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カントマクエスト 彼方からの祈り  作者: イヌカメン@発作活動家
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狩人 その2

「ちょっと!じいちゃん離して!」

「ん?あぁ、すまんすまん。怪我しておらんかの?いたいのいたいのとんでけっ!」

「怪我してないから!子供扱いするのやめてよ」

「じいちゃんからしたらまだまだ子供じゃよ!ハッハッハ!きたの」

「え、何が?」


パキッ!


 ルイが踏んだ枝の音に反応して、あばれうしどりがおそいかかってきた!


「そんなベタな、、、」

「じいちゃん危ない!」


テレレレン


「この程度じゃわしには傷もつけれんぞ!そりゃ!」


ジャジャンジャザッシュッ!


  けたたましい轟音の後には倒れたあばれうしどりの姿があった。


「テテテテテッテテーン♪おめでとうじゃ!」

「ありがとう。って何が?ていうかじいちゃんこれどうやったの!?すごすぎるよ!」

「年の功ってやつじゃな。それはそうと、ルイ、疲れたかの?疲れたんじゃったら帰ろうか。」

「うーん。なんかそうでもないかも。それより、あれって僕でもできる?」

「ありゃ?乗り気になったのかの?さっきはあんなに嫌そうじゃったのにの〜」

「だって、あんなの見せられたらワクワクするでしょ!何がなんだかよくわかんなかったけど!」

「そうかそうか。ならこれじゃ!」


ポイっ


「うわっと。何これ?木の棒?」

「そうじゃ。ひのきの棒というんじゃ。これで獣を狩るぞい!」

「ちょっと待って!弓がどうとか言ってたんじゃないの?こんな棒振り回したってどうにもならないよ」

「たかが棒切れ、されど棒切れじゃよ」

「僕も弓を」

「おるぞ。眠ってるようじゃな。今度はバキッ!とかやめるんじゃよ?」

「わかってるよ。気をつけます気をつけます」

「よし、ルイ。少しずつ忍び寄って、ケツを引っ叩いてやれ!思いっきりじゃぞ!そしたら全力で逃げるのじゃ!トドメはわしが刺すでの!」

「思いっきりって、もし気づかれたりしたら」

「その時はわしがどうとでもするわい!ほれほれ!男は度胸じゃ!ファイトーじゃ!」

(怖すぎる、、。ちゃんと助けてくれるんだよな?でも、なんかやれる気がする)

 そうして、ルイは一歩ずつ、ゆっくりとあばれうしどりへと近づいていった。あばれうしどりは全く気づかぬまま、心地良さそうに寝ている。

(よ、よし!あとはケツを引っ叩くだけ!)

 ルイはひのきのぼうを振り上げた!その時


ゴロンッ


あばれうしどりは寝がえりをした!つうこんのいちげき!ルイはしんでしまった!



 ルイが目覚めると、もう空はオレンジ色に染まっていた。

(夕方?っていうかあばれうしどりは?)

「お、起きたかの。体調はどうじゃ?熱は?喉は?」

「いやいや、風邪ひいたんじゃないんだから。それよりあばれうしどりは?」

「ん?そこじゃよ?」

 じいちゃんが指差す先にはカレーの鍋があった。

「仕事が早いね、、。結局あばれうしどりのケツを引っ叩けなかったみたいだ、、、」

「まあ、残念じゃったな。じゃが、また次頑張ればいいんじゃよ。どんまいどんまい」


〈がっくり、、、〉


ルイは肩を落とした、、、


「ルイ!そんながっかりすんなって!あばれうしどりに立ち向かっただけでもすげえって!」

「俺たちなんかヘトヘトでカレー見てただけだぞ?よく頑張った」

「同じく」

「そっか、そうだよな。みんな、ありがとう」

「よし!そいじゃ、いい感じになったところで、いい感じになったカレーと行くかの!」

 そうして、ルイたちは夕食を楽しんだ。1日煮込んだカレーは久しぶりに自然を大満喫したルイたちの体に染みた。カレーが染みる、という感覚は初めてだった。色々あったが、いい1日だった。


「よーし。帰るとするかの!忘れ物はないかの?取りに戻ることは出来んから、各自よく確認するように。」

 各々しっかりと確認した。まあ、もともと荷物なんてさほど無かったが。

「大丈夫そうじゃの!では、しゅっぱーつ!」

「「「「おーーー」」」」

 若干元気のない声が車内に響く。

 最初は会話をしていたルイたちも1人、また1人と眠りにつき、すぐにみんな眠ってしまった。



「おーい、着いたぞ。今日はお疲れ様じゃ。どうするかの、このまま家に送っていくか?」

「え?じいちゃん泊めてくれないの?」

「泊めてもいいんじゃが、布団がないからの。流石に疲れた体には堪えるじゃろ、布団がないのは」

「うーん。そうだな、今日は帰るか。」

「久しぶりに帰ってきたし、実家で過ごすのも悪くないな。」

「同じく」

 その後、3人の家に順番にアサ、サト、イブニアを送った。みんな名残惜しそうに家に帰っていった。

 ルイも少し寂しくなった。多分、すぐ会うのに。



「今日はいろいろあったね。久しぶりにドキドキした。」

「そうじゃなー、色々あったのう。どうじゃった?またキャンプしたいと思うかの?」

「うん、楽しかった。楽しかったけど、当分はいいかな。なかなかハードだったしね。」

「そうか。仕方がないかの、残念じゃが。」

 じいちゃんは残念そう、というより寂しそうだった。


「とうちゃーく!早く風呂沸かすでの、入ったら寝るといいぞい。」

「うん、疲れた。早く寝るよ」

 ルイは布団の中で今日を振り返った。釣り、狩り、そしてカレー。

(じいちゃん凄かったな。あんなに釣れなかった魚もじいちゃんと一緒に行ったらすぐ釣れたし、あばれうしどりも簡単に仕留めちゃうし、料理は上手いし。じいちゃん何者?案外じいちゃんの「昔話」も作り話じゃないのかも?)

 ルイは色々考えようとしたが、強烈な睡魔に襲われてすぐ寝てしまった。

 その日、ルイは夢を見た。自分がじいちゃんの話に出てくるような勇者になって、魔王に立ち向かう夢。だが、起きた頃にはもう忘れてしまっていた。



「デスパンサー、初めてモンスターと戦わせてきた。懐かしくなったよ。ずいぶんと平和になったな、この世界も。行くか。今日も頼む。」

 そうして、じいちゃんとデスパンサーは闇の中へと消えていった。


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