序曲
ふふふふーん♪ふふふん♪ふふふーん♪ふふふん♪ふふふふふふーん♪ふふふふーん♪
「おはよう、ルイ。またその曲を聴いていたのかの」
「僕あんまりクラシックとか聴かないんだけど、序曲聴くとすごいテンション上がるんだよねー」
「わしも昔、よく聴いたもんじゃ。男はみんなこの曲を聴いてテンションを上げていたんじゃ。」
「みんな!?今じゃ考えられないなー。知ってる人もあんまいないし、、、」
「そうじゃな。まぁ、なんでもそんなもんじゃよ。さあ、ご飯にしよう」
「そうだね」
季節はもう夏に変わっていて、「最高気温が更新されました」と気象予報士が毎日のように言っている。地球温暖化のせいだろうか。
逆に言えば、それ以外は何の変哲もない日々だ。
「最近は暑いからの、ほい、スライムそうめん」
「またぁ?昨日もこれだったじゃん」
「贅沢言うんじゃないぞい。今日は梅スライムそうめんにしたんじゃから、我慢せい」
「スライムそうめん美味しいけどさー」
ズルズルズルズルー
「む、今日のスライムそうめんもうまい!ただでさえさっぱりなそうめんが、梅のおかげでさらにさっぱりだわい」
ズルズルズルズルー
「毎朝食べてるとやっぱり飽きちゃうよ」
ズルズルズルズルー
「そうか?昨日はスライムそうめん。一昨日は抹茶スライムそうめん。その前は青スライムそうめん。毎日味変してるぞ」
ズルズルズルズルー
「いや、スライムそうめんと青スライムそうめん色が違うだけで、味一緒じゃん。」
ズルズルズルズルー
「料理は見た目も大事なんじゃよ」
ズルズルズルズルー
「まぁ、そうだけどってあれ?」
「はっはっは〜なんだかんだで完食しとるじゃない〜ルイくん〜」
「くっ、不覚、、、」
「夏はスライムそうめん!そう決まっとるんじゃよ!」
なんと、ルイはたちあがった!
「美味いよ!スライムそうめん美味いよ!認めるよ!でも、もう大学生だよ!?わざわざじいちゃん考案のキャラの形に盛らなくても大丈夫だから!」
「じゃから、料理は見た目も大事じゃとさっきも」
「だとしたら、普通にぐるぐる巻きで盛ってもらう方が風流だよ!食欲そそるよ!さっき言い逃したけど、青スライムぜんぜん食欲そそられないよ!食べものに青はだめでしょ!?」
「いや、じゃから、あれはじいちゃん考案じゃないし、青スライムそうめんはリアル志向の」
「もう分かった!ごちそうさま!今日もスライムそうめんありがとう。行ってきます!」
「弁当忘れずにな〜」
(なんか、負けた気がする)
そんなことを思いながら、大学へとペダルを漕ぐ。漕げば漕ぐほど、汗が滲み出て、下着がびしょびしょになる。靴下なんか特に。流石のコンクリートジャングルだ。
(勇者も、この暑さには参っちゃうんじゃない?)
勇者を舐めすぎである。ルイは大賢者以外をあまり尊敬していない節がある。
(やっと着いた、、、こうも暑いと流石に堪えるな。免許取らないと、、、)
ルイは、すぐさまトイレに駆け込み、全身の汗を拭き、着替える。そこそこ面倒だ。
(大賢者様。今日も一日頑張ります。)
そうお祈りをして、今日も「鍛錬」に励むのだ。
お昼御飯。ルイが楽しみにしている時間だ。最近は朝食がスライムそうめんばかりだから、尚更だ。
(今日はなんだろなー。ん?何か挟まってる)
真髄詰めました。じいちゃんより
(嫌な予感がする)
そう思って、すぐさま弁当箱を開けた。すると、眩い光が中から溢れ出してきた!
(ま、まぶしい!?)
なんと、中から出てきたのは黄金のそうめんだったのだ!
(そ、そうめん!?ん?また紙が)
これは、ゴルキンスライムそうめん。じゃが、これはそうめんであってそうめんではない!ゴルキンスライムそうめんなのだ!
まず、この黄金の麺!これはわしが昨日の夜から仕込み、今朝茹でたばかりのものじゃ。昼頃に食べても美味しいように、伸びづらく、コシがある仕上がりじゃ。
そして、この黄金に輝くタレ。これは、スライムそうめん、青スライムそうめん、抹茶スライムそうめん、梅スライムそうめんなどでは耐えられない究極のタレ!わしが丹精込めて作った麺でなければ、酸味が強く感じられてしまい、そうめんが飲み込まれてしまうのじゃ!
そして、この黄金の錦糸卵!タレをよく吸うように、出来るだけふわふわに仕上げてある。その周りには食感が楽しいウリナスの細切り、ジューシーなトマト、綺麗なピンクの特製ハムも添えてあるぞ!
ルイよ!わしの、いや、そうめんの本気を思い知るがよい!
(じいちゃん、そんなにそうめん好きなんだ。何はともあれ、いただきます!)
う、うまい!!!
モチモチだ、麺がモチモチしている!それにコシもいい、朝茹でた麺とは思えない。
それに、このタレだ!少し酸味の効いたタレが僕の食欲を掻き立てる!暑さすら調味料に変えている!
夏はそうめんに限る。
そんなじいちゃんの言葉が頭を駆け回る!
ごめんよ、じいちゃん。僕が間違っていた。やっぱり、夏はそうめんだよ!
おっと、忘れちゃいけない。この錦糸卵だ。このふわっふわの錦糸卵も語らずにはいられない。
卵ってこんな味だったか?
そんなことを思わせる味だ。もちろん、いい意味で、だ。
タレがよく染み込んだ錦糸卵は、もはやジューシーさすら感じる。噛んだ瞬間に、タレと油が染み出す。これが、たまらなく美味い!
あー、なんてことだ。トマトもウリナスもハムも最高だ!痒いところに手が届く!
全てが合わさってのゴルキンスライムそうめんだ!じいちゃん、そうめんって最高だっっ!
ごちそうさまでした!
そうして、ルイは大満足のまま午後の授業へと向かった。ルイがゴルキンスライムそうめんが、ほぼ冷やし中華だと気付くのは寝る寸前のことだった。




