襲来
(今日も頑張ったな、おっ?)
ピッ!
アサ もうすぐ夏休みだけど、どんな予定?
ピッ!
イブニア 今んところ何もない
ピッ!
サト 同じく
(久しぶりにみんなでどっか行きたいね、と。)
アサ、イブニア、サトはルイの高校時代のクラスメイトである。高校3年間はほとんど一緒だった。だが、進学でみんなバラバラになってしまった。
ピッ!
アサ じゃあ、ルイの家行こう
ピッ!
イブニア 賛成
ピッ!
サト 同じく
(おい、なんでそうなるんだよ!)
ピッ!
アサ なんか問題あるの?
(問題は、ないけど)
ピッ!
アサ じゃあ決定と
(強引だ、、、)
アサは高校の時からこうだ。物事を強引に推し進めるパワーを持っている。それは、長所でもあり、短所である。という感じだ。
(じいちゃんに話しとかないと)
なんだかんだは言ったが、楽しみだ。口に出して言うと恥ずかしいが、お泊まり会ってことだよな。そりゃ、ワクワクする。
「「「こんにちはー!」」」
「おー、よくきたの〜〜!ゆっくりしていきなさい!」
「いくらなんでも早すぎないか?」
「こんなのは早ければ早い方がいいからな」
「そ、そうなのか?」
アサは本気で言っている。冗談ではない。
「正直、俺も結構急だなとは思ったけどw」
「同じく」
イブニアとサトもアサの行動力に若干引いてるようだ。
「まあ、はるばるお疲れ様でした。とりあえず、飯にする?」
「いいねー!」
「結局飯だしな。俺らみたいなもんは」
「同じく」
「って、言っても用意してくれるのはじいちゃんなんだけど」
「腕によりをかけて作るぞい!待っとれ!」
「「「ありがとうございます!」」」
正直、高校を卒業したら、もうあまり会わないと思っていた。そりゃ、分かれる時には遊ぼうな、また会おうな、って言うけれど、結局、遠かったり、時間が合わなかったりで会えても年に数回なんじゃないかと。
そう思うと、アサの強引さはありがたい。今年の夏休みは、あの頃に戻れる。そんな気がする。
「くぅぅぅ〜染みる〜ルイんちの水って特別美味いよな!」
アサは興奮気味に言った。
「えー?そう?別に普通だと思うけど。暑いからじゃない?」
「いや、絶対湧水的なやつだろ?少なくとも水道水じゃない」
イブニアは味わうように水を飲みながら、しみじみ言った。
「井戸水だからかな?」
「そうだろうね。今まで色んな水を買って飲んできたけど、どれもこの水には敵わない。売って欲しいくらいだよ」
サトも大絶賛だ。
「そんな大袈裟な。そんなことより、みんなは大学どう?」
「どうって、別に普通?授業出て、バイトして、遊んでって感じ。」
「俺もそんな感じだな。そんなに大変って感じはない。」
「同じく」
「へぇ、そうなんだ」
「逆にルイは?どうせ勉強ばっかしてんだろうけどな」
「ははは、はは」
アサの痛恨の一撃だ!
「やっぱりなw」
「だろうな」
「ちょっと、みんな〜」
「でも、高校の時からずっと頑張ってきて、大学行っても変わらず勉強続けてるのはすげぇよ」
「俺なんかほぼほぼ遊んでる」
「俺はこいつらとは違う」
「何を〜!そんな変わらんだろ!彼女まで作ってよ〜」
「そんなこと言ったら、お前らもいるだろ」
「そうだけどよ〜、まさかサトが女と付き合うなんて」
「悪いかよ。彼女がいて」
「まぁまぁまぁまぁ、落ちつけよ」
「お前はどうなんだよルイ。そんな感じだと彼女はおろか、友達すらいないんじゃね?w」
「・・・。」
痛恨の一撃だ!ルイは死んでしまった!
