりやりこんでいる。アサとイブニアが本気で戦ったとしたら、圧倒的な差でアサが勝つ。
しかし、そんなアサを負かすことが出来るのがサトだ。アサと本気で戦ったとしたら、圧倒的とはいかないまでもサトが勝つ。
そして、サトの特筆すべき点といえばどんなキャラでも使えるというところだ。「パワナク」には100を超えるキャラクターがおり、基本その中から1キャラを選んで練習をしていくのだが、何故かサトは全キャラを使いこなせる。もちろん、アサのメインキャラに対して、どのキャラを使っても勝てるという訳ではないが、ほとんどのキャラでイーブンの勝負をできるだろう。
ちなみに、ルイとイブニアはメインキャラを使ってもそんなの関係なくサトの全てのキャラに負ける。ボッコボコだ。サトが強すぎるのだ。
「あ!しまったー!!!」
アサはコントローラーを捨てて、頭を抱えた。
ドシュンシュンシュンシュンシュン、、、
サトのパワー技によって、アサのキャラはぶっ飛んだ。
「くそー!結構いい勝負してたのに」
「同意。少し危なかった」
「本当かよ」
「アサも頑張ったけど、やっぱりサトは強いわ」
「サトならバトルマスターになれるんじゃない?」
「いや、流石に無理」
バトルマスターというのは「パワナク」のレート戦の上位5%に与えられる称号のことだ。パワナクプレイヤーは皆バトルマスターを目標にしている。
「絶対いけると思うけどなー」
「お、みんな来とったんか。何しとったんじゃ?」
「「「お邪魔してまーす」」」
「今、パワナクやってた」
「パワナク?パワーナックルのことかの?」
「惜しい!パワーナックラーズっていうゲームだよ。略してパワナク。」
「そうか、ゲームの名前じゃったか!それは楽しそうじゃの!」
「じいちゃんもやる?」
「はっはっは!やらんよ。」
「なんで?やってみなよ」
「わしがやったら、勝ちすぎてしまうわい!」
(そんなこと言ったらサトが、、、)
「本当にそうか、試させてよ」
(サトの心に火が灯った、、、!)
「その目、気に入った!わしが受けて立とう。」
(じいちゃんゲームなんかやったことあるの??)
「悔しぃぃぃぃぃ!!!なんじゃあれは!反則じゃろ!」
じいちゃんは地団駄を踏んだ!
「・・・。」
サトは唖然としている。
「じいちゃん全然出来ないじゃん!さっきの自信はどっから来てたの!?」
「わしに出来ないことはないんじゃ!例え魔王でもわしの敵じゃないんじゃよ!」
「いやいやいやいや、普通にボロ負けだから」
「でもまあ、初心者にしては出来てた方じゃないか?」
「思ったよりは出来てたな。」
「同じく」
アサ、イブニア、サトはフォローを入れた!3人はもう大人なのだ!
「気を使わんでも良い!ほほほ、生きててこんなに出来ないことがあるとはの、、、長生きするもんじゃな」
「な、なあ!今度はじいちゃんがなんか遊び教えてくれよ!もうゲームも飽きたしさ!」
「確かに。もう今日はやらなくていいな」
「同じく」
(配慮がすごい。でも、ちょっと気になるな。じいちゃんは子供の時どんな遊びしてたんだろう)
「ん?そうじゃのう、遊び。うーむ。じいちゃんはチャンバラしかしてなかったのう。」
「チャンバラ?」
「棒で殴りあったりするんじゃ」
「え?危ないでしょ?」
「そうか、そうじゃのう。うーむ。おにごっこ!おにごっこはどうじゃ?」
「子供っぽすぎない?」
「まあ、でも他になさそうだし、久しぶりにやってもいいんじゃね?」
「じゃあ、一回だけな。運動不足解消的な?」
「同じく」
(本当におにごっこやるのか?意外とみんな乗り気だし)
「お!そいじゃ範囲はどうするのじゃ?鬼は?時間は?」
「そうだな、ルイんち全体でいいんじゃない?野菜踏まないようになら、畑もありで。」
「わしの可愛い野菜たちに傷をつけたら許さんぞい!畑はなしじゃ!」
「わかったわかった。じゃあ畑はなし。時間は5分。ルールは増やし鬼。鬼は1人。じゃんけんで決めよう。」
「よーし!そいじゃ、じゃんけんするぞい!」
「「「「「じゃんけん、ポイッ!」」」」」
「わしの負けか、、、」
「よーし!じゃあ10秒数えたらスタートで!」
「じいちゃん、転ばないように気をつけてよ?」
「同じく」
「大丈夫じゃ!わしはまだまだ現役じゃよ!数えるぞい!じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に、いち、スタートじゃ!」
シュッ!
その時、風を切る音が辺りに響いた。
「まずはルイじゃ!」
「え?いつのまに!?」
シュッ!
「次はイブニアじゃ!」
「え!?もう!?」
シュッ!
「次はアサ!」
「速すぎ!?」
シュッ!
「最後はサトじゃ!サトはなかなか体力あるみたいじゃな」
「くそっ、無理だ」
サトもすぐ捕まってしまった。
「おや?すぐ終わってしまったのう。最近の子供は運動が足りとらんみたいじゃな。もっと体動かしたほうがよいぞ!」
「じいちゃん、そんな次元じゃないよ!」
「言い訳するでない!みっともない。毎日の鍛錬の成果がこの足腰の強さなんじゃ。分かったら、明日からトレーニングじゃ!」
「鍛練って、毎日畑仕事してるだけじゃん!」
「ばかもん!畑仕事も馬鹿にできんぞい!大変な作業なんじゃ!それに」
「それに?」
「ん?なんじゃ?それに?」
「今それにって」
「そんなこと言っとらんわい!とにかくルイ!明日から一緒にトレーニングじゃ!」
「え、なんで1人だけ!」
「特にひどいじゃろ!一番最初に捕まっておるじゃろ!」
「みんなだってそんな」
3人は最後まで聞き終わる前に喋り出した。
「ルイ!頑張れよ!いい機会だろ?運動できるほうが彼女も出来やすいって!」
「そうそう!勉強だけしててもダメだろ?医者なんか体力めちゃくちゃ大事だぞ?」
「同じく」
「他の3人も大歓迎じゃぞ?」
「「「お断りします!!!」」」
「みんな〜」
こうして、ルイの過酷な夏休みが始まるのだった。




