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脚本 少女たち  作者: 日尾昌之
8/18

昭和20年8月14日 終戦前日 契り 

映画またはドラマの脚本です。

ここでの登場人物


岡田鶴子(小鶴)   幸子の母親 関西のとある陸軍飛行場で勤労奉仕をしている 17歳

石田幸夫       陸軍少尉(特攻隊員 学徒) 

           幸子の鎌倉の家の隣人の優也と

           二役 21歳 

トキ         陸軍飛行場で鶴子と一緒に働い

           ている少女 17歳

ヨシコ        陸軍飛行場で鶴子と一緒に働い

           ている少女 17歳

ヒサエ        陸軍飛行場で鶴子と一緒に働い

           ている少女 17歳

山田一郎       従軍記者 30代

若い将校       20代

営門の歩哨      20代




33関西のとある陸軍飛行場の中(昭和20年8月14

  日 終戦の前日 夕)

   トキ ヨシコ ヒサエ 最後尾に鶴子が 元気よ

   く号令をかけて一列で行進をしている

   一同 「イチ! イチ! イチ ニー!・・・」

   少女達 若い将校とすれ違って敬礼して

  少女達「(声を揃えて)ご苦労様です!」

   若い将校 敬礼して歩いて行く

  ヒサエ 「あの将校さん かっこええなぁー」

  ヨシコ 「そやろ そやろ! うち 前から かっこ

      ええなぁーって 思ててん!」

  ヒサエ 「うち お嫁さんに もろてもらおかなぁ

       ー」

  ヨシコ 「なんやて! 先 見つけたん うちや

       し!」

  トキ  「二人とも その顔で よーゆーわぁー」

  ヨシコ 「もう! その顔ってなんやの! あんたか

      て 庚申さんのお猿みたいな顔してるや

      ん!」

   鶴子 その会話を聞いて微笑んで ふと 目線を

      反らす

   幸夫 隊舎の玄関の階段に寂しそうに座っている

   鶴子 その姿を見ながら行進して行く

  トキ  「そやけど お嫁さんになっても すぐ

      後家さんや」

  ヒサエ 「そやなぁー」

  ヨシコ 「うちのお兄ちゃんもな 結婚した 次の

      日 出征やったし」

  ヒサエ 「そうかぁー お嫁さん 可哀そうやなぁ

       ー」

  ヨシコ 「今 ニッポンは 戦争してるんやさかい 

      しゃあないわぁー」

  トキ  「男はんは 戦うて おなごは 銃後の守

      り!」

   少女達 元気よく号令をかけて行進して行く

  一同 「イチ! イチ! イチ ニー!・・・」

   鶴子 心配そうに振り返る 

   と 前方から自転車に乗って従軍記者の山田一郎

   (30代 首にカメラを掛けている)が来て

   少女達とすれ違って すぐに止まる

  山田 「(振り返って)君達!」

   少女達 止まって 振り返る

  山田 「ちょっと 写真 撮っていいかな?」

   少女達 きょとんとして 顔を見合わせる

   山田 自転車で近寄って来て

  山田 「いいかな?」

   少女達 顔を見合わせる 鶴子は首を横に振る

  トキ 「(山田に頭を下げて)すいません・・・ 

     やめときます ごめんなさい」

  山田 「そう・・・ 残念だなぁー せっかく 少女

     倶楽部に載せようと思ったのに・・・」

  ヨシコ 「えっ? 少女倶楽部!?」

  山田 「うん!」

  ヨシコ「凄い! うち 少女倶楽部 大好きです!

     (トキに)なぁー せっかくやし 撮ってもら

     おー? 少女倶楽部に載るなんて 凄いや

     ん!」

 トキ 「う うん・・・(ヒサエに)ヒサエちゃん

      は?」

  ヒサエ「うちは・・・ 別にかまへんよ」

  トキ 「(鶴子に)鶴ちゃんは?」

  鶴子 「うちは・・・ うちは やっぱり やめとく

     わぁー」

  山田 「もう 日が暮れちゃうし(と 自転車から

     降りて)そんな揉めてる時間ないから ほら

     ほら(と 強引に4人を立たせる)」

   鶴子 抵抗するが仕方がなく右端に立つ

   山田 少女達と向かい合って立って カメラを構え

      て

  山田 「ほら 笑顔 笑顔!」

   トキ ヨシコ ヒサエ 顔が引きつった様な笑顔

   をする

   鶴子 無表情


34飛行場の営門

   歩哨が立っている

   少女達 行進して来て

  トキ 「分隊 止まれ!」

   少女達 歩哨の前に止まって

  トキ 「敬礼!」

  少女達「(敬礼して 声を揃えて)ご苦労様です!」

   歩哨 少女達に敬礼する

  トキ 「なおれ! 分隊! 進め!」

   鶴子 ふと中を見る

   幸夫 門の脇で寂しそうな表情でこちらを見てい

      る

  鶴子 「(幸夫を見て トキに 小声で) ちょっと 

      忘れもんした! 先 帰っといて!」

  トキ 「鶴ちゃん また かいな!」

  ヨシコ「ほんま 慌てんぼうやし!」

  鶴子 「(歩哨に敬礼して)申し訳ございません! 

      忘れ物をしました! ちょっと 取りに行

      って よろしいでしょうか!」

  歩哨 「よし! 急ぐように!」 

  鶴子 「(頭を下げて)ありがとうございます!」

   鶴子 走って行く

   幸夫 それを見て兵舎へと走って行く


35物置小屋の前

   幸夫 立っている

   鶴子 建物の陰から顔を出して

  鶴子 「みーつけた!」

   幸夫 うつむく

  鶴子 「どうしはったんですか?」

  幸夫 「・・・」

  鶴子 「ゆうてくれあらへんと うち 心配で 帰れ

      ないです!」

  幸夫 「(うつむいて)う うん・・・」

   ×   ×

   夕焼け空に赤トンボの群れが舞っている

  幸夫 「(赤トンボを見て)あの赤トンボに なりた

     いなぁー」

   鶴子 幸夫を見る

  幸夫 「明朝・・・ 明朝 鶴子ちゃんのお兄様の後

     を追ことになった・・・」

  鶴子 「・・・」

  幸夫 「覚悟は出来てたつもりだったんだけ

     ど・・・」

   鶴子 眼に涙を溜めている

   幸夫 突然 両手で鶴子の両肩を掴む

   鶴子 驚く

  幸夫 「お願いだ! 今日 ここで 僕と結婚して欲

     しい!」

   鶴子 うつむく

  幸夫 「僕の事 嫌いかい?」

   鶴子 首を横に振る

  幸夫 「君を 幸せに出来ないけど・・・ ごめんな

     さい・・・」

   鶴子 目をつむる

   二人 キスをする

   夕焼け空に赤トンボの群れが舞っている


36物置小屋の中

   鶴子 幸夫 並んで座っている

  幸夫 「(鶴子の手を握って)もし 生まれ変わる事

      が出来たら 海が見える 丘の上に住みた

      いな」

  鶴子 「海?」

  幸夫 「うん・・・ 僕 ゴミゴミとした東京の下町

     育ちだから 海が見える家に 住む事が小さ

     い頃からの夢だったんだもし そんな所に住

     めたら 何か人生が変わる様な気がしてね

     (鶴子を見つめて)一緒に住んでくれるか

     い?」

    鶴子 うなずいて 二人 抱き合う


37物置小屋の前(夕暮れ)

   鶴子 泣きながら勢いよく飛び出して 夕陽に照らされて走って行く

   夕焼け空に赤トンボの群れが舞っている


   つづく







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