「おいおいマジかよ。流石に友達くらいはいると思ったのに。なんか、ごめんな?」
「ハハハ、夢のためには仕方のないことサ」
「ルイ、確かに立派な医者になりたいっていう夢は大事だとは思うけど、それだけじゃさ、なんていうか、生きていけないでしょ?考えておいた方がいいぞ、余計なお世話かもしれないけど」
「ぐうの音もでない、、、」
トュリントュルン♪
「出来たぞーい!ってなんじゃ?元気ないのー。夏バテか?水飲むんじゃ!水!」
「いや、なんでもないよ。いただきまーす!」
「「「いただきます!」」」
「めちゃくちゃ美味そうだな!野菜炒め!やっぱルイのじいちゃんの料理といえば野菜炒めだよな!」
「なんだろうな。野菜炒めなのに、この幸福感は」
「同じく」
「はっはっはー!そうじゃろそうじゃろ!新鮮な野菜をふんだんに使っておるからのー!野菜本来の旨味が盛り沢山なのじゃ!」
「あ、そうだ。ルイのじいちゃん聞いてよ。ルイがまだ大学入ってから友達できてないって言うんだよ。じいちゃん知ってた?」
「初耳じゃ!が、なんとなくそんな気はしとったよ。毎日朝から晩まで勉強しかしてないみたいだからの〜」
「もー!その話はもういいよ。それより、これからどうする?急だったからなんも決まってないけど」
「それな。どうしようなー。なんか面白いことない?」
「それならば、わしにいい考えがあるぞ。キャンプなんてどうじゃ?夏っぽいじゃろ!」
「え、めちゃくちゃいい!」
「キャンプなんてどのくらいぶりだろ。やばい、めちゃくちゃワクワクしてきた」
「同じく」
「キャンプいいね!流石じいちゃん!」
「はっはっはっはー!そうじゃろ、そうじゃろ!早速準備するぞい!お前らは、、、そうじゃ!掃除をしてくれ!ここは広すぎてルイとわしだけじゃ手に余るのじゃ。頼んだぞ!じゃあの!」
トュリントュルン♪
「拒否権なしかよ!まあ、キャンプ行けるしいいか!」
「お世話になるし、それくらいはな。」
「同じく」
「なんか、ごめんな?」
「いや、全然。むしろ、こんなに歓迎してくれて嬉しいよ。で、どこを掃除すれば良いんだ?」
「うーん。掃き掃除か、拭き掃除かな。どっちでもいいと思う。」
「やるか!」
「了解!」
「同じく」
その後、1時間程度掃除をした。うちはやけに広いからそれでも足りないくらいだった。
じいちゃん曰く、「神様に祈る場所」だかららしい。
「準備ができたぞい!みんなよく頑張ってくれた!出発は夜じゃ!それまでは自由に過ごしてくれ」
「夜?今からじゃないの?」
「まだ早い。まあ、そんな細かいことは気にせず、遊んでこーい!」
トュリントュルン♪
強引に家から出されてしまった。まあ、何か事情があるんだろう。
「なんかよくわかんねぇけど、とりあえず、街でも回るか」
「久しぶりに帰ってきたしな」
「同じく」
3人とも久しぶりの帰省だろうし、そりゃそうだよな。
「なんかごめんね。多分、じいちゃんにも何か都合があるんだと思う」
「謝るなって、そんなの分かってるよ」
「でも、こんな感じで追い出されたら、サプライズを疑っちゃうよなw」
「同じく。だが、それは野暮ってもんだ。」
「ど、どうかな?」
(じいちゃんそんなことしたことないと思うけど)
その後、色んな場所を回った。たむろしてた喫茶店、毎週行ってたゲーセン、行きつけのラーメン屋、その他思い出の場所へ。
みんな「変わらない」って言ってたけど、そりゃ、たかだか数ヶ月で変わるわけない。でも、いつかは変わってしまう時が来るのかもしれない。そう思うと、少し寂しくなった。
「お、帰ってきたか!では、行くとするかの!皆のもの、準備は良いか!」
「「「「おー!!!」」」」
「っていうか、このキャンピングカー何!?」
「レンタルしてきたのじゃ!これに乗っていくぞい!」
「なんか本格的だな!じいちゃんこれを準備してたのかよ」
「そうじゃ!ちょっとしたサプライズじゃ!やってみたかったのじゃ!」
(やってみたかったんだ、、、)
「ここから結構遠いところまで行くのじゃし、キャンピングカーの中で寝ながら行くとよいぞ。そいじゃ、出発じゃ!」
「「「「おー!!!」」」」
それから、キャンピングカーの中でわいわいがやがやしながら、最後には寝ながら、目的地まで車に揺られた。
「起きなさい!朝じゃぞ!おい!起きなさい!ついたぞい!」
(う、うう、、、まだ眠い、、、)
「おい、やばいぞ!テンション上がるぞ!早く起きろ!」
(ん?何?キャンプ場とかじゃないの?)
まだ覚めない体を起こして、あくびしながら車から降りる。
「て、ええええええええ!!!」
ルイの目の前に広がっていたのは、青々とした木々と小屋のような建物が並ぶ村のような場所だったのだ。
「そいじゃ、早速狩りの準備じゃ!」




