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脚本 少女たち  作者: 日尾昌之
5/18

昭和21年12月 もみじさん 

映画またはドラマの脚本です。


ここでの登場人物


岡田鶴子(小鶴) 京都先斗町の芸妓 幸子の母親  

18歳

もみじ     京都先斗町の芸妓 23歳



25木屋町通り(昭和21年12月 朝)

   民家の軒下に吊るされた赤い提灯が揺れている

   テロップ 昭和21年 師走

   小鶴 しゃがみ込んで 咳き込みながら猫に餌

      をやっている

  小鶴 「あんた よう食べるようになったなぁー

     (と 猫を撫でる)」

   猫 夢中で餌を食べている

  小鶴 「行儀悪いなぁー おっちんして食べな 

      はい おっちん!(猫の背中を押す)」

  小鶴 「ほらほら こぼしてる そんな慌てんで

      も 誰も取らへん 早よ 帰ったげんと 

      子供 泣いてるで」  

  もみじ(声)「小鶴ちゃん」

   と小鶴の背後から もみじ(22)の声がする

  小鶴 「(見上げて)も もみやん姉ん

      ん・・・」 

  もみじ「この猫 オス? メス?(と しゃがん

      で猫を撫でる)」

  小鶴 「多分 メス さっき あっちに 子猫 

      走って行ったもん」

  もみじ「小鶴ちゃんと同じ お母さんやね」

   小鶴 うなずく

  もみじ「小鶴ちゃん これからどないするつも

      り?」

  小鶴 「姉さん お母さんに頼まれて 言いに来

      はったん? それやったら 昨日 お母

      さんに きっぱりと お断りしました

      し! いくら 姉さんでも お聞き出来

      まへんな」

  もみじ「別に お母さんに 頼まれた訳やないけ

      ど・・・ 小鶴ちゃんとポンチャンの事

      ほんまに心配してるんよ うちらだけや

      ない 春ちゃんも豆ちゃんも他の芸妓は

      んや舞妓はんも みーんな心配したはる

      んえ」

   小鶴 うつむく

  もみじ「そら 自分のお腹痛めて産んだ子と別れ

      るの死ぬほど辛いやろうけど ポンチャ

      ンの幸せを第一に考えたらそうした方が

      ええのんと違うやろか」

   小鶴 うつむいている

  もみじ「かんにん かんにん まだ 子供も産ん

      だ事もない うちが偉そうにゆうことと

      違うよね」

   小鶴 首を横に振る

  もみじ「小鶴ちゃん? うち もう ここから出

      なあかんかもしれへんの」

   小鶴 もみじを見る

  もみじ「お相手さんから 東京に来るようにって

      言われてんの」

  小鶴 「東京?」

  もみじ「うん まぁ 古い鳥籠から新しい鳥籠に

      宿替えするだけやけど そやけど うち

      生まれてこの方 京都から出た事ないん

      よ 東京って  どんなとこやろな

     (と うつむく)」

  小鶴 「姉さん・・・」

  もみじ「(高瀬川を見つめて)東京に 鴨川みた

      いな 大きい川あるんかな?東京に こ

      の高瀬川みたいな綺麗な川あるんかな?

      東京に 比叡山みたいな高いお山あるん

      かな? 東京に 大文字さん みいに 

      真っかかな火がつくお山あるんかな? 

      東京に 清水さん みたいな大きい お

      寺あるんかな・・・ うち うち・・・

      (と シクシクと泣きす)」

  小鶴 「姉さん?」

   もみじ 小鶴を見る

  小鶴 「姉さん あの暑い夏の日の事 覚えては

      ります?」

   もみじ うなずく


   つづく










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